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「勉強好き。国語好き。辞書好き」普通高で学ぶ18歳 特別な存在ではなく“一つの個性”

1/24(金) 6:01配信

沖縄タイムス

 【共に学ぶ高校  障がいがあっても】(2)

 大阪市大正区にある府立高校。知的障がいを伴う自閉症の男子生徒(18)は、普通科3年のクラスに在籍している。いつもお気に入りの青いタオルを肩に掛け、男女30人ほどの級友と一緒に学ぶ。

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 ◆学ぶ姿勢、ほかの生徒にも影響

 14日の5時間目は化学の授業だった。実験室で、湿布など日常生活で使う医薬品を合成する実験に取り組む内容。男子生徒も、隣に座る学習支援員とほかの生徒2人と共に、一つの机を囲んで参加した。

 実験中は、試験管にサリチル酸などの化学物質を入れたり、お湯をビーカーにつぎ足したり。熱湯を用意する際は女子生徒がさりげなく手助けし、板書のタイミングでは支援員が鉛筆を持つようにこやかに促した。

 長時間座るのが苦手な男子生徒は、授業中にふと立ち上がり、教室を歩き始めた。気付いた支援員が生徒のそばに行き、背中をさすりながら一緒に机まで戻った。教員もほかの生徒も気にする様子はない。クラスや学校にとって、彼は「特別な存在ではなく、一つの個性」。教頭がこう代弁する。

 ◆全ての子どもに学ぶ機会を保障

 話すことでのコミュニケーションは難しいが、読み書きは得意だ。黒板と同じレイアウトで、時々内容を口にしながら、板書を丁寧にノートやプリントに書き写す。教頭は「勉強に意欲的で、学ぶ姿勢はほかの生徒にも影響を与えている」と話す。

 大阪府は、障がいの有無や日本国籍かどうかにかかわらず、進学を希望する全ての子どもに高校で学ぶ機会を保障する方針を打ち出している。障がいが入試の合否判定に影響することはなく、定員に空きがあればどの生徒も受け入れる。

 「高校生活はどう?」。男子生徒に尋ねると、和やかな表情で答えが返ってきた。「勉強好き。国語好き。辞書好き」。府内の公立高校では2019年度、障がいを含む配慮が必要な生徒約3千人が学んでいる。

 ◆普通高校進学を希望した理由

 知的障がいを伴う自閉症の男子生徒(18)と家族が大阪府立の普通高校進学を希望したのは「地域とのつながりを大切にしたいから」。小中学校も地域の学校で学んだ。母親(54)は「息子は卒業後も地域で生きていく。周りの人にこの子を知ってほしかった」と振り返る。

 高校は自宅から徒歩15分の距離にある。入学後できることが増え、最近は商店街を歩いて一人で登下校できるようになった。これまで遅刻、欠席はほぼない。

 同校には療育や障がい者手帳を持つ生徒14人が在籍し、全員が普通学級で同じ教育課程を学んでいる。配慮が必要な生徒には、個別の学習指導や支援計画を作り、本人に合わせて評価する。男子生徒もこれまで問題なく進級してきた。

 最初のうちは授業中に大声を出したり、物をたたいたりとパニックを起こすこともあった。その時は支援員が寄り添い、廊下に出たり、「どうしたの」と声を掛けたりして落ち着かせた。パニックになることは最近めっきり減った。

 ◆「高校に来てよかった」

 同級生と机を並べて授業を受けてきたことで、「言葉の理解が進んだ」と母親は感じている。自宅学習の時間が増え、テスト前には朝昼晩1時間ずつ集中して1日計3時間、机に向かう。クラスメートと一緒に漢字検定にも挑戦し、読み書きの力が上がった。

 2年生だった2018年9月には、3泊4日の修学旅行で沖縄を訪れた。伊是名島の民泊では、友達にサポートしてもらいながら、一緒に入浴や食事を楽しんだ。

 帰路の伊丹空港。体操服姿でうれしそうに到着口から出てくる男子生徒の姿に、出迎えた母親は充実した旅行だったことを確信した。

 取材中、母親が「高校に来て良かったね」と話し掛けると、男子生徒は「良かった」と笑顔を見せた。卒業まで残り約2カ月。社会で働きたいし、大学の聴講生になるのもいい-。高校での学びと成長を糧に、夢は膨らむ。(社会部・徐潮)

<共に学ぶ高校(3)>に続く

最終更新:1/24(金) 11:45
沖縄タイムス

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