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誰でも通れるノーベル賞の道(1月26日)

1/26(日) 9:20配信

福島民報

 昨年、吉野彰氏のノーベル化学賞受賞が大きなニュースになったが、富山市と名古屋市を結ぶ国道四一号線のうち、富山市から岐阜県高山市までの区間がノーベル街道と呼ばれていることはあまり知られていないように思う。利根川進氏(一九八七年医学・生理学賞)、白川英樹氏(二〇〇〇年化学賞)、小柴昌俊氏(二〇〇二年物理学賞)、田中耕一氏(二〇〇二年化学賞)、梶田隆章氏(二〇一五年物理学賞)、そして一昨年二〇一八年の本庶佑[ほんじょたすく]氏(医学・生理学賞)の各氏がこの区間にゆかりがあり、地元の誇りとなっている。富山市中心部の市民会館前には記念のモニュメントも設置されている。この街道から少し入ったところに小柴氏、梶田氏のノーベル賞につながる研究が行われたカミオカンデ、スーパーカミオカンデと呼ばれる実験施設がある。

 これらの施設は一般には公開されていないが、近隣の道の駅、スカイドーム神岡に「カミオカラボ」という、両氏のノーベル賞に関連する研究を分かりやすく紹介する入場無料の科学館がある。昨年十一月下旬にここを訪ねる機会を得た。スーパーカミオカンデをはじめとする素粒子の最先端研究の内容を分かりやすく伝えるための施設だ。ニュートリノという地球をも通り抜けてしまう極小の素粒子の性質を、目の前いっぱいに広がる映像や体を動かして操作するゲーム、そして実物の検知器などで驚きと楽しさを感じながら理解させてくれる。また、一部のコーナーでは若手の研究者からじかに説明を聞くこともできる。短時間ではあったが素粒子を観測することの難しさ、不思議さを堪能することができた。

 このような科学館は子供に対する科学・理科教育だけでなく、科学・技術の面白さや意義を広く市民に伝えるとともに、それを支える社会に対する「透明性」を示す意味でも重要である。難しい科学・技術の説明もインターネットで簡単に手に入る時代であるが、科学館に行こう、と思った時から始まるワクワク感、入館時に五感をくすぐる独特の雰囲気は、行くことでのみ得られるものである。研究する側にも意味があり、自分が行っている先端的な研究を、子供を含めた万人に分かりやすく説明できることは、そのことの本質を理解した一流の研究者の証明になる。

 私の勤務する研究所でも小中高生や研究者、技術者ではない一般の方々に見学いただけるコースを設けている。来所された方々のご意見に耳を傾け、少しでも分かりやすく面白く再生可能エネルギーについての理解を深めていただけるよう努力している。研究所では現在、郡山市発明工夫展で入賞した小学五年生男子の風力発電に関する作品も展示している。私は国内外からの視察・見学のお客さまにこの作品を紹介する時には「彼が将来、郡山市出身のノーベル賞受賞者になることを期待している」と言い添える。お客さまはみなさん笑ってくれるが、こちらはかなり本気である。(中岩勝 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所所長)

最終更新:1/26(日) 9:20
福島民報

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