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「平時から備えを」 防災討論会で呼び掛け

1/27(月) 16:40配信

紀伊民報

 和歌山県上富田町朝来の上富田文化会館で26日、1889(明治22)年の明治大水害(富田川流域大水害)をテーマにしたシンポジウムがあり、登壇者が平時の備えの重要性を強調した。25日に田辺市の紀南文化会館で開かれた防災セミナーでも講師が「大地震は明日起きるかもしれない。実践的な対策をしてほしい」と呼び掛けた。

■富田川大水害の教訓 上富田住職ら伝える

 上富田町でのシンポジウム「130年前の富田川流域大水害に思う」は、熊野人倶楽部(浜田八州男代表)が主催した。紀伊民報後援。毎年合同で水害犠牲者の慰霊に努めている町内の住職が登壇者として出席した。

 最初に、三宝寺(上富田町岩田)の岩橋幸大住職が「富田川流域大水害の概要」と題して基調講演をした。

 水害当時の三宝寺17代住職が書き残した文献「大洪水現況実記訓戒」から抜粋し、洪水で人や家が流された状況を記した部分を紹介した。

 また町史に掲載されている水害の原因を説明。89年8月17~20日の累積雨量が1295ミリだったこと、明治期に進んだ山林伐採、堤防の脆弱(ぜいじゃく)さの3点を挙げた。

 明治大水害での県内死亡者は1247人。富田川流域では特に多く、死亡者は565人に及んだ。朝来、生馬、岩田の3村の溺死者は各100人超だったことも紹介。岩橋さんは「犠牲者を慰霊すること、まさかの時のためには平時から備えること。そんな先人からの言い伝えを大切にしたい」と語った。

 その後の討論会は、救馬渓観音(同町生馬)の森本真弘住職が進行役を務めた。

 岩橋住職のほか、観音寺(同町生馬)の山田一光住職、円鏡寺(同町朝来)の松井宗学住職が「3寺院の大水害の実態」と題して討論した。

 山田住職は、過去帳や寺の慰霊碑から水害の被害状況を説明。当時の生馬村は人口1200人で過去帳では水害で檀家104人が死亡した。現在、同寺が避難場所になっていることや、災害時の寺の役割などを語った。

 松井住職は、過去帳から生馬、朝来、岩崎の3地区で檀家132人が亡くなったと報告。境内の石碑に刻まれた富田川災害記に触れ「災害に備える大切さを後世に伝えたい」と述べた。

 このほか、阪神大震災を経験した防災士で、上富田ふれあいルーム講師の幾島浩恵さん=上富田町朝来=が「今日の防災・減災の対応」と題して普段から取り組んでいる防災対策を紹介した。

 田辺市中辺路町の田中淑副さんによるスペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」を訪ねた体験報告、上富田町のグループ「ブランキー・ベアーズ・ブラスバンド」によるコンサートもあった。

■「明日起きると思って」 田辺で山村さん講演

 田辺市であった防災セミナーは、和歌山県民共済生活協同組合主催。防災システム研究所(東京都)所長で、テレビ出演でも知られる山村武彦さんが講演した。

 山村さんは「自分たちの地域で、近い将来に大地震が起きると思う人は」と会場に質問。多くの手が挙がった。続いて「では、明日に起きると思う人は」と問い掛けると、挙がった手が少なくなった。

 「人には、都合の悪い情報を無視したり、自分に都合良く考えようとしたりしてしまう『正常性バイアス』が働くことがある」と指摘。「災害はまだ先だと思っていると、形式的な対策しかできない」と話した。

 「小さな揺れを感じたり、緊急地震速報が鳴ったりした時は、すぐに『安全ゾーン』へ避難して命を守ることが大切」とも強調。安全ゾーンとはガラスや転倒落下物が少なく、閉じ込められない場所のことで、あらかじめ設定しておくことが重要だという。「大揺れになってからでは動けない。揺れを感じたら、訓練だと思ってすぐに行動してほしい」と語った。

 阪神大震災の犠牲者の92%が発生から14分以内に亡くなったとも解説。「助けることができるのは近くの人」と述べ、隣近所で助け合う「互近所」づきあいが大切だと訴えた。

紀伊民報

最終更新:1/27(月) 16:40
紀伊民報

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