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「人と人との繋がりを築くブランドへ」復活した国産スパイクメーカー「YASUDA」はなぜ愛されるのか?

1/27(月) 17:10配信

REAL SPORTS

日本初の純国産スパイクメーカーであり、「サッカーの安田」として不動の地位を築いていたYASUDA。1932年に誕生し、かつてはサッカー日本代表選手たちの足を支えていたにもかかわらず、2002年FIFAワールドカップ日韓大会直前に姿を消してしまった。それから16年の月日を経て、元サッカー少年であり、YASUDAスパイクの愛用者であった佐藤和博氏が、サッカー仲間たちと「またYASUDAを履きたくないか?」と話したことから、2018年にクラウドファンディング「YASUDAのサッカースパイク復刻プロジェクト」を立ち上げ、見事復活を果たした。この復活の背景にある知られざるストーリーについて、佐藤氏に話を聞いた。

(インタビュー・構成=阿保幸菜[REAL SPORTS編集部]、撮影=軍記ひろし)

“型探し”から始まった、クラウドファンディング立ち上げまでの道のり

――まず最初に、YASUDAが復活に至った経緯を教えてください。

佐藤:もともと昔YASUDAのスパイクを履いていたのですが、2017年に友人と一緒にフットサルをやっている時に、「YASUDAのオールカンガルーレザーのスパイクでフットサルシューズがあったら履きやすいよね」という話になって。そこで「フットサルシューズを見に行こう」ということで調べたら、YASUDAが倒産していたことを知りました。普通ならそこで諦めると思うんですけど、弊社のグループ会社でクラウドファンディング事業を立ち上げたばかりだったので、じゃあ、そこで一番最初のプロジェクトとして「YASUDAのサッカースパイク復刻プロジェクト」を立ち上げて、自分たちでYASUDAを復刻させよう、と考えたのが最初のきっかけです。

――そうだったのですね。最近、スポーツ業界でもクラウドファンディングを利用するところが増えてきましたが、やっぱり目標達成に向けて多くの方に応援してもらうことは、簡単ではないと思います。まずどのようなことから始めたのですか?

佐藤:YASUDAがどれだけ知られているのか全然わからなかったので、まずはネット上でアンケートを取りました。YASUDAを知っている人の多くは、YASUDAで育った世代の30代後半以上のサッカー経験者が中心だとわかったので、まずはその年代をターゲットに広めていきました。

――一番大変だったことは?

佐藤:弊社にはメーカーやシューズ業界経験者がいないので、最初はスパイクって工場に行けば簡単に作れるものだと思っていたんです。でも実際にYASUDAのスパイクの商標を持っている方と話したら、「靴を作るためには金型と木型が必要」と言われて。しかも、各メーカーごとに形も違うので、それがないと作れない、と。金型を1個作るのに100万円ぐらいかかるので、10サイズ合わせると1000万円。お金も含めて、その辺りはどうするつもりなのか?ということを、その時初めて聞いて知ったのです。

 まずは金型探しから始めましたが、YASUDAは既に倒産している会社なので金型は持っていないと言われて。昔YASUDAが自社工場以外にお願いしていた製造先がいくつかあると聞いたので、片っ端から連絡先を聞きました。ほとんどは撤退していたり、なくなっていたので絶対厳しいな……と諦めかけていたところ、最後にやっと1カ所だけ置いてあるところを見つけたんです。

――奇跡ですね。金型が見つからなければ、何も始められなかったわけですものね。

佐藤:そうですね。いくらお金をクラウドファンディングで集めたとしても、金型がなければ何もスタートできませんでした。全く知らない世界だったので、それが一番大変でしたね。そして、その製造会社でそのままYASUDAのスパイクを作っていただけることになりました。

――スパイクを作っていた会社にまた復刻してもらえるというのも、うれしいですね。

佐藤:そうですね。スパイクは機能面が重要ですが、今でもスポーツ用の靴を作っている会社だったので、そのままお願いすることができました。

――立案からプロジェクトを始動するまで、どれくらいかかりましたか?

佐藤:最初の準備には半年くらいかかりました。まず、2017年の10月に商標を持っている方を調べて、「一緒にYASUDAのシューズを作りたい」と手紙を書いてお会いしたところからスタートしました。それから型を持っている製造会社を見つけたのが、2カ月後の12月ぐらい。でもすぐにOKしていただけず、年明けの2018年に、僕が持っている昔のYASUDAスパイクを持って社長に会いに行きました。「これをもう一度復刻したいので、力を貸してほしい」と。それで、通常のオーダーよりもかなり少ない足数でも、なんとか引き受けてくださるということで、やっとクラウドファンディングの設計に向けて動き出しました。

――その“想い”の部分が周りの人の心を動かし、共感や支援に繋がったのですね。

佐藤:そうですね。立ち上げまでのストーリーを全てメッセージとして伝えて、動画も作って「YASUDAのサッカースパイク復刻プロジェクト」をスタートし、約300人の人たちに支援してもらうことができました。

――すごいですよね。

佐藤:賛同してくださった方の中には、昔YASUDAを履いていたという方や、以前YASUDAと仕事をしていたという方もいました。あとは、サウジアラビアなどの海外からも、「売らせてほしい」「取り扱いたい」という連絡もいただきました。

――海外の人たちは、どうやって知ったのですか?

佐藤:たまたま日本の大使館で働いている方がクラウドファンディングのことを見つけられて。日本語で丁寧なメッセージをいただいて、会社まで来てくださったので実際にお会いしました。他にも元Jリーガーの方や、現役Jリーガー数人にも支援していただきました。

――YASUDAのスパイクのクオリティや、「日本ブランド」としての価値に対し応援してくれる方が多いのですね。

佐藤:そうですね。やっぱりYASUDAの良さを知っている方は愛着があるようです。一方で、YASUDAを知らない方も多く支援してくださったのですが、やっぱりメイド・イン・ジャパンということだけでなく、「日本で一番最初にサッカーのスパイクを作ったブランドを復刻させる」というのは、なかなかないと思うので。

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最終更新:1/27(月) 19:59
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