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「ユニフォーム脱いだらイエロー」は本当に正しい判定か?「親友の死への追悼」に議論再燃

1/28(火) 7:17配信

REAL SPORTS

1999年、Jリーグのピッチでドラガン・ストイコビッチがユニフォームをたくし上げ、「NATO STOP STRIKES!(NATOは空爆をやめよ!)」とメッセージが書かれたシャツを示したことは日本でも当時大きな話題となった。

現在「ユニフォームを脱ぐ」行為は警告処分(イエローカード)対象として、FIFA(国際サッカー連盟)規則により厳しく禁止されている。なぜこのような厳罰が設けられたのか? 規則設定後の反抗の歴史とは? ある試合をきっかけにフランスで再燃しているというこの問題について追った。

(文=結城麻里、写真=Getty Images)

親友の死に対する「追悼」への仕打ち

ゴールの瞬間にガバッとユニフォームを脱いでセレブレーション! 観衆もこれに歓喜を重ねて――。昔はそんな楽しいシーンがよく見られた。だがある日からこれが禁止され、脱ぐとイエローカードで処分されるようになった。「なぜ脱ぐと処分?」と不思議に思ってきた人もいるのではないだろうか。実はこのルールをめぐっては、16年前から議論がくすぶってきた。そしてこの正月、思いがけずフランスで再燃することになった。それはフットボールのゴールと脱ぐセレブレーションについて、一考を促すものになっている。

悲劇は1月3日に起きた。ギャンガンのアタッカー、ナタエル・ジュランが、新年が明けて間もないのに交通事故で急逝したのだ。衝撃は多くのフットボーラーたちの胸をえぐった。ギャンガンで一緒にプレーしていた親友フレッド・デンビの悲しみはことさら深かった。FCルーアン(4部所属)の選手となっていたデンビは、このときから一つの思いにとらわれる。

「3日後の試合でゴールを決め、ナタエルにささげて友を追悼したい!」

そして1月6日――。華々しい歴史を誇るフランスのカップ戦クープ・ドゥ・フランスのラウンドオブ64。アマチュアクラブのFCルーアンがトップリーグのFCメスを迎え撃つ一戦だ。その晴れ舞台でデンビは試合開始後6分、見事にゴールを決めるとユニフォームを脱いだ。下から現れたのはギャンガンのユニフォーム。亡くなったジュランのユニフォームだった。これには多くの人々が目頭を熱くした。だが無情なホイッスルとともに、デンビにイエローカードが突きつけられた。

この日を境に、くすぶっていた議論が再燃。人の死を悼むという極めて人間的な感情と行動が、処分されたことになるからだ。テレビ討論会でも「人間的にみてやはりおかしい」の意見が噴出。「いや、いったん認めると、友人の結婚におめでとうだの何だのとキリがなくなる」という意見もあったが、多くの人々はやはり「人間的な理由なら認めるべき」「そもそも昔のほうが楽しかった」と感じたようだ。

やがてフランスサッカー連盟(FFF)の規律委員会がこのイエローを正しいレフェリングだったと認定。累積によるデンビの次戦出場停止処分を決定すると、委員会の独立性を守る必要から黙してきたノエル・ルグラエット連盟会長も「規則の誤用だ」と憤激した。元審判のブリュノー・ドゥリアン氏さえ、「ときには少々のヒューマニティーを証明しても悪くないのでは」とツイッターでメッセージ。多くの関係者がこのルールに疑問をもっていることを改めて示す格好となった。

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最終更新:1/28(火) 12:04
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