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東京高検検事長が異例の定年延長、究極の「恐怖人事」

2/4(火) 13:30配信

ニュースソクラ

【小塚かおるの政治メモ】安倍政権、官僚掌握術としての人事を断行

 安倍政権は目的のためなら手段を選ばない――。官僚機構がまたしても震え上がるような前代未聞の人事が1月31日閣議決定された。2月7日に定年を迎え退官する予定だった黒川弘務・東京高検検事長(62)の勤務を半年間延長し、8月7日まで延ばすというものだ。

 東京高検検事長は検事総長に次ぐ検察ナンバー2である。

 検察庁法では検事総長は65歳、その他の検察官は63歳に達した時に退官すると定められている。一方で国家公務員法では、退職により公務に支障がある場合には、1年以内の職務延長を認めると規定している。今回、この特例規定を適用しての定年延長となった。

 入省年次にともなう人事ヒエラルキーが絶対の役人組織は、人事での異例を嫌う。定年時期がずれれば、その下のポストの人事にも直接影響し、人材の滞留が起きたり、本来、就けたはずのポストに就けなくなったりするからだ。ヒエラルキーも崩れる。

 それなのに、なぜ黒川検事長が定年延長になったのか。囁かれるのは、首相官邸の黒川氏へのこだわりと、黒川氏の次期検事総長への昇格だ。

 2018年7月25日就任の現在の稲田伸夫検事総長(63)は、今夏で近年の交代期とされる在任丸2年を迎える。黒川氏はその前の2月に定年なので、稲田氏の早期勇退がない限り、後任は、黒川氏と任官同期ながら定年が7月29日と半年遅い林真琴・名古屋高検検事長(62)になるとみられていた。

 しかし、黒川氏の定年が8月7日まで延長されたことで、黒川氏と林氏の退官時期がひっくり返った。

 「次期検事総長は黒川氏だというのが官邸の強い意向ということでしょう。政治的な動きに長けている黒川氏は、菅官房長官の覚えがめでたい。法務省官房長から法務事務次官への抜擢、そして東京高検検事長と、いずれの出世も『菅人事』だとされてきました。しかし、さすがに定年延長までさせるとは。驚きました」(法務省関係者)

 「内閣人事局」設置に象徴されるように、人事で霞ヶ関を掌握し、コントロールするのが安倍政権の1つの特徴ではあるが、本来、官僚機構の中においても、とりわけ政治から独立した存在であるべき検察組織にも、「禁じ手」まで使って介入する。

 禁じ手で思い出されるのは、小松一郎・駐フランス大使が異例の抜擢となった2013年の内閣法制局長官人事だ。

 「法の番人」と呼ばれる内閣法制局も、内閣に置かれてはいるものの、霞が関の他省庁と比べ独立した存在だ。政府が国会に提出する法律案などが憲法やその他の法律と矛盾していないか審査する機関で、内閣及び首相に意見を述べる役割が与えられており、内閣と距離を置いた独立性や中立性が重視されてきた。

 長官は次長からの昇格が慣例で、他省庁からの出向者ながら長い年月、法制局に勤務し、いくつものポストを経験した後に長官に就いてきた。それが、一度も法制局で仕事をしたことのない小松氏の長官就任で崩れたのだ。

 安倍首相が小松氏を法制局長官に据えたのは、集団的自衛権の行使を可能にするよう、憲法解釈の変更にお墨付きをもらうためだった。従来から法制局は解釈変更に慎重で、集団的自衛権の行使を違憲としてきた。

 それを合憲としてもらうため、外務省で国際法局長を務め、解釈変更に積極的な小松氏を外から法制局へ連れて来たのだった。

 当時、小松氏は癌を患い、長官を補佐するという理由で横畠裕介内閣法制局次長が異例の定年延長になっている。そして2014年に小松氏が病状悪化で退任すると、横畠氏が長官に昇格、憲法解釈の変更は実現した。

 官僚OBが振り返る。

 「公正中立が誰よりも重視される内閣法制局長官は、官僚にとって大臣と同等の別格な存在です。だから長い時間かけて内部昇格するのが慣例になっているのに、安倍政権は目的を達成するためなら、何だってやる。あの人事で官僚は安倍政権の恐ろしさを痛感しました」

 安倍政権から小松長官への「指令」は解釈改憲に道筋をつけることだったが、では次期検事総長を「約束」された黒川氏に安倍政権は何を期待しているのか。

 「カジノ汚職の捜査は秋元司衆院議員で終わらせて欲しい」という意向を忖度することか。

 究極の恐怖人事再び……。安倍政権が続く限り、官僚はますます従順になっていくだろう。

■小塚かおる(日刊現代第一編集局長)
1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。

最終更新:2/4(火) 13:30
ニュースソクラ

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