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コロナウィルスで打撃を被るのは「製薬会社」となり得る意外なワケ

2/7(金) 7:55配信

ITmedia ビジネスオンライン

 コロナウィルスの感染者が1月31日に1万人を超えた。そこからわずか4日で感染者数は2万人を超え、猛烈な勢いで広がりをみせている。5日時点で国内の感染者数は22人に達した。連日の報道もあり、日本でもコロナウィルスによる心理不安が現れ始めている。オークションやAmazonでマスクを高額転売する動きが社会問題になるほどだ。

「コロナウィルス関連株」として株価が9倍にも上昇した、マスクなどを手がける川本産業

製薬会社の株価は上がるのか

 不謹慎だと思われるかもしれないが、株式市場では、早速「コロナウィルス関連株」の物色が始まっている。特に、今後需要が見込まれるマスクや医療廃棄物を手がける会社の株価は、ここ2週間で大きく上昇した。

 「コロナウィルス関連株」として最も値上がりした銘柄は、サージカルマスクなどの衛生関連製品を手がける「川本産業」だ。同社の年明けの株価は450円で、時価総額はわずか27億円程度だった。しかし、2月3日の株価はおよそ9倍、4000円にもなり、時価総額は一時240億円に膨れ上がった。なお、2月4日時点の株価は2395円と、落ち着きを取り戻しつつあるが、それでも今回の騒動で川本産業は100億円以上も企業価値を増加させたことになる

 ここまで考えると、製薬会社も同様に「コロナウィルス関連銘柄」として株価の上昇が期待できそうだ。現に、一部の製薬会社についてはすでに「コロナウィルス関連銘柄」として取り沙汰され、株価が上昇しているものもある。

 しかし、筆者は、今回の騒動で製薬会社は利益の増加どころか、打撃を被る可能性すらあると考えている。その理由は下記の通りだ。

”防疫”意識が収益のカニバリズムを生む

 そもそも、病気を治す処方薬と、病気を予防するマスクは利益相反の関係にある。仮にある病気を100%予防できるマスクが生まれた場合を考えてみよう。この場合、その病気を治せる薬を売る製薬会社は深刻な打撃を被るだろう。

 今回のコロナウィルス騒動は、街中の防疫意識を高める啓発的な作用をもたらした。これにより、2020年のインフルエンザ感染数の推移は近年でもまれな少なさを示した。国立感染症研究所感染症疫学センターの「インフルエンザ流行レベルマップ」によれば、20年1月20日から26日までに、インフルエンザに感染した患者数は、1医療機関あたり18.0人だった。これは、18年、19年の同時期と比較して3分の1以下という異例の数値で、過去最低クラスとなっている。

 日本におけるインフルエンザの推定患者数は、延べ1000万人を超えることも珍しくなかった。しかし、今年は1000万人を大きく下回る水準に落ち着くとみられる。例年のピークである「1月第4週」の患者数が、前年同期比で、-68.4%ポイントまで落ち込んだということは、20年の延べインフルエンザ患者数が数百万人規模で減少することを示唆している。

 手洗いやうがいなどの衛生意識の高まりに伴い、インフルエンザだけでなく、風邪などの感染症や食中毒の患者も大きく減少する可能性が高い。そうすると、処方薬のマーケットは、予防製品のマーケットにシェアを奪われてしまっている状況であるといっても過言ではない。

 特に、インフルエンザの処方薬として有名な塩野義製薬の「ゾフルーザ」や、第一三共の「イナビル」は苦戦を強いられるだろう。一方、中外製薬の「タミフル」はコロナウィルスに対する効果が期待されていることもあって、株価が一段高している状況だ。20年の始値1万円に対し、4日には1万1730円と、17.3%の株価上昇が発生した。

 しかし、いくらコロナウィルスにタミフルが有効であるとしても、本来のインフルエンザ患者が激減してしまえば、タミフル自体の売り上げは大きく下がることが懸念される。全世界のコロナウィルス患者すべてにタミフルを処方したとしても、現段階では2万3000人程度への処方で足りてしまう。その裏側で、数百万人規模の見込み患者が消えているのだ。そう考えると、中外製薬を「コロナ関連株」とみなして取引することには十分注意が必要かもしれない。

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最終更新:2/7(金) 7:55
ITmedia ビジネスオンライン

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