【記者:Nick Allen】
米空軍を退役したハワード・スミスさんはドナルド・トランプ米大統領の支持者だ。この日、訪れていたのはメリーランド州フレデリックにある教会の講堂。参加者は、民主党支持者が圧倒的多数を占める。しかしスミスさんはこの機会を楽しみにしていた。これから始まるのは「トランプ・セラピー」とでも言うべきもので、トランプ大統領の支持者とリベラルな人々が言い争わずに対話する方法を身に付けることを目的とした催しだ。
「妻からは問題を起こさないように言われている」とスミスさんは言う。「でも、時には結論の出ない議論をするのもいいことだと思う。今は互いにまったく話し合おうとしないから。波風が立たないよう、誰もが本音で語ろうとしない。この集まりは、そんな空気を緩和するためのものだ。悪いようにはならない」
約30人の参加者は、「赤組(共和党支持者)」と「青組(民主党支持者)」に分けられる。主催している非営利団体の「ベター・エンジェルズ(より良い天使)」の理念は、2016年にトランプ氏が米大統領選に勝利して以降、米国民それぞれが築いた壁を壊してもらうことにある。
これが予想外にも大きな動きへと成長し、今年に入ってから、全米各地で既に約1000回開催されている。福音主義も勧誘もここでは関係ない。イベントを聞きつけてやって来る人の数が続々と増えている。
どちらの支持者にしても、参加者たちは米国を分断する政治的な言い争いに嫌気が差しているようだ。溝があまりにも深まり、自分と意見が異なる友人、知人と疎遠になってしまったという人も多い。
この動きの名称は、第16代大統領エーブラハム・リンカーンの就任演説に由来する。リンカーンは南北側の両市民に「敵対してはいけない」と呼び掛け、「我々の本性に潜むより良い天使」に触れてほしいと訴えた。
リンカーンが演説したのは、南北戦争の開戦直前。ここフレデリックでは、争いの影がすぐそこまで迫っていた。その先に待っていたのは米国史上最も血生臭い一日だ。1862年9月17日、アンティータムの戦いでは兵士2万3100人が死傷、あるいは行方不明となった。フレデリックには現在、国立南北戦争医学博物館が建っている。
海軍を退役した「赤組」のミック・コリガンさん(72)は、「最近、公共の場は殺伐としている。何から何まで分断が進み、何か手を打たないと暴力沙汰に発展すると思う」と話した。海軍にいた頃、人種の違いを乗り越えるために同様の取り組みが行われていたと振り返る。
最終更新:2/9(日) 14:01
The Telegraph





























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