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「映画ではなく現実の日々」 シリア女性医師、アカデミー賞で脚光

2/10(月) 18:00配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【2月10日 AFP】シリア政権軍に包囲された反体制派の支配地域。その地下病院で何千人もの治療に当たってきたアマニ・バロア(Amani Ballour)医師(32)が今、アカデミー賞(Academy Awards)長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた『ザ・ケーブ(The Cave)』によって脚光を浴びている。

「私にとって、あれは映画ではない。私の人生であり、現実の日々だ」と小児科医のバロア氏はAFPのインタビューに語った。

 102分に及ぶ痛ましいドキュメンタリーは、首都ダマスカス近郊のシリア反体制派が掌握していた東グータ(Eastern Ghouta)地区で、女性医師に向けられる性差別と闘いながらも、傷ついた子どもたちの命を救おうと奮闘するバロア医師の姿を追っている。

 国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は、当時の東グータを「この世の地獄」と表現した。

「アカデミー賞にノミネートされたことで、シリアの問題にもっと光が当たり、私たちに支援の手が伸びるようになってほしい」とバロア医師は言う。

 5年にわたってバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権軍に包囲され続けた東グータ地区は、2018年に陥落。バロア医師は今、トルコで亡命生活を送っている。自分の家を離れざるを得なかった何百万ものシリア人同様、異国の地で心が穏やかに暮らすのは難しいと語る。

「故郷では人々を助けることができた。爆撃や飢え、日々目にする悲劇といったさまざまな困難があっても、もっと冷静でいられた」

 トルコで暮らしていても、バロア医師の脳裏には治療した無数の子どもたちの姿が焼き付いている。「子どもたちは何も分からない…何が起きているのか、なぜ彼らは私たちに向かって爆撃するのか、どうして飢えているのか。常にそういった質問をされるが、子どもたちに説明するのはとても難しかった」

■「僕の脚はどこ?」

 ある11歳の少年は、学校で授業中に砲撃に遭った。同級生のほとんどが負傷した。「その子は両脚を失った。麻酔から覚めるとこう聞かれた。『僕の脚はどこ? なぜ僕の脚を切ってしまったの?』と」

 中でも最もつらい記憶は、2013年8月に毒ガスのサリンによる攻撃があった日のことだ。米国の統計によると、アサド政権軍によるものとされるこの攻撃で、少なくとも1429人が死亡。そのうち426人が子どもだった。「ザ・ケーブに出てくる病院では遺体を置く場所がなく、私たちは遺体を積み重ねていた」

 シリア人監督フェラス・ファヤード(Firas Fayyad)氏によるドキュメンタリーは、即興の誕生パーティーで、風船の代わりに膨らせた外科用手袋が破裂した時のような喜びに満ちた場面も捉えている。医療スタッフは「一つの大きな家族になり、喜びの瞬間を探そうとしていた。人間であることを再び感じられるように」とバロア医師は語る。

 病院では日々の恐怖に加え、いまだ非常に保守的な環境での性差別にも耐えねばならなかった。「最初のうちは(女性なので)私にはできないと言われた。職務上のプレッシャーがある中で、女性にも病院を運営できるということを証明しなければならかった」

 映像はAFPのインタビューに応じるバロア氏と、負傷した子どもや赤ちゃんの手当てを行うバロア氏の資料映像(2017年撮影)。(c)AFPBB News

最終更新:2/10(月) 18:00
AFPBB News

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