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タイガー服部、43年のレフェリー人生で忘れられない究極のベストマッチ3試合

2/10(月) 19:30配信

ENCOUNT

19日の新日本プロレス後楽園ホール大会で引退

 新日本プロレスのタイガー服部レフェリー(74)が19日の東京・後楽園ホール大会で引退する。1977年にレフェリーデビューして以来、43年のキャリアを誇る重鎮は、リング上で幾多の名勝負を見届けてきた。このたび、ENCOUNTのインタビューに応じ、引退試合へ向けた心境を語るとともに、自身のプロレス史の中で印象に残る3試合を選定した。長年の“激闘“で利き腕の左腕が変形した大ベテランの目に留まったのはプロレスファンの脳裏にも強く刻まれたあの試合だった。

【画像】変形したタイガーレフェリーの左腕…まっすぐ伸ばそうと思っても伸びない

ーー後楽園大会での引退を決断した理由を教えてください。

「もう歳も歳だし、体は完全燃焼しちゃって動けないからレスラーに迷惑かかると思って、そろそろ店じまいしなければいけないのかなと。狭窄症で腰を手術したんですよ。それでも足も動けるし、練習しているから大丈夫なんだけど、やっぱり心身満足できるようなレフェリーができないと迷惑かかるから、そろそろ身を引かなきゃいけないのかなと思いました。考え始めたのは、この2~3年ぐらいですね」

ーー初めてレフェリーをした時のことを覚えていますか。

「覚えていますよ。77年にマイアミに近いフォートローダーデールでホーガンとルスカの試合をやった。3人ともしょっぱいんだよ(笑い)。みんな新人だから何も分からない。いい試合やろうとか、どうしようとか、そんな余裕はなかったですね」

ーー服部さんは当時、米国でアマチュアレスリングを指導していました。プロレス入りのきっかけは何だったのでしょうか。

「フロリダにチャンピオンシップレスリング・フロム・フロリダという会社があって、役員にヒロ・マツダさんがいた。71年か72年にタンパでアマチュアレスリングの全米選手権があった。その試合のスポンサーをそのプロレスの会社がやっているわけ。たまたま優勝したら、『何してるの?』って聞かれて、『ニューヨークで柔道やレスリング教えています』と言った。そしたら、『フロリダでやらないか』と言われて、マツダさんが作ったヒロ・マツダ・柔道レスリングスクールというところで指導を始めたんですよ。それが出足で、プロレスの事務所に行くようになって、『じゃあ少し仕事やる』ってなって、レフェリーの話になった。田舎でたまに小さな試合をやったりするんです。それがスタートですね」

ーーもともとプロレスに興味はあったのでしょうか。

「好きだったよ。ちっちゃいころ、テレビで力道山の試合をやり始めて、小学校の時は金曜日の夜に力道山がデストロヤーやブラッシーとやっている試合なんかを見ていた。家にはテレビがなくて、隣の家にあった。屋上から見せてくれて、よく行ったのを覚えていますね」

ーーレフェリーを仕事としてやっていこうと思ったのはいつ頃ですか。

「全日本プロレスを辞めて新日本プロレスでやり始めたころですね。日本で長州に誘われたんですよ。長州は大学が違うんだけど、同じレスリング部だった。あいつは専修で、俺は明治。でも、練習場所が一緒で生田にあった。そういうのもあって、ちょっと親しくなりました」

ーー当時レフェリーとしてのやりがいを感じていましたか。

「昔はそんな余裕なかったですね。結構難しいから。レフェリーが不具合だと、試合がきれいに見えない時もある。選手を邪魔しないように、うまく試合が運ぶようにしないといけない。意外と見ていて簡単そうだけど、簡単でもないんですよ。選手の動きを止めちゃうこともあるからね。リングは場所が制限されている。技も何通りもあって、どこに飛んでいるか予期しなきゃいけないこともある。選手が失敗することもある。本当は左に飛んでいくのに、右に飛んで来る選手もいる。なるたけ試合を邪魔しないように、お客さんも見える場所において、早くカウントできるようなことをいつも心掛けてやっていました」

ーー他のレフェリングを見て勉強したことはありましたか。

「あんまりないですね。アメリカではありましたよ。サニー・マイヤース、あとフレンチっていうのがいた。アンドレ・ザ・ジャイアントがかわいがっていたレフェリー。日本にも来たことがある。細くてうまいんだよ。彼に教わったことがある。あとは体で覚えていきましたね」

ーー慣れてきたのはいつごろですか。

「半年ぐらい経ってじゃないかな。ある程度、流れが分かってくると、選手の呼吸が分かってくる。レスリングってかける場所が決まっているじゃない。自分は経験者だったから、そういうのは自分で計算できるようになっていきましたね」

ーーレフェリーとして43年のキャリアになります。印象に残っている試合を3つ教えてください。

「ベイダーとハンセンの東京ドームの試合(1990年2月10日)は忘れられないですね。もう、めちゃくちゃというか、何もできなくなっちゃった。ベイダーはマスクしてたけど、途中アクシデントがあった。ケガしてマスクを取っちゃった。でも、ハンセンは目が悪い。だからどこでも殴ってきちゃう。ベイダーは片目がボコボコになってふさがっちゃった。その後の場外戦。あれはどうしていいか分からなくなっちゃったね」

ーー2試合目は。

「猪木さんとフレアーの北朝鮮の平壌の試合(1995年4月29日、メーデースタジアム) ですね。お客さんが10万人入って、しかもプロレスというものを人生で初めて見たお客さんばっかりだから、どよめきとかフレッシュですごかった。日本の歓声とは違いますよ。ドドドドッってやまびこみたい。プロレスみたいなチャンスでしか行くことのできない国で、それも10万人が集まった中で、猪木さんとフレアーとあの試合をできたっていうのは誇りに思いますよ」

ーー3試合目はやはり、橋本真也VS小川直也(1999年1月4日、東京ドーム)でしょうか。小川の暴走ファイトで無効試合になりました。

「それですね。2人ともエゴが強すぎて、いい試合をしようというまでの考えはなかったんじゃないかと思います。自分たちの立場とか、自分のエゴとかそういうのが前に出すぎちゃって、緊迫感とかすごいのはあったけど、お互いに背負うものがあった。そういうのが逆に重くなりすぎちゃったところがあると思う。育っている世界が2人とも違ったからね。橋本も柔道をやっていたけど、橋本は新入生の頃から新日本で育てられて、道場で育てられた。小川は柔道の優等生で、明治大学を出てオリンピックは2位だったけど、でも実績はすごいじゃない。そういう自分の持っているもの、曲げられないもの、エゴのぶつかり合いの試合だからお客さんからしたら逆に面白かったと思います」

ーーレフェリーの立場からするとかなり難しい試合だったのではないでしょうか。 

「最悪だよね。試合なんてやる気なくてケンカするだけじゃない。でも、お客さんはそれが好きだからいい。それを求めて見に来ている。試合後、レフェリーとしては、しょうがないなと思いました。しょうがない。エゴの塊で2人とも曲げないでやっていましたからね。どうしようもないですよ。俺が何しようが、逆に試合を止めたから結果的にいいとかそんなんじゃないです」

ーー無数の選手を見てきてこの選手はすごいなと思う選手はいますか。

「オカダ・カズチカが一番すごいと思う。10年に1人ぐらいしか出ない素質を持っている。持っているものが違うと思います。あの身長で、あの瞬発力はすごい。かわし方とか、ちょっとできない。トップを取るだけのものは持っていると思う。なかなかああいう選手は出てこないですよ。運動神経もいいし、ほかの競技をやっても、何やっても、すごい選手になっていると思う。2メートル近い上背があって、あれだけジャンプできて、細かいこともこなすし、体のキレもいい。頭いいよ。なかなかああいう選手は出てこないんじゃないの」

ーー後楽園大会で引退された後のプランは描いていますか。

「今年いっぱいは新日本と契約しているから、エージェントなり、海外のブッキングとかやります。そのスタンスは、変わらないですね。先週もタンパに行ったけど、少し海外のことやろうかなと。いろいろできることを手伝おうかなと。ニューヨークに住んでいるから、向こうのコネクションも多いし、できることはしたいなと思います」

ーープライベートでやりたいことはありますか。

「ボケないように学校に行こうかなと。大工さんの学校に行こうかなと考えています。テーブルとかを作ったり、デザインを考えたりしてね。本当に真面目に考えているんだよ。家を作ったり、直したりするのが好きだから。もの作ったりするの好きだからね」

□タイガー服部(たいがー・はっとり)1945年7月20日、東京都出身。学生時代は明大レスリング部に所属し、アマチュアレスリングで活躍。世界選手権4位、全米選手権優勝。米国でレスリングを教える一方、外国人選手のエージェントを務め、77年、レフェリーデビュー。全日本プロレス、新日本プロレス、ジャパンプロレスなど主要団体で活躍した。マットを叩き続けてきた利き腕の左腕はひじが曲がりまっすぐには伸びない。

□「タイガー服部レフェリー引退記念大会」2月19日、東京・後楽園ホール、試合開始午後6時30分
※服部レフェリーは2試合に登場
▼8人タッグマッチ
棚橋弘至、飯伏幸太、矢野通、コルト・カバナ VS タマ・トンガ、タンガ・ロア、ジェイ・ホワイト、バッドラック・ファレ
▼6人タッグマッチ
オカダ・カズチカ、石井智宏、後藤洋央紀 VS 内藤哲也、鷹木信悟、SANADA

ENCOUNT編集部

最終更新:2/10(月) 19:30
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