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『クロノ・クロス』を愛する全員で作り上げた20周年ライブ。光田康典「もう一つの次元であなたは大切な人に逢えましたか?

2/10(月) 13:28配信

電ファミニコゲーマー

  2019年11月3日の豊洲PIT公演を皮切りにスタートした、『CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda & Millennial Fair』が1月25日・中野サンプラザ公演で幕を下ろした。

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 作曲家・光田康典氏を中心に、各ジャンルでそれぞれ活躍されている錚々たるメンバーによるバンドサウンドでアレンジされた『クロノ・クロス』の楽曲たち。そして作品のシーンを想起させられる舞台演出が見事にファンは盛りあがり、大成功のツアーとなった。
 ライブ後、『クロノ・クロス』ライブが終わった寂しさを表す「#クロノク・ロス」がTwitter上でつぶやかれている。

 ツアー前に公式パンフレットのインタビューで光田さんに今回のライブの狙いを聞いたが、その一つは「伝わりきっていなかったかもしれない『クロノ・クロス』のメッセージを改めて届けたい」ということだった。
 光田さんは物語の力を最大限引き出し、増幅させるために徹底して演出にこだわる作曲家。今回の『クロノ・クロス』20周年のライブでもそのこだわりを随所に感じたし、そして紛れもない「クロノっぽさ」を感じとった。

 それを言語化して皆さんと共有したく、今回はどうやってこの体験がつくられたのかを光田康典さんと、今回全体のディレクションを担当したプロキオン・スタジオの野﨑麻結さん(Twitter上ではファンに「mau」さんとして知られている)に伺っていく。
 その中で1月25日の中野サンプラザでのライブの模様も合わせてお伝えしたい。

取材・書き手/平田提

■ライブは『クロノ・クロス』のテーマを濃く反映した演出に

 まず『クロノ・クロス』という作品について触れておこう。
 『クロノ・クロス』は1999年に当時のスクウェアソフト(現スクウェア・エニックス)から発売されたPlayStation向けRPGで『クロノ・トリガー』の続編だ。『電ファミニコゲーマー』の読者の皆さんには説明不要だと思われるが、『クロノ・トリガー』は『ドラゴンクエスト』の堀井雄二氏、『ファイナルファンタジー』の坂口博信氏、鳥山明氏の「ドリーム・プロジェクト」として制作された(しかもスクウェアとエニックスの合併前に)。
 『クロノ・トリガー』は「ゲームファン7100人以上が選んだ“平成のゲーム 最高の1本”」第1位にも選ばれた。

 『クロノ・クロス』は、『トリガー』のメインシナリオの加藤正人氏や音楽・光田康典氏は続投しているが、キャラクターデザインが結城信輝氏(『聖剣伝説3』など)に変更、舞台も『クロノ・トリガー』とは一見結びつかなさそうな南国の島になっているため、『トリガー』とは違ったゲームの印象を一見受ける。
 『クロス』のストーリー中でも、『トリガー』ファンからするとショッキングに感じる展開があったり(パラレルワールドの展開ではあるもの)……プロキオン・スタジオのmauさんの言葉を借りると『クロス』ファンは「ちょっと肩身が狭かった」。ただ、プレイしてみれば最初の印象とはほど遠く、これほど濃厚な続編があっただろうか? というぐらい『トリガー』と『クロス』はリンクしている。

 『クロス』の主人公セルジュは、自分がトリガーとなって分岐したパラレルワールドに迷い込む。そして2つの「Home」「Another」の世界を行き来する中で、選択を迫られていく。
 光田さんが「伝わりきっていなかったかもしれない」とおっしゃる『クロス』のテーマは、「『トリガー』の選択が正しかったのか?」という問いでもあった。

 『トリガー』で主人公クロノたちはあるきっかけでタイムトラベルを始め、未来の1999年に世界が崩壊することを知る(1999年に恐怖の大王がやってくる「ノストラダムスの大予言」が流行っていたので、1995年当時はリアルな設定だった)。
 クロノたちは解決のため邁進する。しかし、その未来の選択の中でこぼれ落ちていってしまった「ありえたかもしれない未来」や人生もあるのではないか。『クロノ・クロス』という作品は、一度『トリガー』で世界を救ったプレイヤーたちに「あの選択は正しかったのか? 自分の選択に自分で責任を持てるのか?」と迫る作品でもあった。

 今回の『クロノ・クロス』ライブは『トリガー』『クロス』を経て、さらに大人になった私たちに、光田康典さんたちスタッフが『クロノ・クロス』という作品のテーマをライブで改めて届けてくれる機会だった。
 それは曲順や演奏、アレンジ、映像、照明などすべての演出に渡って設計されていた。その点について、プロキオン・スタジオの野﨑麻結さんに、曲それぞれのアレンジや演出の工夫についてお話を聞いていく。

1.CHRONO CROSS ~時の傷痕~
2.時の見る夢  
3.神の庭
4.死線
5.アル二村 
6.夢の岸辺に(アナザー・ワールド)
7.溺れ谷
8.テルミナ(Another)
9.影切りの森
10.蛇骨館/疾風/勝利 ~夏の呼び声~ メドレー
11.まどろみ
12.ガルドーブ
13.航海 アナザー・ワールド
14.古龍の砦
15次元の狭間
16.死海・滅びの塔
17.運命に囚われし者たち
18.エチュード1/エチュード2/MADICAL DREAMERS~風と星と波と~
19.世界のへそ
20.FATES ~運命の神~
21.炎の孤児院/星を盗んだ少女 メドレー
22.凍てついた炎
23.龍神
24.時の闇にて/あらかじめ、失われし、ともしび/生命~遠い約束~
25.RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~

──アンコール──

26.天晴驚愕大奇術団/ゼルベス
27.航海 ホーム・ワールド
28.クロノマンティーク
29.マブーレ

■楽譜には楽器名の代わりに、メンバーの名前が書いてあった

──改めてライブお疲れさまでした。僕はなんばハッチの大阪公演と中野サンプラザでの追加公演に参加しましたが、『クロノ・クロス』ファンにはたまらない、愛に満ちたライブでした……。

野﨑麻結氏(以下、野﨑):
 ありがとうございます! おかげさまで盛り上がって、チケットはすぐに売り切れて、ご要望にお応えして開催した再追加公演にも多くの方に来ていただきました。

──最終公演に向かうにつれて、どんどんメンバーの方の演奏も演出のクオリティもさらに仕上がっていったな、と素人目にも感じました。

野﨑:
 そうなんです。でも大阪のライブから一切練習はしてないんですよ。本来再追加公演の1月24日がリハーサルの日だったんですが、そこも本番になったので……。

──そうなんですか! 練習やリハーサルはだいたい何回ぐらいやられたんですか?

野﨑:
 計4日ですね。2019年10月28日、29日、31日、11月1日の4日間です。

──当たり前かもしれませんが、それだけの期間で仕上がるプロの皆さんの凄みを感じます。ライブでは30曲近く演奏されたわけですよね。楽譜も相当分厚くなったのでは? 光田さんが楽譜をつくられたんでしょうか。

野﨑:
 そうですね、光田がメインで楽譜を作りましたが、プロキオン・スタジオの土屋俊輔とマリアム・アボンナサーもアレンジに加わりました。光田と楽曲のアレンジの意図を相談しながら進めていました。

 今回の譜面には特徴がありまして、普通は「ギター1」「ギター2」と楽器の名前が書いているんですね。それが『クロノ・クロス』ライブの譜面には「(ギターの坂本)遥」「(ギターの佐々木)直也」という風に、名前で書いてあるんです。
 ミュージシャンの方も気づいていて、とても喜ばれました。これは光田のこだわりの部分でもあり、作曲家20周年ライブの時もそういった譜面だったそうです。

──「このメンバーでやるからこそのアレンジにしたい」と以前光田さんが語られていました。事前にミュージシャンの皆さんにはデモ音源も送られたんですよね?

野﨑:
 デモ音源もお送りしています。デモ音源にはソロパートも仮で入っています。「(ヴァイオリンの)壷井さんだったらこう弾きそう」など、光田なりにそれぞれのミュージシャンの方のキャラクターや演奏の特徴をイメージしてデモを作っています。

──それもミュージシャンの方は嬉しかったんじゃないでしょうか。

野﨑:
 はい、光田もメンバーの方もお互いリスペクトをもって演奏に臨めたのが伝わっていてとても良かったと思っています。毎回のライブでも、舞台袖でスタッフの方たちもみんなノリノリで聴いてくれてました。

■ミュージシャンへのリスペクトに溢れた楽曲アレンジと演出

──ライブ当日光田さんから説明もありましたが、メンバーの方それぞれが特定のキャラに扮した衣装を着て、配置も工夫されていましたよね。光田さんを中心としてステージ上手(右側)と下手(左側)でHomeワールド、Anotherワールドと見立てられていて。
 『世界のへそ』ではドラムとパーカッションの対決もあったり。

野﨑:
 立ち位置に関してはシンメトリーになるようにと光田と舞台監督の勇村さんで何度も調整をし、かなり気を使っていました。ライブハウスによっては12人ステージに乗るだけで結構ギリギリなんですけど。例えば左側にはギターが2人いて、右側にはヴァイオリンが2人と楽器も対になるようにして。

──『FATES ~運命の神~』などではギターとヴァイオリンがステージ前に出て対決したりしてましたね。それに「ヴァイオリンってこんなにアグレッシブな楽器だったの?」と驚きました。

野﨑:
 あれはとても白熱しましたね。ヴァイオリンの壷井さんはギター並にエフェクターボードが置いてある方で、特にアグレッシブだと思います(笑)。

──「死線」とかバトル曲もめちゃくちゃかっこよかったです。改めて聴くとバンドでさらに映える曲だったんだ! という。

野﨑:
 かっこいいですよね。それぞれのミュージシャンの方の演奏技術あっての迫力だったと思います。

──あと「溺れ谷」や「古龍の砦」って良い曲なんだけど、どちらかというと「B面」の曲だったと思うんですが……正直この2曲が一番かっこよかったです。アレンジも演奏も素晴らしくて。

野﨑:
 本当に、『クロノ・クロス』単体のライブじゃないとまず演奏されない曲でしたね。『溺れ谷』はプロキオン・スタジオの土屋俊輔にアレンジさせてみては? と私から光田に提案したんです。以前プロキオン・スタジオ主催『アナザーエデン 時空を超える猫』ライブでかなり好評だった土屋ライブアレンジ曲があり、『アナザーエデン』というゲーム自体もそうですけど、土屋も『クロノ・クロス』にとても思い入れがあるし、親和性があるかなと。『影切りの森』も土屋がアレンジしましたが、見事にバンドアレンジになってましたね。

──『影切りの森』も素晴らしかったです。2番からごりごりのバンドサウンド、ロックになってて。

野﨑:
 良いアレンジになってました。『古龍の砦』は同じくプロキオン・スタジオのマリアム・アボンナサーがアレンジしました。ベースの小栢(おがや)さんの演奏も毎回違うんですよ。ライブを続けていくうちにイメージを自分なりに変えていってくださったみたいで。

──ツアーならではの進化といえそうですね! 『古龍の砦』はドラムの山本さんのハイハットの刻みが最初からすごかったけど、どんどんかっこよくなってる!と感じました。
 あと尺八の神永さんのツイートで『RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~』の演奏の際、原曲のギターを担当されたZABADAKの吉良さんの演奏を元にしたクリックが流れていたというお話がなんとも感動的で……。

野﨑:
 そうなんです。今回のライブは映像とシンクロした曲以外はほとんどクリックを使っていないんです。『RADICAL DREAMERS』の原曲は、普通にクリックに合わせたインテンポで演奏しているとずれるんですよ。少し揺れてるんです。吉良さん独特のリズム感ですね。その吉良さんの揺らぎに合わせたクリックをわざと光田がこの曲用に仕込んでいたみたいです。吉良さんへのリスペクトですよね。

■ゲームのシーンを思い起こさせる映像・舞台演出

──舞台演出もゲームの場面や曲に合わせておられていて、素晴らしかったです。『蛇骨館』のときは、照明がサーチライトになってましたよね。
 館に忍び込んでいるので見つかったら戦闘……というゲーム内容とリンクしててニクい設計だなと思いました。

野﨑:
 あれは照明の佐藤さんが提案してくれたんです。こちらからはお願いしてないんですよ。スタッフのみなさんは改めて『クロノ・クロス』をプレイしたり、予習をしっかりしてくれてたみたいで嬉しかったです。

──「龍神」のときの後ろの映像は「クロノ・トリガー」のラヴォス戦のオマージュなのかな? とも思ったり。

野﨑:
 確かにそうですね。「時空、次元を移動しているイメージということと、背景の映像の色をヒントとなるように変えていきたい」というお話をしていたんですが、映像班のみなさんが、プラスアルファで演出をつけてくれたのかもしれません。

──あと映像で気になってたのが、例えば「神の庭」だと海の風景、「影切りの森」だと霧の中の森とか曲に合わせた風景の映像が後ろで流れてましたよね。あれは新規で撮った映像なんですか?

野﨑:
 新規で作っていただいた映像も多くあります。ゲーム映像をずっと流すとどうしてもそちらを見てしまうじゃないですか。今回はライブ感にこだわっていて、主役のミュージシャンのパフォーマンスに注目していただきたかったので、実写の映像も交えて演出していただくようにしました。この辺も光田がこだわった部分だと思います。
 「MAGICAL DREAMERS ~風と星と波と~」では「スラッシューーー!!」という声援もあり、ライブならでは!という感じで本当に嬉しかったです。

──ライブ前から気になっていたのは、『クロノ・クロス』には同じ曲でも「Home」「Another」両方のバージョンがありますよね。これはライブではどうなるんだろうと思ってましたが、いろんな形で2つの世界がアレンジされていて、驚かされました。
 特に『アルニ村』の演出は素敵でした。途中で主人公のセルジュがパラレルワールドに飛び込むゲーム映像がインサートされて、そこで曲調がチェンジするという。

野﨑:
 「Home」「Another」を1つの曲にするアレンジは「できないかもしれない!」と最後まで光田を悩ませていたのですが、あえてメドレーにはせず演出としてセルジュが次元を超える映像と共に「Home」と「Another」を切り替わるようなアレンジに変更したらとてもうまくいきました。

■“光田ファミリー”が総力を結集して作り上げた『クロノ・クロス』ライブ

──今回、野﨑さんは全体の進行から何から、ほとんどの部分に関わられておられましたよね。『クロノ・クロス』がきっかけでプロキオン・スタジオに入ったと聞きましたが、思い入れは相当あったんじゃないですか?

野﨑:
 本当にそうなんです。『クロノ・クロス』で光田の音楽と出会って音楽業界に入り、様々な経験を経た後に応募もしていないのにプロキオン・スタジオに「入れてください!」と連絡をしたくらいなので……。

 最初、『夢の岸辺に』がセットリスト入ってなくて「なんでですか! 入れてください!」って言ったり(笑)。

──制作サイドからも、ファン目線からもディレクションできたのは野﨑さんならではなんでしょうね。

野﨑:
 そうかもしれませんね。当然なんですが、光田は音楽を作ってる当事者なので、ファンの方と完全に同じ目線を持つのは難しいと思うんです。そこはファン代表として私が担当しました(笑)。

 あとは、私はバンドのマネージャーをしたり、ライブに関わることが多かったので、例えば『死海・滅びの塔』はバンドアレンジにしたらかっこよさそうですね、という意見を出したりしました。
 後半に向かってギターソロがノイジーに壊れていくような演出は見事でしたね。この曲ではギターソロに合わせてどんどん映像も壊れていくんですが、最初はその演出はなく画像が出てくるだけだったんですね。ですがアレンジが出来上がり、そのアレンジに合わせて歪んだギターソロと一緒に映像が壊れていくようにしたいと光田が映像スタッフの方にお願いし、流している映像をその時の演奏に合わせて壊れていくように映像スタッフに演出してもらっているんですよ。

──え、じゃあ公演ごとに演出が違うんですか? すごい!

野﨑:
 そうなんです。実は『次元の狭間』も2つの映像が組み合わさっていて、最後セルジュがカオスフィールドでセリフを言うシーンなどは、VJの方が「終わりそうだな」というタイミングで演奏に合わせて入れてくれてるんです。プレイした方なら記憶に残っているであろう、これは絶対使ったほうがいいという重要なシーンは入れるように配慮しました。

──野﨑さん始め、スタッフの皆さん“光田チルドレン”なんですよね。愛情がこもっている。

野﨑:
 “光田チルドレン”(笑)。確かにそうですね、平田さん(筆者)もそうですよね。

──そうです。確実に『クロノ』と光田さんに人生を変えていただきました。

野﨑:
 メンバーの皆さんもそういう方が多いんです。実はホイッスルやイーリアンパイプスの野口さんと私は中学の同級生で、野口さんはもともと学生時代はピアノ科だったんですけど、『ゼノギアス』のアレンジアルバム『CREID』を聴いて衝撃を受けて、ホイッスルの演奏家に転向して、単身アイルランドに渡ったり。

 今回の公演で協力いただいたテクニカルスタッフやエイベックス・エンタテイメント、U-NEXTの皆さんの中にも“光田チルドレン”がたくさんいらっしゃいました。皆さんにたくさんの愛情を込めて仕事をしていただき、ファンの方を含め“光田ファミリー”としてライブを成功させることができたと思っています。

──ある種、同窓会みたいでしたよね。こんなに『クロノ・クロス』ファンがいたんだ! と。嬉しくなりました。

野﨑:
 そうなんです。『クロノ・クロス』ファンは肩身が狭かったじゃないですか? ゲーム内容からも『トリガー』のファンの方から批判されることもあったり、忸怩たる思いをしていた『クロス』ファンも多かったんじゃないかと思うんですよね。「浮いた話」もなかったし(笑)。

 20年間、日の目を見ない感じとでも言いましょうか……。オーケストラも『トリガー』と一緒でしたし、『クロス』だけでフィーチャーされることはなかったですからね。だからこそ、ファンの方に満足してもらえるライブにしたいとずっと思ってました。

──僕は『クロノ』シリーズに共通するのって「優しさ」だと思ってるんです。それはお話の展開もそうだけど、関わるスタッフの愛ある作り込みがきっとそう感じさせるんじゃないかと思っていて。

野﨑:
 確かに。『クロノ・クロス』はラスボスも倒すのではなく、癒やしてあげるものでしたからね。

野﨑:
 今回のライブもそこは大事にしました。光田が言うには、今回のライブでキッドとセルジュはやっと出会えたんだ、と。ライブの最後に銀テープが放たれるんですけど、中野公演の銀テープには光田の「もう一つの次元であなたは大切な人に逢えましたか?」というメッセージが書いてあるんです。

──最終日にはエレメント色のバルーンまで飛び交ってましたね。

野﨑:
 お客さんみんなでできる体験をつくりたくて、光田に内緒でこっそり舞台監督の勇村さんにリクエストしたんです(笑)。本当はフライングハートの特効部分で普通サイズの6色の風船をたくさん降らしたかったのですが、演奏中に割れて音が鳴ってしまうということで断念しました。代わりにご提案いただいたフライングハートを飛ばすことになりました。結果、意味も合間ってそちらの方がいい演出になったと思います。

 とは言いつつ風船の夢が消えず(笑)、名古屋公演直後に一人でイギリスへThe Chemical Brothersのライブに行ったとき、大きな風船を曲中に飛ばしていたのを見てその楽しい体験に感動したんです。「これだ!」と思って、勇村さんに相談したら「じゃあやろう!」とおっしゃってくださり、実現できて嬉しかったです。

──ライブのテーマはきっとお客さんにも伝わりましたよね。

野﨑:はい、しっかり伝わったと思います。

──シナリオの加藤正人さんもライブに来られていたんですか?

野﨑:
 最終日に来ていただきました。終演後に光田とニコニコお話をされていたのを見て嬉しかったです。

──今回のメンバーの皆さんでの演奏、ぜひまた聴きたいんですが、再演の可能性もありえるんですか?

野﨑:
 どうでしょう? 『クロノ・クロス』のライブをやるなら、きっとこのメンバーになるはずです。

──今回のアレンジ版、もしくはライブ音源のCD化はファンのみなさんも望まれていると思いますがそれはいかがでしょう?

野﨑:
 たくさんのお客様のお声は届いております。

──とにかくライブが終わっちゃうのが切ないんですよね。「クロノク・ロス」ですよ。

野﨑:
 そう言っていただけてありがたいです。メンバーみんなで「今までにないくらいロスだよね」って言い合ってます。

 1月31日でU-NEXTの見逃し配信は終わりますが、2月25日からアーカイブ配信が始まります。2021年7月24日まで観られる予定です。
 舞台裏でカメラを回してたんですが、その映像も配信されるのでそちらも楽しみにしていただければと思います。ミュージシャンのみんなでオーディオコメンタリー的に生配信できたら面白そうですよね。

──もし『クロノ・クロス』ライブに次の展開があったりしたら、ぜひお聞かせいただきたいのですが……。

野﨑:
 あるといいですよね! いちファンとしても! 『クロノ・クロス』ライブのWebサイトで「時のたまご」をクリックして、「クロノ・クロス」エレメントを発動すると、光田からのプレゼントがダウンロードできますので、そちらもぜひ見ていただけたらと思います。

──ありがとうございます! プレゼントも感激です! 最後にこのライブをいったん終えられて、野﨑さんがどう感じられているのか教えてください。

野﨑:
 今回出演してくださったミュージシャンの皆さんは、本来であれば活躍されている場所もそれぞれ違いますし、もしかしたらずっと交わらなかったかもしれない方々だと思うんです。

 皆さん、それぞれエレメントのようにそれぞれ別の色や音のような個性ありますが、
光田がクロノクロスとなり虹色を発動したことによって素晴らしい共鳴が生まれ、とてつもないバンドになったんではないかと思っています。
 ゲーム音楽という枠に囚われず、良い音楽はジャンルレスで広げていきたいと常々思っているので、今回その夢が一つ叶ったのではないかと思っております。

 今回U-NEXTさんに配信をお願いしたことも、「ゲーム」というジャンルだけでとどまらず、様々な方にご覧いただける機会になると思ったのが大きいです。
 20年前「クロノ・クロス」をプレイしていて、今はゲームから離れているあの頃の少年・少女ももしかしたら今回の配信をきっかけで「クロノ・クロス」に再会するきっかけになっていたら嬉しいですね。

■ 光田康典「ファンと一期一会の時間を楽しむことが夢だった」

 ライブ終了後、作曲家・光田康典さんからもコメントをいただいた。『クロノ・クロス』単独のライブだからこそできる、細部までこだわりきった演出は光田さんやスタッフの皆さんの強い思いあってこそだった。

・光田康典さんからのコメント

 長いようで短かったクロノ・クロス20th Annivarsary Liveですが本当に出来る限りのアイディアを詰め込む事が出来ましたし、多くの愛のあるスタッフが意見を出しあって皆で作り上げたライブだったと思います。誰か一人でも欠けたらこのライブは完成しなかったと思います。

 『Xenogears』の20周年コンサートの時はプロキオン・スタジオが主催ではなかった為、大人の事情でどうしても出来なかった演出などが沢山ありました。なので、今回は予算関係なしに悔いのないようやりたい事をやろう!というのが我々の1番の思いでした。野﨑の頑張りもあり、本当に皆さんに楽しんでいただけるライブになったのではないかと思います。

 コンサートやライブは生ものです。ファンの皆さんと一期一会の時間を楽しむことが僕の夢でもありましたし、それが東京、大阪、名古屋、台湾とツアーを組み、4都市で体感出来た事は幸せの極みですね。Millennial Fairはこれからも活動をしていきます。いつになるかわかりませんが、また皆さんと会場で大騒ぎ出来る日が来る事を願っています。
 会場に足を運んでくださった多くのファンの皆様、U-NEXTをご覧になった皆様、本当にありがとうございました。

■『クロノ』らしい「優しさ」が溢れていた『クロノ・クロス』ライブ

 パラレルワールドがテーマの『クロノ・クロス』。「ありえたかもしれない未来」はゲームの中の話だけではないことは、『クロノ・クロス』のエンディングムービーを見終えると理解できる。
 『クロノ・クロス』は難解な設定を考察するのも魅力だったが、実はシンプルなボーイ・ミーツ・ガール作品でもあった。全く交わらなかった二人が偶然出会い、一緒になる。恋愛に限らず、ひょっとしたらライブ会場でたままた同じ現場に居合わせた、『クロノ・クロス』を愛する人たちもそうなのかもしれない。20年をかけて音楽を通して『クロノ・クロス』がまた新しい完結を迎えた瞬間だった。

 「全く交わらなかった二人が偶然出会い、一緒に」という構成は、実は楽曲にも反映されている。
 『トリガー』と『クロス』2つの作品の間に、サテラビュー(スーパーファミコンに接続して衛星放送でダウンロードしたソフトや番組を楽しめたデバイス)限定で配信された『ラジカル・ドリーマーズ』というサウンドノベルがある。この『ラジカル・ドリーマーズ』は『クロス』のお話や登場人物の原型があるものの、別作品とされている。ただ、この作品のために作られた楽曲は『クロス』でもふんだんに引用されている。
 メインテーマの『CHRONO CROSS ~時の傷痕~』では『トリガー』のテーマ曲Cメロをモチーフとし、『トリガー』『クロス』(『ラジカル』)のフレーズが交錯するようにも作られている。

 筆者は『クロノ』の良さとは、「『懐かしさ』をつくる『優しさ』」だと思っている。坂口博信氏は過去に『クロノ・トリガー ザ・パーフェクト』や『ファミコン通信 1995年3月24日号』で“2周目を楽しませたい”“堀井雄二さんの意見は、はじめて RPGをプレーする人でも、ある程度楽しめるようなものに……という方向性”と発言していた。
 『クロノ・トリガー』は2周目以降の物語を楽しませるために意図的に簡単に作られていた。何よりタイムスリップものと絶妙に相性の良い「つよくてニューゲーム」のシステムがそれを象徴していた。

 『クロノ・クロス』には「つよくてニューゲーム」はもちろん、「つよくてコンティニュー」も存在する。そもそも『クロノ・クロス』という作品自体、『クロノ・トリガー』で悲しい結末を遂げたキャラクターを救済するためのストーリーだったりする(乱暴に言い過ぎですが……)。
 その動機がめちゃくちゃ優しいし、愛が溢れている。

20年以上経っても『トリガー』や『クロス』を思い出すたびにみんなが懐かしく、嬉しそうな顔をするのは、この優しい工夫のおかげじゃないかと思っている。ゲームの外でも「つよくてニューゲーム」が始まっていく。

 実は今回の『クロノ・クロス』ライブにもそれを感じた。「懐かしさ」をつくる、「優しさ」である。
 そしてその優しさは徹底したプロ意識と作り込みによって実現されていた。
 ようやく20年経って、キッドとセルジュが会えた。そしてそのときには知りもしなかった、『クロノ・クロス』とその音楽をずっと愛し続けてきた人たちが邂逅した。『クロノ・クロス』のライブツアーで、まさにそんな奇跡が起きていた。そしてその背景には、光田康典さんやミュージシャンの方々、プロキオン・スタジオの皆さん、スタッフ全員の愛に満ちた仕事があった。

電ファミニコゲーマー:平田提

最終更新:2/10(月) 13:28
電ファミニコゲーマー

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