ここから本文です

バスケ素人の八村塁に同級生が一から手ほどき…5対5でこそ生きる才能に気付いた中学校コーチは「これはもう、ぜんぜん違うなと」

2/11(火) 9:10配信

中日スポーツ

 56年ぶりの東京五輪開幕まで残り半年を切った。いよいよ近づいてきた本番で活躍を期待される主役候補が一流アスリートになる転機、きっかけはどこにあったのか。全5回に分けてそのルーツ(根源)を探る。第1回はバスケットボールの最高峰、米NBAのドラフトで日本人初の1巡目指名を受け、男子日本では44年ぶりとなる五輪の舞台に臨む八村塁(22)=ウィザーズ。

【写真】本拠地でグリズリーズ戦に先発した八村塁

 少年はひょいっと片手でボールをつかみ、持ち上げてみせた。直径23センチ、重さ510グラム以上のバスケットボールを軽々と。「あ、君はNBA並みだな」。思わずバスケットボールの本場・米国、世界最高峰のプロリーグの名が出た。

 富山市の奥田中学校バスケットボール部の坂本譲治コーチは、その少年、八村塁が初めて部に顔を出したときの印象をこう語る。

 「何もできないんだけれども、そのボールをつかめることで、いろんなことがすぐにクリアできた」

 小学生時代に野球をしていた八村は、抜群の身体能力で未来のプロ選手と期待されていた。ここでスカウト攻勢をかけたのが坂本コーチだった。

 「当時の新入部員はミニバス経験者の優れた選手が多く、県でそこそこのレベル。でもサイズがない。だから『おまえたちが2年後に全国大会を目指すなら、大きい選手を連れてこないと』と。それで(部員に)八村を誘わせた」

 八村は教室で連日、部員たちから「一緒にバスケをしよう」と声を掛けられた。体験入部期間が終わり、本格的に部を選ばないといけなくなった4月末。しつこい勧誘に根負けした八村が練習に参加した。練習や部の雰囲気が気に入ったのか、「じゃあバスケ、やろうかな」と入部を決めた。

 八村は入学時にすでに身長170センチ、リーチ(両腕を広げたときの長さ)が185センチと身体的に恵まれていたものの、バスケットボールに関しては本当に素人。ドリブル、パス、シュートと、同級生の部員たちは一から熱心に手ほどきをした。

 坂本コーチも「将来はNBAに行けるよ」と言い続けた。確信があったわけではない。やる気を持たせるために、ことあるごとに「NBA」を話題にした。マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、デニス・ロッドマン、ラリー・ジョンソン…。NBAスターの名を挙げ、こうした選手たちの動きや技術を伝えることもあった。

 1年がたったころ、坂本コーチは八村の視野の広さに気が付いた。仲間や敵のいる位置を判断して、パスを出す方向やタイミングを瞬時に把握できる。しかも選手の動きに合わせて、パスを速く出したり、山なりの軌道で出したりと、柔軟に対応できた。「立体的に考えながら上から見ているような状態。空間と時間を把握する能力がかなり高い。これはもう、ぜんぜん違うなと」。1対1より5対5だからこそ生きる天性の能力だった。

 2年からチームの主力となり、迎えた最後の3年夏。成長を支えてくれた仲間たちと、全国中学校大会を準優勝で締めくくった。その中学時代から夢見たNBAの世界で今、八村は日本人初の1巡目でドラフト指名を受けてウィザーズ入り。規格外の快挙を遂げた男は、男子日本代表として44年ぶりの五輪となる東京の大舞台に挑む。

▼八村塁(はちむら・るい)1998(平成10)年2月8日生まれ、富山市出身の22歳。203センチ、104キロ。奥田中でバスケットボールを始め、宮城・明成高時代にU―17世界選手権で得点王に輝く。米ゴンザガ大を経て2019年、NBAのウィザーズに入団。西アフリカのベナン出身の父と日本人の母を持つ。

最終更新:2/11(火) 9:10
中日スポーツ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ