ここから本文です

[寄稿] 世界経済は日本化するのか

2/11(火) 14:27配信

ハンギョレ新聞

 世界経済に一つの幽霊が飛び交っている。先進国が皆日本のようになるという「日本化」に関する心配がそれだ。日本は1990年代初めのバブル崩壊以後、永く長期不況とデフレ、そして低金利が続き、様々な政策にもかかわらず経済成長が停滞した。

 現在の世界経済の姿を見れば理解できる。グローバル金融危機以後、先進国は中央銀行の努力に力づけられ、経済崩壊は免れたが、その後に経済が早く回復していないためだ。総需要の鈍化でインフレも金利も低いが、量的緩和やマイナス金利のような非伝統的通貨政策にも限界が大きいために、財政の拡張が必須という声が高い。今度、次の不況が迫るなら、いかなるマクロ経済政策で対応できるか、意見が入り乱れている。

 何より他の国々も日本のように高齢化が進展し成長が鈍化するという憂慮が大きい。実際、日本の長期停滞は人口の変化と関連がある。日本の生産可能人口は、1995年に頂点に達し、その後減少してきたが、これは当然経済全体の生産に悪影響を及ぼしただろう。また、高齢化は経済の消費と需要に悪影響を及ぼし、労働者が年を取れば生産性の上昇が鈍化しうる。

 だが、高齢化とともに企業が投資を増やし、より良い機械を使うならば労働生産性が高まることもある。実際、労働者の時間当り産出で測定される日本の労働生産性は、他の先進国に比べても さほど悪くなかった。1997年から2018年までに日本の労働生産性は約28%上昇し、米国やスウェーデンよりは低かったものの、英国やドイツよりは若干高かった。

 各国の資料を比較しているマサチューセッツ工科大(MIT)のアシモグル教授らの最近の実証研究も、1990年から2015年まで高齢人口比重の増加が1人当り国内総生産の成長率に一般的に悪影響を及ぼさなかったと報告した。彼らは、高齢化が早く進展した国々が産業用ロボットをより多く導入し生産性を高めたと強調する。すなわち、高齢化によって世界経済がいわゆる構造的長期停滞に陥るという憂慮は根拠が希薄だということだ。

 これに対してブラウン大学のエッガートソン教授らは、2008年の金融危機以前まではそれが事実だが、金利がゼロに近く低くなった危機以後には高齢化が経済成長に悪影響を及していると説明する。ゼロ金利以前には高齢化が貯蓄を増加させ、実質金利を低くして投資を促進できるが、名目金利がゼロに到達しインフレが低い現在は高齢化がこれ以上金利を低くすることができずに、過剰貯蓄を生み成長に及ぼす悪影響がさらに大きくなったということだ。

 彼らの研究は、金融危機の前後で高齢化が投資に及ぼす効果が変わったのかについて証拠が不十分で、危機以後の期間が短いという点で限界もある。しかし、不平等の深化などで総需要が不足して、ゼロ金利と長期停滞が現れる状況で高齢化が進展すれば、経済の日本化の危険が深刻化するという重要な示唆を提示する。

 総需要の鈍化と関連して、日本で特に重要な要因は資本と労働の間の不均衡だった。事実、日本経済の問題は他の国々に比べて賃金上昇率がはるかに低かったということだ。2017年、日本の時間当り名目賃金は1997年とほとんど同じだったが、米国は約90%、ドイツは約50%上昇した。一方、日本は韓国と共に先進国の中で1990年代以後に企業の利潤と貯蓄が最も高くなった国だが、投資はそれほど増加しなかった。これは、アベノミクス以後も同じで、日本企業の現金保有は2013年以後に3倍以上に増え、2019年第3四半期には約506兆円を記録した。

 結局、生産性上昇の果実は労働者の手に戻らず、労働所得分配率が下落し、アベノミクス以後にも賃金上昇が振るわず、労働者の持分は一層小さくなった。これは、労組組織率が下落して構造調整が拡大した労働市場の変化との関係が大きい。日本の非正規職比率は、1990年の約20%から2018年には約38%に高まり、賃金の不平等も大きくなった。こうした変化は消費を押さえ込み総需要を鈍化させて、経済の回復と成長を遮断した要因だった。

 急速な高齢化とともに成長率が下落している韓国も、日本の前てつを踏むという声が高い。避けられない流れである高齢化の悪影響を過度に恐れることは望ましくないだろう。だが日本の経験は、日本化という幽霊を避けるために分配の改善など総需要拡大のための努力が必須であることをよく示している。


イ・ガングク立命館大経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:2/11(火) 14:27
ハンギョレ新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ