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[寄稿]新型コロナウイルス以上に深刻な“危険”

2/12(水) 7:56配信

ハンギョレ新聞

 今回の中国発新型コロナウイルス事態は、人間が作り出した危険が確実に国際化して日常化されたことをよく示している。こうした新しいウイルスによる生命の危険と共に、おそらく気候・環境危機、食糧不足、水不足など、それらに関連した葛藤と戦争の危険は、まもなく襲ってくるだろう地球的災難になるかも知れない。不可抗力の自然災害や大惨事をむかえれば、人間にできることはほとんどない。しかし、私たちは中国政府の対処過程を見て、民主主義と真の国民基本権保障、責任政治が依然として危険の安全弁になることを改めて確認した。

 文在寅(ムン・ジェイン)政府は、新型コロナウイルス事態にきわめて迅速かつ積極的に対処している。MERS拡散当時に朴槿恵(パク・クネ)大統領が国内での確定診断者の発生から16日後に国立中央医療院を訪問するなど、事実上無策だったのとは明確に対比される。そこから私たちは、“手洗い”と “マスク”、すなわち各自が自身の安全と生命に責任を負わなければならない水準を超える国家、社会の安全弁があると感じる。

 しかし、公共病院の比率が6%にも満たない韓国の実情を考えてみれば、将来こうした事態が再発し、患者が爆発的に増加すれば、先日の鎮川(ジンチョン)、牙山(アサン)のようなことが繰り返されない保障はない。

 韓国は、地震、環境災害、伝染病などによる災難と危険はあまり体験しなかったが、他の国とは違い戦争、安保危機のような危険は慢性的に体験してきた。そして、市場の危険、すなわち解雇、非正規職化、労災などによる生存の危険はきわめて深刻だ。

 地震や伝染病の拡散のような準自然的危険が迫った場合には、3・11東日本大震災や今回の中国のように平素の国家の責任性と公共性、真の国民主権の保障の有無が表面化し暴露されもする。しかし、市場の危険、すなわち日常と職場での生存と安全に関連した事案についてはこうした点が見えにくい。しかし、新自由主義時代に韓国と世界の一般大衆は、伝染病以上に日々耐えなければならない“危険”のために不安を感じている。

 まず公共医療の不備のため、金がなければまともに治療も受けられない人々にとって、病気と死亡の危険は、新型ウイルスの危険以上に深刻だ。韓国では毎日37人が自殺して、3人が労災で死んでいることについて考えてみよう。彼らにとって“暮らしの中の危険”は慢性的で、彼らの死の相当部分は国家の無責任と関係していると言える。すなわち、市場の危険は特定の階級、階層に苛酷に迫る。

 市場の危険とは、すなわち社会的権利の不在を意味する。それは、住宅、医療、教育などすべての領域で国家の公的介入がきわめて微弱なことからもたらされる。公共病院の比率と健康保険の保障率が非常に低いことに加えて、私立大学が全体の85%を占め、大学授業料の自己負担比率が80%を超え、賃貸住宅の比率が5%程度に過ぎず、国内総生産(GDP)に対する社会的支出が依然として経済協力開発機構(OECD)国家の最下位圏に留まっている事実が、それを雄弁に物語っている。

 こうした深刻な市場の危険のために、大多数の韓国人は依然として韓国が「各自生き残りの世の中」と考え、きわめて競争的な生活を送っていて、精神的に疲弊した状態にある。市場の危険を可能な限り縮小し、社会的弱者の生命と安全を保障するためには、医療、住宅、教育など国民の基本権に関連した領域に“営利”の論理が入らないようにしなければならず、利益があれば徹底して税金として還収しなければならない。より単純に言えば、国家は企業が国民の生命権、住居権、教育権に関連したことで金を稼げないようにしなければならない。

 そのためには政策の目標と方向の設定が大変に重要だ。例えば、ソウルの住居価格を下げることを目標にするのではなく、庶民の住居権の保障が目標になるべきで、地方大学の崩壊を防ぐことを目標にするのではなく、高等教育の正常化や公共性の拡大という目標の下に当面の事案を扱うべきだ。また、労災死亡規模の縮小を目標にするのではなく、職場の安全保障のための企業の責任性強化と非正規労働者の権利増進を目標にしなければならない。

 市場の危険に一層深刻に露出した一般大衆の安全保障と基本権強化を政府が目標に設定すれば、政策の手段や方法も変わるだろう。もちろん一部の政界関係者のように、医療、教育、住宅の公共性が比較的高い欧州の福祉国家が追求した政策代案や、今回民主党が提案した土地の公共概念までも“社会主義”だと追い詰めるならば、対話そのものが成り立たない。

キム・ドンチュン 聖公会大NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:2/12(水) 7:56
ハンギョレ新聞

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