ここから本文です

阪神5000系「ジェットカー」など引退へ - 移動等円滑化とは

2/13(木) 12:11配信

マイナビニュース

阪神電気鉄道が本線の普通用車両5000系と、武庫川線の車両(7861・7961形、7890・7990形)の全車両置換えを公表した。5000系は短い駅間を最速で走るために、日本の鉄道車両としては屈指の高加速・高減速性能を持つ「ジェットカー」のひとつ。このうち抵抗制御車の5001形は1977~1981年に計32両が製造された。車齢は39~43年。全車両が現役だが、2023年度までに新型車両5700系へ置換えとなる。

【写真】武庫川線を走る7861・7961形

武庫川線の7861・7961形は、本線の特急・急行用だった7801・7901形の2両編成版といえる車両で、1966~1968年に16両製造された。本線ではおもに増結用として活躍し、その後は武庫川線に転じた。3編成6両が現存し、車齢は52~54年。7890・7990形は、本線の特急・急行用として1974~1977年に製造された3801・3901形のうち、先頭車2両を組み合わせて改造を行い、1986年に武庫川線へ投入された。車齢は43~46年。武庫川線では5500系を改造した上で投入し、既存の計8両をすべて置き換える。

車齢40年程度まで使われる電車は少なくない。車齢50年以上の電車が現役で活躍している事例もある。阪神電気鉄道の5000系や武庫川線の車両が引退する理由は老朽化もあるだろうけれど、「移動等円滑化が十分になされていない」ことが決定打となった。今回の情報源は、阪神電鉄公式サイト上に公開された「移動等円滑化取組計画書」。意外なところに鉄道ファン必見の情報があった。

「移動等円滑化」とは、バリアフリーやユニバーサルデザインの考え方にもとづき、公共交通機関や公共の建物において、誰もが移動しやすい環境を整える取組みを指す。バリアフリーは高齢者や体の不自由な人にとって困難な状態を取り除こうとする考え方であり、ユニバーサルデザインはもっと対象を広くして、年齢・性別・言語・国籍・文化が違っても利用できるしくみのことである。駅構内でいえば、階段の横に設置された車いす用スロープはバリアフリーに対応した設備だけど、階段の他にもエスカレーターやエレベーターを用意すれば、大きな荷物を持った人やベビーカーを利用する人も使いやすくなる。これがユニバーサルデザインの考え方だ。

鉄道車両に関して言えば、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」の第30条~第33条に準じた仕様にすることが「移動等円滑化」となる。たとえば、「車両とプラットホームの隙間はできる限り小さく(第31条の1)」「乗降口は1列車につき1カ所以上は幅80cm以上にする(第31条の3)」「車椅子スペースを1列車に付き1カ所以上設置する(第32条)」「客室には、次に停車する鉄道駅の駅名その他の当該鉄道車両の運行に関する情報を文字等により表示するための設備及び音声により提供するための設備を備えなければならない(第32条の5)」「常時連結している部分は転落防止設備を設置する。ただし停車駅すべてにホーム柵がある場合は例外(第33条)」といった内容が示されている。

阪神電気鉄道が公開した「移動等円滑化取組計画書」によると、本線の普通用車両(5001形)は「新造竣工後40年を経過しており、移動等円滑化が十分になされていないこと」を理由に、全車両を「新型車両5700系に置き換える。(2020~2023年度予定)」という。あわせて「武庫川線車両(8両)については2020年度に全車両、車齢20年程度の車両を改造して移動等円滑化対応を推進する」と説明しており、既存の7861・7961形、7890・7990形を置き換える車両として、「5500系車両を改造する。(2019年度)」とのことだった。

■他社の「移動等円滑化取組計画書」はどうか

「移動等円滑化取組計画書」は昨年末以降、各鉄道事業者が一斉に公開している。これは2018年5月にバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)が改正され、公共交通事業者が移動等円滑化を計画(第9条の4)し、国土交通大臣に報告(第9条の5)し、公表(第9条の6)が義務づけられたからだ。

筆者は当初、行政の要請に対応する文書だけに、鉄道趣味的な情報はないだろうと考えていた。阪神電気鉄道の車両動向も、ブログ「鉄道プレス」の1月31日付の記事「【阪神】日本一加速が早い5001形車両、5700系に置き換えへ…2023年度までに」がきっかけで知った。なるほど、そういえば小田急電鉄の「HiSE」が早期引退した理由も、ハイデッカー構造がバリアフリーに対応しにくかったからだ。そこで認識を改め、JRグループや大手私鉄など、他社の「移動等円滑化取組計画書」を確認してみた。

●JRグループの取組み(車両関係)


JR北海道 : H100形一般気動車を2019年度内に15両導入。2021年度末までに75両導入。261系気動車を2019年度までに20両導入、2022年度末までに50両導入予定。
JR東日本 : 2019年度に新幹線7編成(80両)、在来線53編成(307両)、計60編成を導入予定。
JR東海 : N700系、313系の投入により、国の基本方針「車両総数の70パーセントをバリアフリー」を達成済み。2020~2022年度にN700Sを40編成投入。
JR西日本 : 227系、271系、521系の新製。221系、207系、223系のリニューアル。
JR四国 : バリアフリー化された2700系車両を2020年度までに39両導入し、老朽化した車両を更新。
JR九州 : 新型車両の821系電車を3両編成3本、計9両を導入する。新型車両のYC1系を24両導入する。811系の室内更新工事を4両編成3本、計12両で実施。すべて2020年度。


●大手私鉄の取組み(車両関係)


東武鉄道 : 全1,893両のうち71%にあたる1,344両をバリアフリー化し、目標値を達成。70000系を6編成導入(2019年度)、20000系5編成をバリアフリー化改造(2019年度)。
西武鉄道 : 001系5編成を導入、40000系2編成を導入(2019年度)。
京成電鉄 : 成田スカイアクセス線~押上線に3100形8両編成2本を導入(2019年度)。
京王電鉄 : 京王線1編成の車両連結部に転落防止幌を新設し全編成整備完了。車椅子スペースを全車両に設置。京王線3編成26両、井の頭線3編成15両(2019年度)。
東急電鉄 : 田園都市線に新型車両2020系を10両編成6本導入(2019年度)。田園都市線で新型車両2020系への置換を2020年度までに完了予定。
京急電鉄 : 800形車両6両編成1本を1000形新造車両に代替する。さらに1000形8両編成1本を新造増備。1000形車両の車内案内表示器ディスプレイ化を4編成24両実施(2019年度)。
小田急電鉄 : 新型通勤車両5000形10両編成1本を導入。通勤車両1000形4両編成1本、10両固定編成1本のリニューアル工事を実施。特急車両30000形4両編成1本、6両編成1本のリニューアル工事を実施(2019年度)。
相模鉄道 : 12000系を6編成導入(2018~2019年度)、20000系を16編成導入(2017~2023年度)、7000系を廃車し2020年度までに全車両のバリアフリー化を完了。
名古屋鉄道 : 9500系新造車両4両編成4本16両を導入。2200系特別車、新造車両2両編成2本4両を導入、3500系既存車両4両編成3本を改造しバリアフリー化(2019年度)。
近畿日本鉄道 : 新型名阪特急を3編成導入する(2019年度)。老朽化した車両をバリアフリー化された車両に順次更新、2020年度までに11編成72両導入。
南海電鉄 : 2022年度までに、9000系車両32両のバリアフリー化対応工事を実施。2023年度までに老朽化した車両をバリアフリー化された車両に順次更新し、84両導入する。
京阪電気鉄道 : 6000系車両2編成のバリアフリー化対応工事を実施(2019年度)。
阪急電鉄 : 2019年度末までに車齢25年程度を目安として車両の改良工事を実施する。神戸線7000系1編成、宝塚線7000系1編成。車齢50年程度を目安として新製車両と交代する。宝塚線に1000系を1編成、京都線に1300系を2編成導入。
西日本鉄道 : 6050形4両編成1本に車椅子スペースを増設。移動円滑化が十分になされていない車両の新型車両への置き換えを推進。


●準大手私鉄の取組み(車両関係)


新京成電鉄 : 新型車両80000形を1編成導入する(2019年度)。2021年度も新型車両を1編成導入し、全26編成で車椅子スペースを設置完了予定。
泉北高速鉄道 : 5000系車両8両に「立ち座りしやすい縦手すり」「ドア開案内チャイム」「ドア開閉動作開始ランプ」「号車及び乗降口位置(扉番号)の点字・文字表示」を設置。
北大阪急行電鉄 : 8000形2編成の大規模改修若しくは新造車への更新(時期未定)。
山陽電気鉄道 : 新型車両6000系を4両編成3本12両導入する(2019年度)。既存車両5000系、5030系のうち、1編成6両のバリアフリー化改造を実施する(2019年度)。老朽化した車両59両を新造車両に順次更新する(2021年度)。経年20~30年の車両についてバリアフリー化工事を継続的に実施。


ここではJR、大手私鉄、準大手私鉄の公開情報のうち、車両関係のみ列挙した。「移動等円滑化取組計画書」の内容は他にも駅の改良、アプリの開発、サービス介助士資格取得の取組みなど、多岐にわたる。交通事業者のほとんどのサイトで公開されているので、気になる会社があればチェックしてみよう。

杉山淳一

最終更新:2/13(木) 12:11
マイナビニュース

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ