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民族、生き方、友情、民主主義、未来…「戦闘モノ」の範疇に収まらないスナイパーの告白

2/13(木) 18:01配信

本がすき。

『この指がISから町を守った クルド人スナイパーの手記』光文社
著/アザド・グディ 訳/上野元美

クルド人。おそらくほとんどの日本人にとっては、馴染みの薄い名前だろう。知っていても、その実態を把握している人は、少ないと思う。本書は、そのクルド人のスナイパーがクルドの民衆のために身を捧げた、ある戦闘での手記である。

内容は、当然のごとく戦闘場面のリアルな記述が大半を占めている。

まず、スナイパーという役割が、どういうものなのか。その役割に徹することで、その者の人間性がどう変化していくのか、その辺りが克明に記されている。そして、寒さと飢えと乾き、砂埃と爆風爆音、隣り合わせの死の真っ只中に晒されている感覚が読書を通してリアルに立ち上がる。それは映画を見ている以上に想像力に訴え、現実を知ろうとする好奇心をさらに刺激して、久しぶりの止まらない読書となった。

普段は、戦争関係の本に対しては抵抗があり、それは読む前から予想される読後の無力感、絶望感を避けようとしているからだ。戦争紛争のニュースも同様に、現実を知らなくてはいけないと考えるのだが、日々雑多な事象をこなし、個人の時間くらいは、ある種の憩いを求めがちな中で、戦争紛争関係に対しては、ハードルが高いなと感じてしまうのが正直なところである。それは恥ずかしいことなのだが、それでも定期的には、向き合うことにしてもいる。

本書によれば、クルド人というのは、世界でも最古の民族のひとつだという。農耕を始めた人たちとしても歴史上に輝いている。そんな誉高い民族なのだが、現在は固有の国土を持たず、主にイラン、イラク、トルコに分散している。それぞれの国にとって、クルド人は独立運動などが絡んでキナ臭い存在で疎まれている。

25年くらい前に、トルコを旅してた時のことだ。ある街外れにクルド人の古城があると聞き、雪の降る中を一人で二時間ぐらい歩いて訪れたことがある。知り合いになったトルコ人からは、クルド人はテロリストだから気をつけろと忠告されたのだが、それを無視しての行動だった。古城に到着すると、番人が出てきて対応してくれたのだが、なにせ言葉が通じない。お願いしてポートレイトを撮影させてもらったことに満足して帰った、というだけの話だが、50歳前後のその男が私が初めてそれと知って会ったクルド人だった。

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最終更新:2/13(木) 18:01
本がすき。

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