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遺言書の効力が弱化 知らないうちに遺産を横取りされる危険性を解説

2/14(金) 20:03配信

マネーの達人

2019年、2020年と相次いで改正相続法が施行されます。

一連の改正内容は近年の相続の実態に則したものであり、いずれも良い改正だといえるでしょう。

しかし、法に不備はつきものなのかもしれません。

遺言書があるから大丈夫だと思って安心していると、知らないうちに遺産を横取りされる危険性が出てきているのです。

この記事では、2019年7月1日から既に施行されている改正相続法の中から特に注意すべき点をご紹介します。

不動産を横取りされるケース

例えば、被相続人の遺産として評価額3000万円の自宅があり、相続人として長男Aと次男Bがいるとします。

被相続人が「自宅の所有権は長男Aに譲る」という遺言書を残していれば、相続法改正前ならAさんは安心してゆっくりと相続手続を進めることができていました。

遺言書があることによって、Aさんは相続登記をしなくても自宅全体の所有権を第3者に対しても主張することが可能だったのです。

しかし、2019年7月1日に施行された改正相続法によってAさんは安心できなくなっています。

■遺言書があっても相続登記をしなければ第3者に対抗できなくなった
改正相続法では、次の条文が新設されています。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
民法第899条の2
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

つまり、相続した不動産について、法定相続分を超える部分については登記をしておかなければ第3者に所有権を主張することができなくなったのです。

上の例でいうと、自宅の所有権について、次男Bさんによって法定相続分にあたる2分の1の持ち分を横取りされる危険があります。

まず、Bさんは2分の1の持ち分については無断で自宅の所有権を自分名義に登記ができます。

そして、その持ち分を事情を知らない第三者に売却すれば、Bさんは1500万円よりは少ないでしょうが現金を手にできます。

仮に評価額の7割にあたる1050万円で売れたとすれば、遺留分(4分の1)である750万円より300万円もBさんが得することになってしまいます。

自宅の持ち分が売却されて登記されてしまうと、法定相続分を超える部分については、もはやAさんは事情を知らない買い受け人に対して遺言書による自宅の全部相続を主張することはできなくなります。

■Bさんの債権者が自宅を差し押さえることも
Bさんに遺産を横取りするような悪意がなかったとしても、Bさんに債権者がいれば自宅を差し押さえられることがあります。

Bさんが借金をしていて返せなくなった場合、債権者はBさんの法定相続分については自宅を差し押さえることができます。

差押えの登記がされてしまうと、やはりAさんは債権者に対して遺言書による自宅の全部相続を主張できません。

以前は遺言書の効力は絶対的でしたが、相続法の改正によって少し効力が弱まったといえるのです。

■遺産の横取りを防ぐ方法
この例で、Bさんは正当な利益を有する「第3者」にはあたりません。

したがって、AさんはBさんに対して300万円の返還は請求できます。

しかし、裁判をするには手間や精神的負担もかかります。

弁護士に依頼するとそれなりの費用もかかってしまいます。

勝訴したところで、Bさんがお金を使ってしまっていて返還能力がなければ徒労に終わるおそれもあります。

したがって、遺産の横取りを防ぐためには、Aさんがいち早く遺言書のとおりに相続登記をする必要があります。

ただし、自筆証書遺言については家庭裁判所で検認を受けなければなりません。

検認の手続には1か月程度はかかるため、その間にBさんに先を越されてしまうおそれがあります。

検認の手続きを省略するためには公正証書で遺言を作成してもらうか、2020年7月10日から始まる法務局での遺言書保管制度を利用する必要があります。

あるいは、自宅の所有権全部について生前贈与を受けておくことも考えられます。

いずれにしても、Aさんは早めに手を打たなければなりません。

以前のように、四十九日が終わってからゆっくり相続のことを考えるつもりでいては遺言書どおりの相続はできなくなるおそれがあるのです。

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最終更新:2/14(金) 20:03
マネーの達人

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