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新型肺炎に揺れる2つの街 風評に悩みも…住民たちは今

2/14(金) 11:17配信

西日本新聞

 中国・武漢からの帰国者がホテルに滞在した千葉県勝浦市と、乗客乗員の感染が止まらないクルーズ船が停泊する横浜市。新型コロナウイルスによる肺炎に揺れる二つの地域を歩くと、風評被害に悩み戸惑ったり、正しい情報を知ることで冷静さを取り戻し、当事者を応援したりする住民たちの姿があった。

【写真】「健康ならマスクをつけないで」と呼び掛ける新聞広告

「寝耳に水」一時パニックも

 「武漢から人が来て、市民のマスク着用率が格段に上がったんだ」。千葉県勝浦市内のスーパーを訪ねると、男性店長(48)がこう教えてくれた。11日午後6時すぎ。店の客と従業員計30人は全員が、白いマスクを着けている。

 市中心部の海沿いにあるホテルに、武漢からのチャーター機第1便の約200人が到着したのは、1月29日のこと。「寝耳に水」(市職員)の受け入れは街に一時、パニックを引き起こした。

 主婦(62)はマスクを求め、夜にマイカーを走らせた。1軒、2軒、3軒と売り切れ。隣の鴨川市の店でようやく10枚を確保したが、「手に入らなければ感染する、とおびえた」。

 福祉施設に勤める女性職員(49)は、40キロ離れた茂原市まで食料品を買いに行った。「帰国者がホテルを出て、市内で買い物をしている」。そんなデマが広がったためだ。職場には90歳代の入所者もいる。自分が感染する事態になり、入所者まで命の危険にさらすようなことは絶対にできないと思ったという。

 勝浦市教育委員会も1月30、31の両日、「児童、生徒の健康状態を観察する必要がある」として、小中学校全6校の部活動を中止した。影響は広がるばかりに見えた-。

 「あれを機に皆が落ち着いた」と多くの市民が認めるのが、市が2月3日に開いた住民説明会だった。「普通に生活して全く問題ない」。専門医が丁寧に解説し、会の動画は市のホームページにも掲載された。帰国者を避ける空気が、応援する機運に変わった。中学生はメッセージを書き、ホテル前の海岸では住民らが竹灯籠の光や太鼓の演奏で「頑張れ」と呼び掛けた。

 帰国者は13日、ホテルから全員退去した。だが市民が気に掛けるのは、風評被害の長期化だ。市内の旅館には、「子どもがいるから勝浦には行けない」などのキャンセルが来た。市観光協会の渡辺幸男会長(76)は「深刻なら国に賠償を求めるかも」と眉を曇らせる。(湯之前八州)

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最終更新:2/14(金) 11:47
西日本新聞

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