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【緊急連載 広島中央署盗難書類送検】<上>競馬に没頭 多額の借金 4カ月後に死亡 県警、犯行日の特定までに時間

2/15(土) 0:13配信

中国新聞デジタル

 警察署で多額の現金が盗まれた広島中央署の盗難事件は、発覚から1012日目で区切りを迎えた。広島県警が14日に窃盗などの疑いで書類送検したのは、発覚当初から捜査線上に浮かんでいた脇本譲警部補=当時(36)。9千万円もの現金が署内で保管されるきっかけとなった詐欺事件の捜査に携わる一方、競馬にはまり、多額の借金を抱えていた。捜査が長期間に及び、「死人に口なしの幕引き」との声も上がる。県警は信頼を回復できるのか―。

【グラフィック】広島中央署現金盗難事件の経過

 盗まれた8572万円は段ボールに小分けして入れられ、同署会計課の金庫内で保管されていた。当初から県警は内部犯行の線で捜査し、「逮捕は時間の問題」(捜査関係者)とみられていた。だが、うそ発見器(ポリグラフ)も用いた任意の取り調べで、関係者は次々と関与を否定した。

 「(脇本警部補に)金を貸している」。県警が規定の身上調査では把握していなかった借金の存在から脇本警部補が浮上したのは、盗難発覚から間もなくだった。同僚からもたらされた情報がきっかけになった。

 ▽関与否定続ける

 脇本警部補は2014年9月から同署生活安全課に勤務。17年2月に広域詐欺事件の捜査に携わり、9千万円の現金が関係先で押収され、署内で保管されていたことを知り得る立場にいた。県警が金庫内に現金があるのを最後に確認した17年3月15日にその場にいたともされる人物だった。

 同年5月15日~9月11日に9度にわたって任意で聴取され、関与を否定し続けていたとされる。「若くして警部補になり、優秀」と評価される一方、競馬にのめり込み、複数の同僚から借金を繰り返していたという。同僚からは時に400万円を借り入れ、消費者金融にも手を出していた。規定の身上調査では把握しきれなかった一面が徐々に明らかになり、県警は容疑者として見立てを強めた。

 県警内に激震が走ったのは発覚から約4カ月後の同年9月16日。脇本警部補が広島市内の自宅で亡くなっているのが見つかった。体内からは10種類近くの向精神薬と睡眠薬が検出された。検視の結果、他者の介在はなく、事件性はないと判断され、司法解剖はされなかった。死因は「不詳」とされた。死亡した当日も競馬に興じ、遺体が発見された部屋には馬券もあったという。

 ▽原資不明のお金

 書類送検まで捜査が長期化したのは、犯行日の特定のハードルだった。当初は、県警が最後に現金を確認した17年3月15日から、発覚した同年5月8日までと絞れていなかった。だが、日直主任として署内を巡回できた同年3月26日の日曜日は何度も離席し庁舎外にも出ていたことや、この日を境に同僚4人に約1千万円を返済するなど、原資不明のお金が動いていることが判明。今年に入り、警察庁からもゴーサインを得たという。

 「県民によどみなく説明できないと解決とはならない」。書類送検が近づいていた2月上旬、ある捜査関係者は口にした。脇本警部補が死亡し、解明しきれなかった点は数多い。「内部犯行の容疑者死亡で幕引きしたのか」との県民の批判も招きかねない。書類送検後に県警本部で14日に開いた記者会見。「捜査はし尽くしたのか」との報道陣の問いに、川崎契刑事部長は「そう思っている」と言い切った。

中国新聞社

最終更新:2/15(土) 0:13
中国新聞デジタル

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