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「どうして」保育施設の入園かなわず 医ケア児に厚い壁

2/15(土) 9:50配信

西日本新聞

 「おはよう」。佐賀市大和町の佐藤優磨ちゃん(2)は母純美(すみ)さん(38)に手を引かれ、看護師らに笑顔であいさつした。医療的ケア(医ケア)が必要な未就学児らが通う佐賀県小城市三日月町の児童発達支援事業所「AQUA(アクア)」で元気に駆け回り、絵描きも楽しんでいる。見た目はどこにでもいる男の子だ。

【写真】医療的ケアが必要な子どもを一時的に預かる事業を拡大した「ワン・ハピネス」

 優磨ちゃんは尿がうまく濃縮されず、多量の尿が出る指定難病の「先天性腎性尿崩症」を患う。生後7カ月で退院したが、ミルクを飲んでも吐くため、在宅では鼻に入れた管から栄養を流し込む「経管栄養」などの医ケアが必要になった。

 純美さんは2018年、一般の保育施設に入れようと市に相談した。だが職員から「医ケア児を受け入れてくれる所はないでしょう」と言われ、ショックを受けた。「鼻に管はあるけど、健常児と同じように体を動かせる。どうして入園できないのか」

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 保育施設は受け入れ態勢の不備や万が一の事故を恐れて、医ケア児の受け入れに二の足を踏む。佐賀市のこども園は「急な体調の変化やアクシデントへの対応方法を病院などの機関とどう構築するかが課題。入園の需要も分からない」と語る。県内の保育施設で医ケア児の受け入れは3施設の計3人にとどまっている。

 純美さんは優磨ちゃんの発達の遅れを懸念。自宅に来ていた言語聴覚士からアクアの存在を教わり、19年6月に利用を始めた。現在は20人が体操や公園遊び、近くの園児との交流などをしている。

 それからは食事量や会話が増え、表情も豊かになった。「初めてお弁当を残さなかった時は感動して夫婦で泣いた」。その年の夏、純美さんは鼻の管を外すことを決断。経管栄養を終えることができた。今も、一般の保育施設に通わせることを検討している。

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 自身の経験から純美さんは「アクアのような事業所が増えれば、助かる保護者は多いはず」と話す。だがこうした施設では小児科経験のある看護師の確保が欠かせない。また、重症児の急なキャンセルによる採算性などが壁となって、医ケアに対応する事業所は限られている。

 アクアを運営する一般社団法人「あまね」の代表理事、大野真如(しんにょ)さん(38)は「保育施設に通えない子どもと保護者が、自宅と病院の往復だけで閉じこもってほしくない。医ケア児を受け入れる施設が増え、親子が地域社会とつながる環境を整えるべきだ」と訴えた。(梅本邦明)

【児童発達支援事業】

 心身に障害や発達の遅れがある未就学児を預かり、障害の状態や発達の特性などに応じた生活訓練などを行う。佐賀県内には児童発達支援事業所が64施設あり、うち8施設が重症心身障害児を受け入れている。

最終更新:2/15(土) 9:50
西日本新聞

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