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コクヨの「測量野帳」が60年以上も支持される理由

2/15(土) 17:30配信

GetNavi web

デジタル全盛の現代に、シンプルな手帳が売れ続けています。日本最大規模の文具メーカー、コクヨの「測量野帳」。2019年に60周年を迎えた、年間100万冊以上を出荷する大ロングセラー商品です。凛とした風格を感じるいぶし銀の存在ながら、愛用者には女性も多く、「ヤチョラー」「ヤチョリスト」「ヤチョリアン」といわれる熱狂的なファンが存在するほど。“野帳”の歴史と、その人気の背景を、商品開発を担当する竹本裕実子さんに伺いました。

「測量野帳」ってなんだ?

「測量野帳」とは文字通り、測量士のために生まれたノートです。作業着の胸ポケットにすっきり収まる、スリムでコンパクトなスタイルと、現場で立ったまま筆記できる、硬い表紙が特徴になっています。現在ではこの携行しやすいサイズ感やアウトドアでの筆記に使える堅牢さが注目され、測量・建設の現場にとどまらず、日常の持ち歩きや、フィールドワーク、旅の記録、日記などさまざまな用途で使われています。筆記のデジタル化をもろともせず、発売から60年を経てもなお新しい道を歩む、数ある文房具でも特別稀有な存在なのです。

“測量法”の制定が「測量野帳」を誕生させた

開発のきっかけは、1949年に測量法が制定されたこと。10年後の1959年、「測量野帳」は誕生しました。社内では親しみを込めて“野帳”(ヤチョー)とも呼ばれています。

「測量士や建築関連の方が、測量したデータを測量法に沿って書き込むことのできる罫線が入っていることも、大きな特徴です。野帳が発売される以前、測量士の方は、ふつうのノートに罫線を引き、独自にノートを使っていたのではないでしょうか。屋外で片手に持って筆記しやすいよう、耐久性を持たせた硬い表紙を使い、作業着のポケットに入るようにサイズも工夫しました。この基本的な仕様は現在までずっと変わっていません」(竹本さん)

当時の開発経緯も気になるところですが、すでに60年以上も時が経過し、詳細な記録は残されていません。

「あくまで想像ですが、ユーザーの声を大事にするという姿勢は当時も今も変わっていませんから、実際に建設の現場からの『こういうノートがあったらいい』という声をもとに、コクヨからもアプローチをして、一緒に製品づくりを進めていったのではないかと思います」(竹本さん)

ここで、豆知識を一つ。測量野帳は誰もが“ノート”と認識していますが、製品の分類上はノートではなく、“製図用品”の品番がつけられています。

「コクヨでは、ノートは『ノ』で始まる品番、製図用品なら『セ』で始まる品番がつけられています。野帳の姿かたちはノートですが、『セ-Y1』などのように、いずれも製図用品の品番がついています」(竹本さん)

製図用品に区分された理由は不明ですが、文房具店では製図用品のコーナーに置かれていたそうです。

「野帳の発売後、製図用品のプロフェッショナル向けブランド『コクヨプロ』がスタートし、野帳も一時期はこのシリーズとして展開されていました。当初はあくまで専門的な商品としてとらえ、一般的なユーザーへの広がりは考えていなかったようです」(竹本さん)

実際に顧客も法人がメインで、主に建設会社に数十冊、数百冊単位で一括納入されていました。

発売時のラインナップは、「LEVEL BOOK(レベルブック) セ-Y1」「TRANSIT BOOK (トランシットブック)セ-Y2」「SKETCH BOOK(スケッチブック)」 セ-Y3」。そして「OFFSET BOOK(オフセットブック)セ-Y4」の4タイプ。表紙にある「LEVEL」(水準測量)「TRANSIT」(三角測量)というのは、測量方法の名前で、中紙は、それぞれの測量方法に適した罫線が引かれています。SKETCH BOOKは3mmの方眼罫を施したさまざまな目的で使える自由帳です。OFFSET BOOKは測量野帳のタテ開きタイプで、2002年に廃番となりましたが、60周年記念限定モデルとして、仕様を変更して復活しファンを喜ばせました。

「発売する年代によってコクヨのロゴが新しくなったり、表紙に使用するクロスのシボが、少しザラつきのある布っぽいものになったり、擦れに強いタイプになったりなど、細部は変化しています。中紙も10数年前からより筆記性のよいものに変更されていますが、こうした品質の仕様変更以外、60年間ほぼ何も変えていません。コクヨの中でも珍しい商品だと思います」(竹本さん)

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最終更新:2/15(土) 17:30
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