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安楽死選んだパラ金メダリスト、見送った両親は今 相模原殺傷の植松聖被告が使う「安楽死」は誤り

2/17(月) 10:32配信

47NEWS

 「今日、マリーケのアパートの鍵を返すから、最後にお別れに来てもいいよ」。1月31日、マリーケの父ヨスから筆者のもとへ突然連絡が入った。

 車いすの元陸上選手マリーケ・フェルフールトさん(享年40歳)。2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得、16年のリオでも銀メダルを手にし、ベルギーでは誰でもが知る女性アスリートだ。わたしは17年、彼女の日本旅行を手伝ったことをきっかけに知り合い、以来大切な友人となった。

 彼女が宣言通りの安楽死を遂げてから3カ月。ご両親は、マリーケが5年余り自立して住んだアパートを、涙とほこりにまみれながらようやく片付け終えた。車いす生活者用に市が提供するアパートに、マリーケが暮らした形跡はもう何もない。

 ベルギーでは02年に合法化され、毎年2千人以上が安楽死を選んでいる。19年10月22日、マリーケは「安楽死にふたをせず、きちんと議論してほしい」と訴え続けて「その時」を自分の意志で決めた。進行性の脊髄疾患による激痛で、晩年苦しみぬいた娘を見送ったばかりの両親は今、どんな風に思っているのだろう。(ブリュッセル在住ジャーナリスト、共同通信特約=佐々木田鶴)

 ▽マリーケが命がけで伝えた安楽死の意味

 日本では今、16年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件の公判がいよいよ始まり、植松聖被告が使う「安楽死」という言葉がメディアに繰り返し登場する。この言葉は、本来、慎重に議論されるべきものだ。それが「本人や家族を楽にしてあげるために殺すべきだ」というようなニュアンスに解釈されそうで、不安がよぎる。

 法的な、そして倫理的な是非は別として、安楽死は本来、本人が自由意志で望んだ時に選択できる方法だ。第三者が、すべきだとかすべきでないとか、言うようなものではない。相模原殺傷事件の植松被告の使い方は、完全な誤りだ。

 津久井やまゆり園での悲惨な事件が起こった同じ年、リオ・パラリンピックで、意図に反して安楽死の準備を進めていることが知れ渡ってしまったマリーケは、あわてて「準備はしているが、すぐに実行するのではない」と記者発表せざるをえなくなった。こうしてマリーケは安楽死のアイコンのように語られることが多くなってしまった。

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最終更新:2/17(月) 16:33
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