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ドラマ「わたし、定時で帰ります。」 原作者の朱野さんが語る新時代のお仕事スタイル

2/20(木) 15:15配信

中国新聞デジタル

自分の中に「プロデューサー」を

 ■ドラマ「わたし、定時で帰ります。」 原作者の朱野帰子さん(40)

 ―令和の時代の働き方に必要なことは何でしょう。

 「量より質」の時代が来ています。とはいえ「質より量」の人はまだ大勢いるので、負けないように私は自分の中に「プロデューサー」を育てています。読者が求めているものをしっかり考えて、強みが生かせない仕事を断るようにしているんです。その結果、最短距離で完成度の高い作品をつくることができるようになりました。

 働き方改革も進めています。仕事は平日の午前9時~午後6時でこなし、週末は家族との時間です。しっかり休んだ分、モチベーションも上がります。友人と会う機会も増えて、作品のヒントを得ることもある。クリエーティブな仕事には心の余白が大切です。

 長時間働くことと「いい仕事」の間に因果律はないと思います。事実、出産直後で時間がない中、工夫を凝らして書いた「わたし、定時で帰ります。」は私の作家人生で最大のヒット作となりました。

 ―専業作家になってしばらくは長時間労働だったそうですね。

 仕事を無尽蔵に引き受けて過労状態でした。「売れるものを書かないと作家として生き残れない」と自分を追い込み、朝昼晩、執筆に没頭して。体調は崩すし、イライラして娘にもつらく当たってしまって。がむしゃらに働くばかりでは、家族を幸せにできないと気付きました。

 ―どうして「過労体質」だったんでしょう。

 私は就職氷河期世代で、仕事は苦しいものだとすり込まれています。就活では選考に落ちるたび、「不要な人間」と烙印(らくいん)を押された気がしました。何とか小さなマーケティング会社に入った後も、「死ぬ気で頑張らないと会社にいる資格はない」という恐怖心が付きまとって。

 1社目を辞める前はITバブルで、仕事が激増していました。早朝4時に東京で会議が終わった後、朝10時に大阪出張する日もあって。「採用してもらった会社に奉仕しなければ」と思い込んでいたんです。長時間働く自分に酔っている部分もあったと思います。会社がブラックじゃなくても、社員がセルフブラック化してしまうこともあります。「この働き方、本当に正しいの?」と冷静に考える視点が必要です。

 ―「わたし、定時で―」にも、仕事を休まないことが信条の女性が登場します。後輩にも同じ働き方を求めて煙たがられていました。

 彼女も氷河期世代。「仕事は無理をしてでもやるもの」という考えです。でも今の若者は私たちより合理的です。ブラックな企業にも就職しません。就活した年の経済状況で、仕事に対する考え方が全然違うんですよ。私たちは昭和流の働き方を知る最後の世代で、犠牲者でもあります。だからこそ、「負の部分」を次の世代に引き継いではいけないと考えています。

 氷河期世代は会社を信じていない人が多い。かつて勝ち組と呼ばれていた大企業も安泰ではありません。社会の勢力図がどうなるか分からない時代は、会社の外にも人生の軸を持って生きた方が心強いです。どう働けばいいか、どう生きればいいか。ゆっくり考える時間のあるお休みに、自分のプロデューサーを育ててみてはどうでしょう。

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最終更新:2/20(木) 15:15
中国新聞デジタル

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