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再浮上したGSOMIA破棄論。総選挙に向けた文政権の突然の反日カードに批判

2/26(水) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

消えた金氏と習氏の訪韓カード

政界のある消息筋は、こう話す。

「昨年までは青瓦台と(与党)民主党は、野党の分裂、大統領の高い支持率などで総選挙での圧勝を確信していた。当時は、選挙直前に北朝鮮の金正恩委員長の初のソウル訪問実現という最高のビッグカードを準備していた。

しかし、今の南北関係では金委員長の訪韓は期待できない。THAAD(終末高高度防衛ミサイル)配置を巡って、中国政府が禁止している韓国への団体旅行も、習近平主席が3月に訪韓して解除するという構想を用意していたが、新型コロナで習主席の訪韓は延期される見通しだ」

悪化する状況を逆転するカードは全て消えた。このままでは総選挙で惨敗し、任期後半には弾劾など、野党から猛攻を受けざるを得ない。

焦りと不安感から文政権が最後のビッグカードであるGSOMIA破棄を頼った可能性は否定できない。支持層結集に最高のカードであるGSOMIA破棄を通じて、総選挙で有権者を親日vs反日に二分して勝利するという狙いだ。

「反日感情は選挙のビッグカード」と分析

文政権は2019年夏、反日感情カードで多くの政治的利益を享受した。

元徴用工判決と関連し、日本の輸出規制報復がなされ、韓国では反日感情が沸騰した。当時、文大統領の週間支持率は一気に4.0ポイント、民主党は3.6ポイントも上昇した。一方、野党の支持率は3.2ポイント落ちた。

文大統領の最側近が率いている、民主党のシンクタンク「民主研究院」は、2019年7月30日、「韓日葛藤局面は次期総選挙で与党に肯定的な影響を与える」と予想した報告書を所属議員全員に回覧させたことがある。ある政治コンサルティング専門家は、「反日感情は選挙の過程で、民主党のビッグカードであることが確認された」と分析した。

しかし、このような文政権の思惑には多くの障害がある。

ある野党議員は、「新型コロナウイルスの感染が全国に打撃を与えている中で、大統領が再びGSOMIA破棄カードを取り出したら、すごい逆風を浴びる可能性がある。不況の中で国民の生活が厳しいのに、『また反日カードか』という反発が起きる」と指摘した。

一番の障害はアメリカだ。アメリカは2019年11月、韓国のGSOMIA破棄の動きを強力に阻止した経緯がある。最近は在韓米軍防衛費分担金の問題、THAAD配置問題などを巡り、米韓間は緊張関係にある。ここでまたGSOMIA破棄問題が再浮上したら、米韓関係はそれこそ「おしまい」という懸念の声が大きい。

青瓦台の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室次長は、2月6日から3日間、極秘裏に米ワシントンを訪問し、カウンターパートであるホワイトハウスのマット・ポティンガ国家安保副補佐官と会って、米韓の懸案問題とGSOMIA問題を協議した。

米韓関係に詳しい韓国の外交消息筋は、こう断言する。

「ポティンガ副補佐官は改めて『GSOMIA維持がアメリカの確固たる立場』という点を明らかにした。アメリカの立場を無視し、GSOMIAを破棄した場合、韓米関係は再生不能状態に陥るだろう」

多くのリスクが予想される中でもGSOMIAカードをちらつかせている文政権は、果たしてどんな選択をするだろうか。そしてそれで総選挙で本当に勝てるのだろうか。

明らかなのは、今のアメリカは韓国に対してこれまでのように好意的ではないということだ。そして何よりも、韓国の政治状況と世論が2019年とは大きく変わっている。

匿名を条件に取材に応じてくれた野党議員は、次のように意味深い言葉を残した。

「文政権の相次ぐ失政で世論は極度に悪化、経済も最悪だ。特に最近は、新型コロナウイルスで世論はまさに爆発寸前だ。こういう状況の中でも、文政権が国益を考えずに、再びGSOMIAカードを取り出したら、これは政権交代を早めるオウンゴールになるだろう」

李敦煕:1988年、ソウル五輪大会組織委員会の記者に。その後、読売新聞ソウル支局、朝日新聞ソウル支局の記者を経て、現在、時事インサイド編集局長。

李敦熙

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最終更新:2/26(水) 19:58
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