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検証 広島中央署8572万円盗難 発覚の夜 初動に遅れ 県警本部に連絡せず

3/6(金) 10:30配信

中国新聞デジタル

2017年に広島中央署から8572万円が盗まれた事件で、広島県警が2月14日、盗難発覚後に死亡した脇本譲警部補=当時(36)=を容疑者死亡のまま書類送検し、捜査を終結させた。長期化した捜査の裏で何があったのか。これまでの取材メモから振り返る。

【表】広島中央署現金8572万円盗難事件の経過

 「総力を挙げて捜査した結果、(死亡した)男性警部補による犯行と特定し、広島地検に送致した。警察職員の犯行だったことを深くおわびする」。広島県警が14日に県警本部で開いた記者会見。頭を下げる鈴木信弘本部長に一斉にカメラのフラッシュが注がれた。県警最大の懸案だった事件の捜査に、ひと区切りがついた瞬間だった。

 事件の発覚は2年9カ月前にさかのぼる。17年5月9日夕、新聞、テレビなど各報道機関の記者が詰める県庁東館9階の県警記者クラブに衝撃が走った。事件の捜査で押収し、広島中央署会計課の金庫で保管していた証拠品の現金8572万円が盗まれているのが前日の8日午後8時ごろに発覚した、と県警が突然発表したからだ。

 ▽署員だけで捜査

 警備が厳重なはずの警察署から大金が盗まれるという事態に耳を疑う。「内部犯行ではないのか」。記者クラブ内は騒然とした。報道各社は県警に対し、カメラが入る記者会見で説明するよう要請した。県警はしかし、カメラが入らない「レクチャー」という形を譲らず、窃盗事件を扱う捜査3課の幹部1人が記者クラブで概要を説明した。

 「どこから押収した金だったのか」「最後に現金があるのを確認したのはいつか」。記者から矢継ぎ早に質問が出るが、県警は「捜査への支障」などを理由に「言えない」と繰り返すばかりで、具体的な内容は説明しなかった。

 翌日以降、捜査関係者への取材を続けていくと、ある事実が浮かび上がってきた。現金の盗難が発覚した8日夜、同署はほぼ署員だけで捜査し、県警本部への報告を怠っていた。捜査を指揮することになる県警本部刑事部の幹部が事態を把握したのは翌9日の出勤後だったという。身内の関与が強く疑われる事件でありながら、同署はほぼ「身内」だけの状態で初動捜査をしていた。

 一夜明けて報告を受けた刑事部や総務部の幹部たちは9日午前、急きょ集まり、捜査方針などを話し合った。県警の組織を挙げて本格的な捜査が始まったのはこのときからだった。

 ▽危機意識が欠如

 署はなぜ、すぐに県警本部に報告しなかったのか。井本雅之署長は中国新聞の取材に対し、「現金がない」との報告を8日夜に受け、9日朝まで署内の捜査に立ち会い、現場保全に努めたと説明する一方、本部への連絡の有無などについては口をつぐむ。

 署を舞台にした予期せぬ事件は、初動の遅れや危機管理意識の欠如を露呈させた。一方で、「内部の犯行以外に考えられない」との見方が広がっていた。現金の保管場所や金庫の鍵の在りかを知る人物は限られるからだった。早期解決が期待できるとの声も聞こえてきた。

中国新聞社

最終更新:3/6(金) 10:30
中国新聞デジタル

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