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世界を襲う新型コロナ危機 始まった日米中「治療薬戦争」

3/10(火) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 新型コロナウイルスに対する最大の不安は、治療薬もワクチンもないことである。薬の承認に至る臨床試験には、長い年月がかかり、今回のコロナウイルスは「新型」なので、とても間に合わない。だが、「代用」はある。インフルエンザやエボラ出血熱などの他の抗ウイルス薬が有効な場合だ。

 そこで政府は3種類の治療薬を患者に試す方針。こうした臨床試験は、“本場”の中国はもちろん、巨大製薬会社の多い米国も取り組んでおり、日中米コロナ治療薬戦争が本格的に始まった。

 日本政府が取り組むのは、富士フイルム富山化学が抗インフルエンザ薬として承認を受けた「アビガン」と、米国立衛生研究所(NIH)が行う臨床試験に参加する抗エボラ出血熱の「レムデシビル」、そして抗HIV薬として高い評価を受けている「カレトラ」だ。ただ、このうちカレトラについては中国上海公衆衛生臨床センターがまとめた臨床データでは、新型コロナ感染者への投与に効果はあまり確認できなかった。現段階では、アビガンかレムデシビルといった選択である。

 アビガンについては、富士フイルムが傘下に収めた富山化学工業が、1998年ごろから失敗を重ねつつ、アビガンにつながる成分を発見。2005年の鳥インフルエンザで注目され、臨床試験をさらに重ね、14年に「条件付き」で承認された。動物実験の段階で、胎児に奇形が生じる可能性がある催奇形性が認められたので条件付き。条件は「新型」や「他のインフルエンザ薬が効果なしの場合」なので、今がまさにその時。17年3月、政府備蓄が決まって、既に200万人分の在庫がある。加藤勝信厚労相は、2月22日の段階で投与する方針を明らかにし、会社には増産を求め、臨床試験が始まった。

 NIHが主導するレムデシビルの臨床試験を補完しているのが開発元の米ギリアド・サイエンシズ。2月26日、「アジアを中心に世界中から約1000の新型コロナ感染例を組み入れる」と発表した。抗エボラ出血熱薬としては未承認だが、中国では増殖を抑える効果を確認。世界保健機関(WHO)も「現段階で本当に治療効果があるとみられる薬」と期待する。

 中国は、こうした抗ウイルス薬に国を挙げて貪欲に取り組んでいる。浙江省の浙江海正薬業は2月15日、中国規制当局の承認を得て「ファビピラビル」(アビガンの一般名)の大量生産に入った。また、中国科学院武漢ウイルス研究所はレムデシビルの中国での特許を申請。さらに中日友好医院が主導するレムデシビルの医師主導臨床試験を、ギリアド社から薬の提供を受けて行っている。

 世界を襲った新型コロナ危機に、規制や特許などのカベを取っ払った治療薬開発競争が日中米で進められている。

最終更新:3/10(火) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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