肥満は糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるほか、いくつかのがんとの関係も指摘されています。健康診断などで太りすぎを指摘され「簡単に痩せられる薬があれば……」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。実は、安全に誰でもが使える“夢の痩せ薬”になるかもしれない物質の研究が、福島県立医大で進められています。この研究には、発生から9年を経てもなお癒えない傷が残る震災からの「復興」の願いも込められているそうです。研究の中心となっている病態制御薬理医学講座の下村健寿主任教授と、肥満体内炎症解析研究講座の前島裕子特任教授にお話を聞きました。【News & Journal 編集部】
そのカギを握っているのが「オキシトシン」というホルモンです。前島さんはマウスを使った実験で、肥満マウスにオキシトシンを投与したところ、摂食量、体重増加量、内臓脂肪量、脂肪細胞のサイズ――のいずれもが減少することを確認しました。一定量のオキシトシンを連続投与すると、開始前と比べて体重が約13%減少、肝臓の脂肪蓄積も減っていました。一方、有害な副作用と思われる現象は観察されなかったそうです。
オキシトシンは肥満度が高いほどよく効き、あまり太っていなければさほど効果がないことが示されています。その理由について前島さんは「オキシトシンを投与すると摂食抑制、つまり食べる量が減ります。これをもう少し高いところから見ると、やりすぎたものを元に戻すといった、生体に備わったホメオスタシス(恒常性維持機能=内部環境を一定に保とうとする傾向)のような機能だと思います」と説明します。
オキシトシンとはそもそもどんな物質でしょうか。それは、わずか9個のアミノ酸からできた「ペプチドホルモン」です。脳内の神経細胞で作られ、血流に乗って全身で作用する一方、脳内の情報伝達を媒介する神経伝達物質としても働いているらしいことが、最近の研究で分かっています。
類似したペプチド(アミノ酸が特定の仕組みで結合した短い鎖状の分子)は進化の過程で失われることなく、昆虫からヒトまで持っていることから、生命にとっては非常に重要なホルモンと考えられています。
1906年に発見され、分娩(ぶんべん)時の子宮収縮や、乳汁分泌を促す作用が知られてきました。また、その作用から分娩誘発剤として長年使用されてきましたが、どちらかというと“地味な”存在でした。
そんなオキシトシンに脚光が当たり始めたのは、この20年ほどのことです。オキシトシンは母親の子どもに対する愛情を深める、他人に対する信頼感を生む、などの作用があるとする論文が次々と発表され、最近では別名「愛情ホルモン」「絆のホルモン」などとも呼ばれるようになっています。
前島さんらは、こうしたオキシトシンの神経系に対する作用のうち、抗肥満作用に注目しています。
最終更新:3/11(水) 17:35
Medical Note






























読み込み中…