ここから本文です

マスクに感染防止効果の証拠はないが

3/13(金) 17:14配信

ニュースソクラ

【医学者の眼】不安避けるため使い捨てマスクの再使用も

 新型コロナウイルス問題は、強力な対策で中国の感染者増加が抑え込まれるようになる一方で、その他の国の感染者は既に10万人を軽く越え、増加速度は中国の初期の増加速度を上回るほどになっており、今後検査体制がアジア、アフリカなど各国で整うにしたがって、中国の数を超えることは間違いないと思われます。

 WHOがパンデミック宣言し、グローバルな問題となっていることは間違いありません。そして、保健医療だけでなく、かつてないほどの社会経済上の問題へと拡大しています。

 感染対策の中で、我が国ではマスクの供給不足が1つの大きな問題になっています。

 すでに店頭からはほぼ姿を消し、一般消費者が入手するのは困難になっています。

 それだけではなく、医療機関においても在庫が枯渇し、新たな納品が当面見込まれない事態となって大変に困っています。

 こうしたことから、政府は国民生活緊急安定措置法を初めて発動し、当面北海道へのマスクの供給を確保しました。

 現状の我が国のマスク不足問題は、中国などからの供給が減少したこともありますが、一般消費者が予防のために多量に購入したこともその原因です。買占めや高額転売、詐欺や盗難などの問題も生じています。

 マスコミなどでも、専門家が予防のためのマスクを推奨していますが、一方で、はたしてどの程度の効果があるかについては、はっきりしたエビデンスはないとされています。そうしたことから、WHO(世界保健機関)や米国CDC(疾病管理予防センター)は、手術などの医療現場や症状のある人を除いて、一般的な予防方法としてはマスクを推奨していません。

 もともと欧米では、よほど咳やくしゃみがひどい場合や免疫に異常がある場合などの他はマスクをすることが社会的な習慣ではないので、マスク不足はないのではないかと思っていたところ、ドイツ、フランス、米国などでも不足が生じ、我が国と同様な問題が起きています。そうしたことから、政府が介入して、こちらは主として医療関係者への供給の安定を図る事態となっています。

 実は私は風邪をひきやすいことから、既に20年程前から冬場の外出などでは風邪やインフルエンザの予防を目的に、マスクをするようにしてきました。当時はあまり一般的ではなかったので、周囲から非科学的だなどと疑問に思われた節もありましたが、使用した理由は、マスクでウイルスやウイルスのついた埃や水滴などを遮断するというよりも、マスクをすることによって鼻や喉など上気道の(軽いマフラー位の)保温と保湿が期待できるからです。

 保温によって血流が良くなり、保湿で上気道粘膜の乾燥を防ぎ粘膜免疫が良い状態に保たれ、ウイルスなどの侵入をより防いでくれるのではないかという期待です。(残念ながら、こちらもエビデンスはありませんが)

 いずれにしろ、N95と呼ばれるウイルス程度の粒子も通さない高機能マスクをぴったり装着する以外は、病原体をマスクで防ぐことは困難です。また、専門家はサージカルマスク(使い捨てマスク)などの再使用にとても慎重ですが、供給不足がない場合は別として、再使用に大きな問題があるとは思えません。

 マスクに付着したウイルスが気になるようなら、ガーゼやティッシュをはさみ取換えるとか洗濯やアルコール消毒などを行えば十分目的は果たせると思われます。むしろ、こちらもエビデンスなしに再使用を禁止して、不安を増強する方がよほど罪作りではないでしょうか。布やスポンジなどの再使用するマスクも同様に良いと思います。

 今後、日本でも一層まん延する可能性があり、世界的には患者、感染者の急増は避けられないと思われます。マスクの問題は1つの例にすぎませんが、物不足によるパニックなどの精神的な悪影響を避け、適切な医療を確保する事も含め、より明確に整理しておく必要があると思われます。

 我が国では、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正して、新型コロナウイルス感染症に対して緊急事態宣言などのより強力な施策が国の責任において行える準備が進められています。現在の日本で行われている様々な措置は、国の要請に基づいて自治体や事業者などが判断して行っているものであると言えます。

 今回各国のとった様々な対策は、感染の未然防止・抑制の観点からは大切なものと思われますが、その社会経済的影響(こちらも結果的に人命にかかわります)を考えると、そのバランスや手法については一層慎重に考える必要があるのではないかとも思われます。

 新型コロナウイルスの問題は、治療法やワクチン等の予防法の開発が今もっとも急がれます。また、日本を含め世界的には、なおまだ検査も十分に行われていないことから、その全貌と今後の行方が十分に見えていませんが、今後起こり得る様々な事態に対しては、それぞれが冷静に対処したいものです。

■中島 正治(医師、元厚労省局長)
1951年生。76年東大医学部卒。外科診療、医用工学研究を経て、86年厚生省入省。医政局医事課長、大臣官房審議官(医政局、保険局)、健康局長で06年退官。同年、社会保険診療報酬支払基金理事、12年3月まで同特別医療顧問。診療、研究ばかりか行政の経験がある医師はめずらしい。

最終更新:3/13(金) 17:14
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事