ここから本文です

【Wリーグ・トヨタ自動車アンテロープス ヘッドコーチ ルーカス・モンデーロ】最高の“チーム”を築くために(3)オフェンスはディフェンスから始まる

3/16(月) 11:50配信

バスケットボールスピリッツ

【トヨタ自動車アンテロープス ヘッドコーチ ルーカス・モンデーロ】最高の“チーム”を築くために(2)日本は危ないチームだと思っている より続く

オフェンスはディフェンスから始まる

トヨタ自動車アンテロープスのヘッドコーチ、ルーカス・モンデーロのバスケットは常にディフェンスから始まる。これもまた「ひとつのチームに築きあげて戦う」のと同じ、彼が持つバスケット哲学である。

「簡潔に言えば、オフェンスはディフェンスから始まるよ、ということです。ディフェンスができなければチームではありません。しかも相手のミスを待つのがディフェンスではありません。ミスをさせるのがディフェンスです。勇気をもってリスクのあるプレーを取っていくわけです。ディフェンスからオフェンスに対してアタックしていくと言い換えてもいい。もちろん相手をゼロ点に抑えることは不可能だし、シュートを決められる可能性はあります。ただ常にディフェンスから始まるという考え方を選手たちがしっかりとインプットしてコートに入れば、高いリズムでプレーに入れます。スペーシングもうまく取れますし、スピードを出した、私たちの好きなプレーに入りやすいんです」

今のトヨタ自動車の課題はそこにあるとモンデーロは言う。チームディフェンスの波をいかに小さくし、安定させていくか。モンデーロの求めるアクティブで、アグレッシブなディフェンスには集中力とコミュニケーションが欠かせない。

「あとは、ディフェンスリバウンドをしっかり取ってランすることでリングまで速く持っていけるんですけど、集中力が切れて、コミュニケーションも取れていないとリバウンドさえ獲れなくて、しっかり走ることもできません。集中力とコミュニケーション、リバウンドが今のチームの課題でしょう」

どこか「世界のなかの日本」にも似たチームをいかに築き上げるのか。Wリーグも佳境に入っている。モンデーロの手腕をこれまで以上に注目してみたい。

情熱が冷めるまで自らを磨き続けていく

世界一にこそなってはいないが、オリンピックとワールドカップのファイナルの舞台に立ち、チームとしてもスペインと中国、ロシアでは優勝を経験しているモンデーロは、今後どこへ向かおうとしているのか。目標を持つことがその人の人生にとって大きな価値あるものだとしたら、今の彼の目標は何なのだろう?

スペイン代表を率いる世界の名将へのインタビューが決まったとき、聞いてみたかったことの1つだった。

モンデーロは言う。

「最終目標やゴールはありません。私はすでにオリンピックにも出場していますし、ワールドカップにも出ています。そういった目標はないのですが、あえて言えば、今いるチームの成長につながるような練習をして、自分自身もコーチとしてもう少し磨いて、満足できるような立場になることでしょう。もしバスケットの指導ができなくなったときは家に帰りますよ」

通訳がそれを日本語で伝えたのを確認すると、彼はこう続けた。

「今、私は選手が失敗したときに怒ることがあります。そうしているときはまだいいんです。ミスをしたときに『どうでもいい』と思ったときに私は引退をしなければいけないと思っています」

ベンチ前で大きな体を揺すりながら叱咤するのはモンデーロとしての情熱の発露なのだ。そうした自分の姿さえ、彼は冷静に俯瞰している。

ではなぜ日本なのか。いや、スペイン代表のヘッドコーチを務め、国内でも結果を出した彼ならば、わざわざ国外(スペイン以外)に出なくても素晴らしいコーチ人生を全うできたのではないか。

その質問に対しても彼はスムーズに答えていく。

「私はプロバスケットのヘッドコーチをさせてもらっていますが、自分の好きなことを仕事にできることはとてもありがたいことです。実は毎年中国からオファーが来ています(笑)。その中国で4年、ロシアで3年コーチをし、日本(トヨタ自動車)でも同様な期間を指導していきたいと考えています。チームをどれだけ成長させられるか、どんなタイトルを獲れるのか、どんなスタイルを導入させられるか、どのようなアイデアを持たせられるか……私はそういった課題によって動く傾向が多いんです。自分自身に向けた課題ですね。またコーチの育成も私の課題のひとつです。かつて私のもとで3年間アシスタントコーチをしていたコーチが今ACB(スペイン男子プロバスケットボールリーグ)でヘッドコーチをしています。同じくアシスタントコーチをしていたビクトル・ラペーニャは今、トルコのフェネルバフチェ(女子)のヘッドコーチをしていますし、スペイン代表でも、中国でもずっとアシスタントコーチをしてくれていたセサル・ルペレスは今、中国の女子プロチームのヘッドコーチをしています。数年間、私のもとでアシスタントコーチとしてのキャリアを積み、私が育成できることによって、どこかのチームでヘッドコーチを務めていることは私自身にとっても誇りでもあるんです」

選手やチームを導くのと同様にコーチとしての自分を磨き、コーチとしての他者も磨く。結果だけではない挑戦こそが彼を世界各国のリーグへと誘っているのだろう。

最高の“チーム”を築くために ── ルーカス・モンデーロの情熱が薄れていくことは、まだまだなさそうだ。



この原稿を書いている、まさに2月26日。Wリーグは新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐべく、レギュラーシーズン残り3週(各チーム6試合)の開催中止を決定した。モンデーロ率いるトヨタ自動車はレギュラーシーズン2位でプレーオフに挑む。


(了)

三上太

最終更新:3/16(月) 11:50
バスケットボールスピリッツ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ