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PCR検査をすると病院がパンク? 本末転倒の議論

3/18(水) 15:30配信

ニュースソクラ

【舛添要一が語る世界と日本】軽症者は自宅療養にすればよい

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、先週、WHOは遂にパンデミックを宣言した。

 中国の感染拡大スピードは減速し、どうやらピークアウトしたようである。ところが、イタリアをはじめとするヨーロッパ、そしてアメリカで急速に蔓延しつつあり、国家非常事態の宣言が相次いでいる。

 イタリアでは、感染者が2万人を超え、死者も1800人以上となっている。致死率は7.3%と、中国の3.8%を超える高さである。この致死率の高さの理由はどこにあるのか。

 まずは、中国人観光客のみが感染しており、イタリア人は大丈夫だという誤解から、初動が遅れたのである。そのため、そのミスに気づいたときには手遅れで、一斉に患者が病院に駆けつけたために医療崩壊が生じてしまった。

 つまり、軽症者まで入院することになり、病床や医療機器、医師や看護師が不足し、重症者に手厚い治療が施されなかった。

 これこそ医療崩壊である。そして、その背景には、「財政赤字をGDPの3%以内とする」というEUのルールがあった。そのしわ寄せが医療財源の削減につながり、医療スタッフや病院の不足に帰結したのである。

 私は、厚労大臣のとき、それまで「医師数が増えないように、養成数を抑制する」としてきた閣議決定を11年ぶりに改め、医師数増加に踏み切ったのである。

 2008年のことであるが、財源を支配する財務省、競争相手が増えるのが嫌な開業医から成る日本医師会、その業界と密接な関係にある自民党厚労族や厚労官僚の反対を抑えるのに苦労したものである。

 医師不足で妊婦が病院をたらい回しされるような事件が頻発し、世論の支持もあって、医師養成数を増加させることに成功したのである。イタリアの医療崩壊を見れば、財政均衡という視点からだけで医療政策を立案することの間違いに気づくだろう。

 しかし、今回のような感染症という事態は突発的に起こる。そのときに十分な医療資源がなければ、対応できなくなる。

 アメリカでは、感染者が3000人を超えたが、トランプ大統領は500億ドル(約5兆4000億円)の緊急予算措置を講じ、全力をあげてウイルスとの戦いに勝利すると演説した。

 アメリカで最大の問題となっているのが、PCR検査が十分に行われていないことである。それが感染が急速に広がった理由の一つとして指摘されている。日本のような国民皆保険でないアメリカでは、検査を受けない人々が市中に感染を拡大させたと見られている。

 13日、米下院の監査政府改革委員会のマロネィ委員長は、PCR検査が遅遅として進まないことを痛烈に批判した。「1週間で韓国は66000人、アメリカは4900人、今や196000人検査した韓国はドライブスルーのPCR検査もあるのに、米国では医者すら検査を受け付けてもらえない」と指摘し、米国は遅れていると憤慨した。

 このような批判を受けて、トランプ政権は検査体制の拡充を約束し、またニューヨーク州ではドライブスルーのPCR検査を導入した。

 日本でも、PCR検査が少なすぎることが問題視されている。政府は改善を約束したが、保健所や病院などの現場では混乱が続いている。PCR検査はしないほうがよいという意見もあるが、その主たる理由は、検査をすれば陽性と判定される人が増えて、病院がパンクするということである。

 しかし、これは本末転倒の議論であり、「軽症者は自宅で療養、重症者が入院」というルールにすれば済むことである。

 フランスやドイツでも感染者が急増しているが、上述したように、この選別を行わなかったのがイタリアの医療崩壊の原因の一つである。これに対して、独仏では、重症者のみに入院を許すことで、死者をイタリアの10分の1以下に抑えることができている。

 陽性と判定されたら、重症、軽症を問わず入院させる方式を改め、軽症者は自宅で療養させ、重症者のために病床を確保すべきである。数を数えるのも無意味になるくらいに感染者が増えれば、PCR検査を止めてもよいが、今のフェーズではまだ感染防止のために継続すべきである。

舛添 要一 (国際政治学者)

最終更新:3/18(水) 15:30
ニュースソクラ

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