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『チャンプ』親子ドラマと壮絶なるボクシングが生んだ号泣映画

3/24(火) 12:05配信

CINEMORE

時代の変わり目に生まれた涙、涙の感動映画

 70年代から80年代への変わり目に誕生した映画『チャンプ』(79)は、今なお世界中の多くの人々を感涙させ続ける名作だ。もしくは、もうちょっとストレートに当時を代表する「号泣映画」と表現してしまっても良いのかもしれない。

 では、泣けるポイントはどこなのか。まずは序盤から小刻みに繰り出されるジャブのように、ボクシング元王者(ジョン・ヴォイト)と彼を「チャンプ!」と慕う純真無垢な息子(リッキー・シュローダー)との心温まるやり取りが涙を誘う。二人の元に現れる一人の女性(フェイ・ダナウェイ)が「あなたのママなのよ」と打ち明ける場面も相当泣ける。が、さらにすごいのは終盤20分に詰め込まれた壮絶なボクシング・マッチと、その後に訪れる劇的なラストシーンだろう。

 私もこの歳になって初めて本作に触れ、案の定、涙を流した。驚くべきことにDVD収録の音声解説では、すっかり大人になった(撮影当時は子役の)シュローダーが言葉にならないほど号泣しており、父親役のヴォイトも隣でさめざめともらい泣きしている有様だった。

名振り付け師による迫真のファイトシーン

 というわけで、入り口としては「号泣映画」でいいのかもしれない。が、もちろん本作の魅力はそれだけではない。今から40年前に想いを馳せると、映画界ではボクシング物が熱を帯びており、またもう一つの文化的、社会的な傾向として「夫婦の離婚問題」をテーマにした家族物が増えつつあった。

 『チャンプ』が興味深いのは、この当時の流行ともいうべき二つの要素を贅沢にも両方搭載しているという点である。最初に注目したいのは、本作の基調をなす「ボクシング」という要素だ。ラストを飾る迫真のファイトは一体どうやって描かれたのか。ここでキー・パーソンとして登場するのが、ジミー・ガンビナである。彼は『ロッキー』(76)のファイトシーンにも関わった人物だ。

 スタントダブルに任せずに全部自分で演じたいと願い出たヴォイトの熱意を買い、ガンビナはヴォイトにビタミン剤を注射し、翌朝4時に叩き起こしてジョギングに繰り出すなど、有無を言わさぬ猛特訓を開始。身長190センチを超えるヴォイトは以前にもボクサー役を演じた経験があり、筋の飲み込みも早かった。それゆえガンビナは彼に合ったハイレベルの振り付けを考案し、相手役にはプロボクサーのランダール・コッブを配した。

 ヴォイトが華麗なステップで動く。パンチを繰り出す。相手のパンチが高速でめり込む。互いが倒れるまでギリギリの状態での死闘が続くーーーー基本的に、両者が実際にパンチを当て合うことはなかったようだが、カメラ越しに見るその戦いは非常にリアルだ。彼らの一挙手一投足に合わせて熱狂する、300人の観衆のリアクションも相まって、観る側も拳を強く握りしめずにいられない白熱したシーンに仕上がっている。

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最終更新:3/24(火) 12:05
CINEMORE

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