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ゲーミングPCが作りたい男が「LAVIE VEGA」を作った話

3/25(水) 12:01配信

マイナビニュース

ゲーミングPCが作りたい男が「LAVIE VEGA」を作った話

本当はゲーミングPCを作りたかった

NECパーソナルコンピュータ(以下NECPC)の商品企画本部でマネージャーを務める中井裕介氏は、かなり重度なゲーマーだという。「もともとゲーミングPCを作りたかったんですよね」と語る中井氏であるが、NECに入社後はモバイルノートPCの開発に携わることになる。800グラムを切る軽量で多くのモバイルノートPCユーザーが高く評価した「LAVIE Z」「LAVIE Hybrid Z」は彼の“作品”だ。

【写真】LAVIE VEGAの天板は、まさに「鏡」のように美しく光を反射する

LAVIE Hybrid Zの開発が終わった中井氏は、それまでのモバイルノートPCから離れて15.6型ディスプレイ搭載ノートPC(以下、15.6型ノート)の開発に取り組むことになる。15.6型ノートPCと聞いて中井氏は「(念願のゲーミングノートPCかと)ちょっと期待したんですけどねー」と思ったらしい。

NECPCのノートPC想定ユーザーには、「Pro」「Home」「Education」そして「Game」がある。そのGameにフォーカスしたノートPCを開発すると思ったが、NECPCはその前にプロを意識した15.6型ノートの開発を中井氏に託すことにした。そして登場したのが「LAVIE VEGA」だ。NECPCはフォトグラファーに向けたノートPCとしてこのモデルを訴求する。搭載するCPUやディスプレイ、キーボード、付属するアプリケーション、ボディデザインなどなど、フォトグラファーのために構築したと説明するが、しかし、中井氏と話をしていると、それだけにとどまらない意図、というか”思い”がLAVIE VEGAにはあると思った。

この記事では、中井氏がLAVIE VEGAの開発にあたって、自分のアイデアや考えをどのように反映していったかを紹介したい。

「フォトグラファーのため」より前にあった「有機ELを載せたい」

中井氏が、LAVIE VEGAの開発で何よりも優先したかったもの。それは、「有機ELをノートPCに搭載する」ことだった。この思いは、LAVIE VEGAのために着想したものではない。それより以前に、LAVIE ZなどモバイルノートPCの開発を担当していた当時からずっと持ち続けていた。

中井氏はなぜこんなにも有機ELに入れ込んでしまうようになったのか。その理由を中井氏は「液晶と比べて色が全然違くて」と語る。中井氏が有機ELの表示を自分の目で見たのは外部のパーツベンダーが持ち込んだ有機ELディスプレイだった。その表示する画像の色を見た中井氏は「私がこれだけ感動するということはユーザーもきっと感動するという確信が」と、それから有機ELのとりこになってしまったと語る。

結局、モバイルノートPCに有機ELを搭載することはかなわなかった。「有機ELは電力を消費します。それがバッテリー駆動時間と軽量化が優先するモバイルノートPCに適さなかった」(中井氏)

しかし、15.6型ノートなら、バッテリー駆動時間の優先順位はそれほど高くなくて済む。また、ボディサイズがモバイルノートPCより余裕があるため、バッテリー駆動時間を重視する場合、バッテリーパックのサイズを大きくすることも可能だ。また、モバイルノートPCの開発に取り組んでいた2012年当時と比べて、OSがダークモードに対応した他、ユーザーの志向が「暗めの色」を好むようになっていたおかげで、有機ELを搭載しても消費電力を抑えることができるようになったという環境の変化も幸いしたという。

中井氏は、長年の夢だった有機ELディスプレイの搭載をLAVIE VEGAの特徴として早々に採り入れた。それこそ、「フォトグラファーにフォーカスした」という想定ユーザーの構想より前の段階だった。このように、LAVIE VEGAの企画段階において、有機ELの搭載が先に決まり、訴求するユーザーの設定はそのあとだった。LAVIE VEGAが搭載する有機ELはDCI P3色域を100%カバーする。このDCI P3は米国の映画業界団体も参画して策定した企画で、映像コンテンツ制作において主流の色域規格となっている。ならば、訴求ユーザーを印刷出力がメインの(それゆえDCI P3よりAdobeRGB色域対応が望ましい)フォトグラファーではなく、映像クリエイターを訴求ユーザーとして設定したほうがよかったのでないだろうか。

この問いに対して中井氏は「実は社内でも議論があった」とした上で、趣味の段階にあるユーザーが取り組みやすいジャンルとして、フォトグラファーを訴求することにしたと説明している。「ガチガチのフォトグラファーとなると映像クリエイター並みに数は少ないですが、スマートフォンで撮影するようなプロではないけれど写真を楽しむユーザーはたくさんいます」(中井氏)

なお、アドビシステムズにアプリケーションライセンスなどの連携を打診したのは、既にNECPC側でフォトグラファー訴求を決定した段階だったという。また、映像クリエイター訴求として映像編集用アプリケーションライセンス付属の可能性については、価格的な問題で難しかったと中井氏は説明している。

「LAVIE Zにも」「載せたかった」「ガラス天板!」

LAVIE VEGAのデザインにおいて大きな特徴となっている「プレミアムミラーガラス天板」も、実は中井氏がLAVIE Z開発当時から「ずっとやりたいと思っていた」アイデアだ。ただ、モバイルノートPCに搭載するには「ただ、やっぱり、どうしても重くなってしまう」ことから、モバイルノートPCでの採用はあきらめていた。しかし、軽量化の優先度がそれほど高くない15.6型ノートならば許容範囲と考え採用に踏み切った。「LAVIE VEGAのガラスなしモデルと比べると100グラム重くなります」(中井氏)

ちょうど、LAVIE VEGAの開発が始まったタイミングで、米沢にある先行技術開発部署「ニューテクノロジーイノベーション」(以下、NTI)が、ガラス天板を用いたノートPCの試作機を開発した。量産にも耐えられるとの報告を受けて、LAVIE VEGAでの採用を決断したと中井氏は説明する。ただ、量産試作機から量産機に進む過程でも苦労があったと中井氏は振り返る。LAVIE VEGAのデザインでは高級感を出すために天板を鏡面にすることにしていた。しかし、NTIの量産試作はアルミ合金の天板をガラスで覆うだけで、LAVIE VEGAの天板にガラスをかぶせると見た目のボディカラーが変わってしまう問題や、鏡面がくすんでしまう問題が発生した。これは、ボディ表面の鏡面仕上げのために複数のコート層を構成していたためで、コート層の色合いや重ねる順番変える試行錯誤を2か月間重ねて解決したという。また、量産試作では天板の周囲に強度を確保するラバー製の枠を設けていたが、量産機では枠を廃している。こちらも、強度評価を繰り返すことで枠がなくても強度が確保できることが判明したおかげだ。

天板にガラス素材を採用したノートPCは他にも例がある。以前、そのモデルを「触ったこと」があるが、ただでさえ脂っぽい手で天板に触れると指の跡が付きまくって大変だった記憶ある。しかし、(実はこのインタビューに先立ってLAVIE VEGAの実機をレビューしていたのだが)LAVIE VEGAは1週間ほどの評価期間において通常のノートPCと同様に扱っていた(なので、天板も躊躇なく触れていた)ものの、思いのほか、指の跡が気にならなかった。LAVIE VEGAの天板は明らかに指の跡が目立ちにくく、かつ、きれいにふき取りやすい。これについて中井氏は、アンチフィンガープリントコーティングが貢献していると述べている。

打ちやすいキーボードはThinkPadの影響か?

NECPCはキーボードについて「本体の中心とキーボードの中心が一致して打ちやすい」と訴求する。15.6型ノートによくあるテンキーを廃したことと、キーボード左側にショートカットキー登録用の「プロキー」を設けたことで、キーボードのホームポジションが本体の中央と一致したことがその理由とされている。ちなみに、中井氏によると、製品企画においてプロキーの搭載が先に決まっており(その理由はゲーミングPCに搭載しているマクロキーというのがゲーマーの中井氏らしい)、その結果として、キーボードが本体中央に収まったという。

そのキーボードでNECPCが訴求していない、しかし、1週間ほど使ってみて意外かつ最も評価が高かったのが「キーボードの打ちやすさ」だった。タイプに必要な力加減にキートップを押し切ったときに指の力を受け止めてくれる感触といった、「タイプのフィーリング」が非常に心地よく、それこそ、私が長年常用してきたThinkPadに匹敵するほどのいい出来だった。で、ここで、「ん? ThinkPad」となる。そういえばNECPCはレノボの仲間になったんだっけ。ということは、LAVIE VEGAのキーボードはThinkPadのキーボードを使っているのだろうか。

この問いに対して、中井氏は「技術的な情報共有はありますが、LAVIE VEGAのキーボードはNECPCで新規に開発したユニットです」と答えている。キーストローク1.7ミリは従来のLAVIE NEXTと同等だが、ボディの厚さは17.9ミリと薄くなっている。この状況でキーストロークを確保できた理由として、中井氏は「それこそ有機ELをはじめとする採用パーツの薄型化が大きく貢献しています」と説明する。なお、LAVIE VEGAと同等のフィーリングを持つキーボードユニットをほかのモデルに展開する可能性については、全てのモデルでキーボードは新規に開発しているのと、開発コストがモデルによって異なるのでどこまで展開できるかは明らかにできないとしている。

長浜和也

最終更新:3/25(水) 12:01
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