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無観客の大相撲大阪場所が示す一つの方向性~成功の陰に隠れた危機

3/25(水) 12:06配信

VICTORY

3月22日日曜日に白鵬の44回目の優勝で幕を閉じた大相撲大阪場所。

 事前のチケット販売は順調でほぼ完売。そんな状況の中新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、史上初の無観客による本場所が開催された。
相撲だけをみれば、両横綱による千秋楽決戦。世代交代と言われているが、横綱が休場しない限り若手が優勝できない状況はまったく変わらず。幕内下位力士が優勝争いに絡んだ時に早めに小結や関脇にあてずに横綱にあて、横綱大関の割を崩すといった審判部の理解できない対応など現状に変化はみられなかった。

 大きな変化は初日恒例の協会挨拶だろう。通常の倍以上の時間を使い、大地を鎮め、邪悪なものを抑え込む力があるといわれる四股の由来など相撲の神道的な側面からこの現状の中実施することを説明。しかも通常とは違い幕内力士全員が土俵下に整列するという異例のものだった。
千秋楽も異例中の異例。結びの一番後に幕内力士全員が土俵下に整列し協会挨拶を実施。
 八角理事長が無事に終えることができたことに対し、ファンや関係者に謝意を述べたところで感極まり言葉に詰まる場面も見られた。これは開催が決定してから、連日大量の抗議が押し寄せてきた中、無事にやり終えたことも影響していたのだろう。この場で国技としての決意表明を述べることができたのは今後の相撲の在り方にもつながり後世に残る素晴らしい挨拶だった。

■相撲記者の戸惑いと相撲の懐の深さ

 取材現場もいつもと違っていた。普段は支度部屋への出入りが許され、取組後に風呂から上がった力士がまげを結い直している間に取材する。力士の隣に座ることもでき、極めて近い距離で話を聞くことができる。しかしこの大阪場所では支度部屋への出入りが禁止され、東西の花道奥にあるスペースに“ミックスゾーン“と呼ばれる取材エリアが設置された。帰り際の関取に声を掛けて足を止めてもらい、2メートルほどの柵で隔てられた距離からの取材となった。
 取材をお願いすると、ほとんどの関取衆に応じてもらったが、ミックスゾーンならではの悩みもあった。相撲関連の話を一通り聞いた後、会話が深まりにくかったことだ。支度部屋だと物理的な距離が近いことから雑談のような雰囲気になり、その延長線上で力士の本音や相撲の話を補完するようなプライベートの話を聞くことがままある。それが今場所はしにくく、いつも以上に記者の力量が試される場所になった。

 感染防止のための特別態勢は他にもあった。例えば力士ら同様、メディアも動線を制限された。外部との接触をできる限り減らすため、一度会場に入ったら外出できず、例えば朝8時に入館する場合でも、昼食用などの食料を大量に買い込んで入った。大勢の大相撲ファンが楽しみにしている本場所が、報道陣から持ち込まれた新型コロナウイルスによって協会員に感染し、途中打ち切りとなれば取り返しが付かない一大事。入館時の検温やマスク着用を含め、メディア側にもいつも以上の危機感があった。
相撲協会側にも配慮は随所にあった。例えば、2階にある東西のミックスゾーン近くには異例の記者室が設けられた。また、ミックスゾーンにいる報道陣に見えるような位置にテレビが設置され、力士の取材の傍ら、オンタイムで取組を確認できて大いに役立った。
 無観客開催が決定したのは3月1日の臨時理事会。春場所初日はその1週間後の8日だったが、限られた時間の中、協会側は何度も打ち合わせを重ねながらメディア側の要望を考慮し、取材環境を構築した。
新型コロナウイルスという国難の中での春場所。さまざまな場面において角界の懐の深さが表出していた。

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最終更新:3/25(水) 12:08
VICTORY

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