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「新型コロナ」の影響、上野・アメ横周辺で探る

3/25(水) 14:45配信

東京商工リサーチ

 世界的に猛威を振るう「新型コロナウイルス」の影響で、国内でインバウンドが消えた。
 全国の観光地でも、訪日観光客の減少が深刻さを増しているが、東京・上野駅周辺では観光客の減少で廃業を決断する店も現れた。
 収束時期が見通せない新型コロナ被害は日に日に広がり、「倒産」だけでなく「廃業」の増加としても影響が顕在化している。

 JR上野駅。その駅前で焼き栗とかばんを販売していた(株)くりや(TSR企業コード:291222510)が3月31日で閉店し、廃業することを決めた。くりやは、焼き栗の店頭販売で90年以上の歴史を誇る。だが、最近は殻付き甘栗を食べない若者が増え、焼き栗の販売量は落ち込んでいた。ただ、かばん販売は好調で、上野を訪れる観光客や周辺のビジネスマンらが多く店を訪れていた。
 店主の永島源子さん(64)は、「(新型コロナ問題が広がった)2月以降、上野から訪日観光客がみるみる減った。お店を訪れる人も減り、いつ影響が終息するかもわからず店を閉めることを決断した」と、閉店の理由を明かす。この1カ月半の売上高は通常時の半分以下だという。
 「かばん類が40万円売れる日があったら、そのうち5万円が日本のお客様で、残りは海外の方という日もあった。その海外のお客様分がすっかり抜けたような感じで推移している」(永島さん)と、現状を語る。
 「最近はインターネットサイトで商品を買うため、店頭でかばんの中を開けて写真だけ撮影して立ち去る人が非常に多い。(お店を)閉めたくなることは度々あったが、これまで乗り越えてきた。でも、インバウンドが止まってしまい、店を続ける気持ちは消え失せた」と境地を語った。連日、店内の床や商品棚をアルコール消毒して店を開け、客を待つ。商品は大幅に値下げした。
 「なんとか売り尽くしたい。かばんは仕入れ値以下で売っている。お客様から“寂しいね”とお声をいただくこともあります」と揺れる気持ちを隠すように語った。

 訪日外国人の減少は上野全体にも影を落とす。アメヤ横丁(アメ横)の乾物店では、3月に入ってから売上が前月よりも半減しているという。店主(39)は、「2月からじわじわと外国人の観光客が減り、2月終わりはパタッといなくなった。彼らはホタテ貝柱などの高額商品をよく買っていたので痛手だ」と渋い表情で語った。
 影響は訪日外国人だけにとどまらない。外出自粛の要請で、日本人の消費も落ち込んでいるからだ。「アメ横や上野周辺は、美術館や銀座に出かけた“ついで”に食料品を買うお客様が多い。そういう人がパタッといなくなった」と店主。「食料品は近所のスーパーで済ませているんじゃないか」と語る。
 近隣の薬局でも「少なくとも、いつもの7割以上は(訪日外国人が)減ったように感じる。2月以降、訪日観光客の来店はめっきり減ったし、日本人も馴染みのお客様しか来ない」と話す。
 日本政府観光局が3月19日に発表した今年2月の訪日外国人客数の推計値は、108万5100人で、前年同月の260万4322人から58.3%も減少した。
 国内航空大手も連日、国際線の減便、運休措置を取っている。全日空は3月17日、3月29日から4月24日の国際線の運航スケジュールを発表当初の事業計画便数(4653便)の56.5%に当たる2630便の減便を発表。日本航空もハワイ、ソウル、プサンなど6路線で462便の減便を発表した。
 国内線も減便が相次ぐ。国内の観光需要は停滞し、先の見えない厳しい状況が続いている。インバウンドに代わる新たな需要の創出ができず、将来への不安が募るばかりだ。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2020年3月26日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

最終更新:3/25(水) 14:45
東京商工リサーチ

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