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妊娠継続「生んであげたい」 母の意志を家族が後押し

3/26(木) 11:30配信

長崎新聞

 「短命って…」

 目の前で医師2人が胎児に認められた「18トリソミー」について説明しているが、何も耳に入ってこない。「短命」の二文字だけがぐるぐると頭の中を回っていた。
 「(夫の)雄一君に連絡しなきゃ」。説明が終わると、出口光都子(みつこ)さんは2週間のベッド生活で筋力が落ちた足で、ふらふらと談話スペースに歩いて行った。携帯電話で夫に説明しようとするが、涙がぼろぼろこぼれて言葉にならない。「どうしたんや?落ち着け」。なだめようとする夫に、なんとか検査結果だけは伝えた。
 病室に戻っても涙は止まらない。4人部屋だったので声が漏れないよう、カーテンを引いて枕に顔をうずめた。この日は一睡もできなかった。
 2日後、夫と2人で医師の説明を受けた。妊娠を継続するかどうか、4日後に聞かせてほしいと求められた。母体保護法で人工妊娠中絶が受けられるのは妊娠22週未満まで。光都子さんは間もなく20週になろうとしていた。
 ただ光都子さんの中では羊水検査の結果がどうであろうと結論は決まっていた。超音波(エコー)検査画像で元気に動くわが子の姿を見ていると、込み上げてくる「生んであげたい」という思い。親の都合で小さな命を絶つことなんてできない-。実際、母体保護法は「障害」を理由とした中絶は認めていない。同法の「妊娠の継続または分娩(ぶんべん)が身体的または経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれ」という規定を援用しているのが実態だ。
 一方、夫の雄一さんは「中絶は選択肢にあった」と言う。「経済的にも体力的にも育てていけるのか。共働きだけれど、生まれてくる子どもの世話で妻は働けなくなる。もし長生きして、私と妻が先に亡くなったら、誰が面倒をみるのか」。雄一さんはさらに続ける。「でも一番大きな理由は、子どもの顔を一目でも見たら、亡くなった時に耐えられるかどうか分からなかった」。そんなことを妻と話し合ったが、最後は「生みたい」という妻の強い意志を尊重した。
 夫妻はリビングのテーブルに小学6年の心実(ここみ)さん、4年の心晴(こはる)さん姉妹を呼び、検査結果の染色体の画像を見せた。赤ちゃんは重い障害を抱え、短命の可能性があり、お母(かあ)はつきっきりになる。入院したら家を空けないといけない。家族で遠出もできないかもしれない。2人には今以上に自分のことをやってもらわないといけない。それでも赤ちゃんを生んでほしい?
 姉妹は少し考えて答えた。「お母、生んで」。家族の意見がまとまった。

【次回に続く】
※この連載は随時更新します。

最終更新:3/26(木) 11:30
長崎新聞

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