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「雑誌SK」アーカイブ|ジョゼ・モウリーニョの時代

3/26(木) 11:50配信

SOCCER KING

[サッカーキング No.006(2019年9月号)掲載]

革命は2004年に起こった。ポルトを欧州王者に導いた“スペシャル・ワン”は、嵐のような勢いでチェルシーを変え、イングランドのフットボールを変えた。それはクラブと監督、金と野心、権力と情熱のこれ以上ない融合であり、16歳のあるファンにとっては、フットボール・ライフが始まった瞬間だった。チェルシーサポーターでもあるジャーナリストがその思いを綴る。

文=クライヴ・マーティン
翻訳=湊 昂大
写真=ゲッティ イメージズ

 最初に「ジョゼ・モウリーニョ」の名前を耳にしたのは2004年、ポルトがチャンピオンズリーグのラウンド16で、マンチェスター・ユナイテッドと対戦したときだった。イングランドのフットボールファンのほとんどは、まだ彼のことを知らなかった──ごくわずかな海外フットボールオタクを除いて。

 イギリスのフットボールメディアはたいてい国外のクラブをよく知らないので、欧州カップ戦の対戦相手は“恐るべき強豪”か、“取るに足らない弱小”のどちらかで表現される。しかしそのときは何かが違っていた。メディアは奇妙なほどに、ポルトの指揮官に注目していた。短期間のうちに成り上がった、傲慢な青年監督に。

 2ndレグが行われる日の朝、僕はラジオでファン参加型のフットボール番組を聞きながら学校に向かっていた。そのとき聞いたあるファンの意見を今でも覚えている。

「ポルトを甘く見るな。彼らはユナイテッドを倒せる実力を持っている」

 この見解に賛同した専門家がどれだけいただろう? しかし試合が終わる頃には、イングランドのフットボール界は衝撃を受けていた。オールド・トラッフォードのピッチサイドを全力で走り、拳を高く突き上げ、プラダのコートを風になびかせる──。そんなモウリーニョのイメージが、瞬く間に世界に伝えられた。

 オールド・トラッフォードは“夢の劇場”だ。モウリーニョのパフォーマンスは、いわばプレミアリーグの“聖地”を冒涜したに等しかった。当然ながら、ユナイテッドのファンはこれを決して許せない侮辱行為と見なした。一方で、それ以外の大多数はこの監督に、魅力的で奇抜なフットボールの革命家の姿を見出していた。彼は感情の激しいスコットランドの頑固親父でも、数学教師のように堅苦しいフランス人でもなかった。空港でしか買えない高級雑誌の広告ページに登場するような、クールでエレガントな人物がそこにいた。

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最終更新:3/26(木) 11:55
SOCCER KING

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