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「MAZDA3」のSKYACTIV-X搭載車に試乗。フィーリング、ACCのマナー、燃費はどうか?

3/27(金) 0:00配信

Impress Watch

■SKYACTIV-XをSKYACTIV-Xらしく乗る秘訣

 2019年5月に日本国内で販売を開始した「MAZDA3」には、革新的な内燃機関が搭載されている。SKYACTIV-Xエンジンだ。当時、SKYACTIV-X搭載車は標準グレードに遅れての販売となる旨が告知されていたが、2019年12月には無事販売を開始。現在は、MAZDA3ベースのSUVモデルである「CX-30」のSKYACTIV-X搭載車も販売する。

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 SKYACTIV-Xの最新販売データは以下の通り。

 MAZDA3におけるSKYACTIV-Xの販売比率は2019年12月6日の販売開始以来、2020年1月登録実績でMAZDA3全体の約2割。その駆動方式とトランスミッションの比率は、FF:4WDで65:35、AT:MTは70:30(セダンはMT設定なし)。

 CX-30におけるSKYACTIV-Xの販売比率は、1月16日の販売開始以来、1月登録実績でCX-30全体の約1割。その駆動方式とトランスミッションの比率は、FF:4WDで45:55、AT:MTは94:6とのこと。

 SKYACTIV-Xが目指したのは究極の内燃機関。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を持ち合わせた理想の内燃機関と言い換えることができる。

 SKYACTIV-Xの考え方は、2010年の「2020年に向けたビルディングブロック戦略」や、続く2017年の「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」における大きな目標として掲げられてきた。今回改めてSKYACTIV-Xを搭載したMAZDA3に試乗して、世界に誇る高い技術力と、何としても実用化するんだという開発陣の気概を痛感した。

 試乗モデルはファストバックの「MAZDA3 X L Package」。駆動方式はFFでトランスミッションはSKYACTIV-DRIVEを名乗る6速AT、価格は338万463円。

 試乗前日、取材車を横浜で受け取り、都内の事務所へ向かう。年度末の平日午後、首都高速道路は渋滞が続く。約4か月ぶりに試乗するSKYACTIV-Xは相変わらず静かだ。これは徹底した保温/防音のために行なわれたエンジンルームのカプセル化や、高められた各部の遮音性能によるもの。

 とはいえ、乗り始めてすぐに気がつくのはそちらで、肝心の動力性能に劇的な展開はない。ディーゼルエンジンのような豊かなトルクフィールはなく、スポーツエンジンのような鋭いレスポンスもないからだ。ただ、ベースエンジン搭載車と比較すると違いはハッキリしてくる。

 SKYACTIV-Xを搭載したX L Package(180PS/224Nm/1440kg)に対し、ベースエンジンの「20S L Package」(156PS/199Nm/1360kg)は、同じ道路で同じ運転操作を行なってみると明らかに低速~中速域にかけておっとりとした動きが目立つ。具体的にはアクセル操作に対して躍度(連続する加速度/クルマとの一体感を示す指標)の発生がドライバーの期待値よりも遅くて、その絶対値も低い。だからドライバーとしては無意識に踏み足す運転操作を行なうことになり、同時にこれが不感帯として認識される。

 SKYACTIV-Xはこの踏み足し操作がいらない。“これくらい踏めば、欲しい加速が得られるな”とイメージした最初のアクセル操作を保っていると、じんわりと躍度が上昇するからだ。このとき、キャビンは徹底して静かだから速度の上昇感こそ希薄だが、スピードメーターの針は確実に上がる。また、このじんわりとした躍度の高まり方を例えるなら、2.5リッターの無過給ガソリンエンジンに近い。こうして高まる躍度は、増幅されたトルクとして身体にフィードバックされるため、結果的にゆとりとして実感される。まとめると、この“アクセル操作を保つ”という所作こそ、SKYACTIV-XをSKYACTIV-Xらしく乗る秘訣だ。

 踏み足し操作を必要としない理由はもう1つある。6速ATの最終減速比がベースエンジンから6.6%ほどローギヤード化されていることだ。1~6速のギヤ比は同じだから全体的に加速方向へと振られているため、躍度の高まりをより感じやすくなる。

 ところでSKYACTIV-Xはマイルドハイブリッドシステム(6.5PS/61Nm)を搭載しているが、アクセルを踏んだ瞬間はモーターによるトルクアシストは行なっていない。SKYACTIV-X開発担当者によれば、「エンジン単体の初期応答性能と、駆動力の伝達応答性能が高いため」と解説する。つまり、じんわり高まる躍度はSKYACTIV-X本来の持ち味ということだ。

■ACCとSKYACTIV-Xの相性は?

 取材当日は東名高速道路を経由し、箱根へと向かった。あいにくの雨天だったが、ホイールハウスに打ち付けるタイヤが巻き上げた雨音は小さく、遮音性能の高さを実感。高速道路では第一通行帯を走り、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とSKYACTIV-Xの相性を確認する。ご存知のように、ACCにはシステムが行なえる最大加速度と最大減速度には制約がある。ただし、加減速度の出し方は各自動車メーカーに委ねられていて、同じ車両でもエンジン型式や出力特性が違うと体感もそれに合せて変化する。

 ACCの分かりやすい評価点は2つ。①前走車への追従性能、②ドライバーのアクセル操作に対する協調性だ。①はドライバーが行なう任意の車間時間設定(≒車間距離設定)により一定範囲での加減速が行なわれるが、SKYACTIV-Xの場合、前述したエンジン単体での初期応答性能が高く、MRCC(マツダ レーダー クルーズ コントロール)が使用するミリ波レーダーの認識性能が優れているため、加減速の両方で反応が早い。ただ、システムの優先順位として車間設定を保つことが上位にくるようで、減速時には他車よりも早めにブレーキ制御が介入する。

 筆者は安全面からこの制御方法に賛同するが、減速度の立ち上がりが強めである点が気になった。いわゆるブレーキ制御の介入初期に、ドライバーや同乗者が前のめりになりやすいのだ。これは前走車がゆっくりとした一般的な0.1~0.15G程度の減速度を伴うブレーキであっても発生する。

 ②は車速域の低い渋滞路などでセンサーが前走車を認識していて、かつ車間時間を最短に設定した状態であっても、前走車との距離が空きすぎるとドライバーが感じるシーンがある。このとき、多くのドライバーはアクセルペダルを少し踏み足しやり過ごすだろう。そして、必要なアクセル操作が終わったらドライバーはゆっくりとアクセルペダルから足を離すことになるが、その際に軽いブレーキ制御が介入するシーンが多かった。ペダルから足を離した瞬間にグッとやや強めのブレーキが介入するのだ。

 これは①でのブレーキ制御にも関係してくる事柄だが、やはりシステムが定めた車間時間設定が優先されているようで、ドライバーのアクセル操作によって縮まった前走車との距離を早めに元に戻そうと正しく機能している証拠でもある。ただこれも、車速が20km/h以下と低い状況であるならば、介入するブレーキ操作のうち初期を弱めてもいいと思う。

 ちなみにトヨタ、スバル、メルセデス・ベンツ、BMWなどの現行車種が搭載するACCでは、こうしたACC作動中のドライバーによるアクセル操作を最大限許容した協調運転が提供されている。安全の確保はすべにておいて優先されるべきだが、その上で、動的質感はこんなところでもうまく表現できるはずだ。

■燃費は17.9km/L

 高速道路を下り、一般道路で市街地を走る。ここでは発進時のマナーが気になった。渋滞路や信号待ちからでアイドリングストップ機構が働いていたとする。よってスタート時にはアクセルON→エンジン再始動→発進となるのだが、ミリ単位のアクセルペダル操作を行なってもエンジン始動→発進の合間に軽い衝撃が発生する。この事象を確認した当初はブレーキのオートホールド機構の解除が関係しているのかと思い、アイドリングストップ機構が働いていない状況でアクセルON→オートホールド機構解除→発進を試したが、ここでは衝撃は発生しない。つまり、エンジン再始動→発進の中に呼び水があるようだ。

 山道に入る。ここではまずDレンジのまま走る。冒頭の過度に踏み足さないアクセルワークを心がけると、なるほど! ここでもSKYACTIV-Xが目指したパワー&トルクフィールが体感できる。繰り返すが、ドラマチックな展開はない。ただ、同乗者の頭が揺れないような丁寧な運転であっても、じんわりとした躍度の高まりを先読みして、その特性をうまく自分の操作に採り入れることで気持ちに余裕を残したまま割とハイペースで走り切ることができる。

 ATのドライブセレクションを操作しスポーツモードに切り替える。これにより変速ポイントの上位移行や変速時間の早期化などが行なわれ、さらに減速時にはブリッピングを伴うシフトダウンも行なわれる。また、より高回転域まで多用できるのでエンジン音も耳に届きやすい。カプセル化し遮音性能を高めているが、同時に人が心地よいと判断する音は積極的にキャビンへと迎え入れているという。

 そこを意識して走らせてみると、確かに3000rpmあたりからむずむずと音が変化し始め、4500rpmを過ぎたあたりから高い音域が加わってくる。その際、アクセルペダルはしっかり踏み込んでいて、踏み込み量とクルマの反応が一致することから、ドライバーにしてみれば操作から得られる満足感がさらに高まる。

 乗り味はこうした山道と高速道路、一般道路でそれぞれ評価が分かれる。山道ではしっかりとした前荷重でゆっくりとしたステアリング操作をしていくと、「G-ベクタリング コントロール プラス」との相乗効果もあり徹底してスムーズに曲がり収束する。この気持ちよさはND型ロードスターにも通ずるほど。

 一方、高速道路ではたとえば100km/hで淡々と直線を走行しているシーンでこそ高い直進安定性により安心していられるが、路面の凹みを通過するなど強めの力が加わると、ガツンとやや大きめの衝撃音とともに強めの突き上げを感じることがある。首都高速などに多いカーブ途中の路面継ぎ目では、雨天で滑りやすいとはいえ若干姿勢を乱しやすかった。

 一般道路でも路面が滑らかであればいいのだが、やはり強い外乱を受けるとその都度、身体が上下方向に揺さぶられる。

 もっとも、これが6速MTモデル(4WD)では大きく印象が違うことを2019年11月の公道試乗で確認している。開発陣いわく「MTの4WDモデルで最初にセッティングを出した」ということも少なからず関係しているようだ。

 燃費性能はどうか。下の写真の通り330.1km走り、車載の燃費計では17.9km/Lを記録した。外気温6~16℃のところエアコンはACオンで21℃のAUTO設定。シートヒーターも適宜活用。内訳は、高速道路&自動車専用道路72%、一般道路28%。WLTC総合が17.2km/L、WLTC高速道路モードが19.0km/Lだから順当なところか。第6世代商品群以降、MAZDA3が属する第7世代商品群も車載の燃費計はとても正確だ。

■SKYACTIV-Xの存在意義をもっとアピールすべき

 筆者は、SKYACTIV-Xの誕生を心から祝福している。ただし、今回の試乗を通じても言えることながら、現状には満足していない。言葉は荒いが実力はこんなもんじゃないはずだ。マツダが独自に開発した燃焼メカニズム「SPCCI/スパーク・コントロールド・コンプレッション・イグニッション」と「24V系マイルドハイブリッドシステム」を組み合わせた内燃機関、すなわちSKYACTIV-Xは、自動車メーカーに課せられたCO2排出量の低減と走りの楽しさの両立に向けた1つの手段として、この先SKYACTIV-Xの進化とハイブリッドシステムの昇圧化などを踏まえ、大いなる飛躍に期待がもてる。

 2007年、メルセデス・ベンツもSKYACTIV-Xと同じような考え方で作り上げた予混合圧縮着火(HCCI)エンジン「DIESOTTO」をプロトタイプ「F700」に搭載したが、ついに量産化にまでは至らなかった。それほどこの領域は技術的なハードルが高い。でも、だからこそここからは辛口。“生まれたばかりのSKYACTIV-Xになにもそこまで……”という印象をもたれるかもしれないが、筆者からのエールだと思って読み進めていただきたい。

 SKYACTIV-X搭載車の車両価格については、各方面で言われている通り高価だ。SKYACTIV-Xではないベースエンジン搭載車の同一グレードから68万円ほど高い。数字はストレートな評価を受けやすいから、ここに疑問符がつくのは当然のこと。

 ただし、高価となる正しい理由はたくさんある。そもそもエンジンが違う、マイルドハイブリッドがある、回生ブレーキを働かせるためにECB(電子制御ブレーキ)も装着する。そして何より、SKYACTIV-Xを世に送り出すためにこれまでたくさんの人、金、物を投資してきたわけだ。ならば、そうした高くなる理由を声高にすべき。いや、しないからこそ批判されるのではないか。

 見た目にしてもそうだ。2012年2月に発売されたマツダのSUV「CX-5」は、いわゆる第6世代商品群と言われているが、このCX-5以降、「アテンザ(MAZDA6)」にしても、「アクセラ」(MAZDA3の前身)、「デミオ(MAZDA2)」などなど、軒並みグレードによる外観上の差別化がほぼなくなった。細かく見ればホイール&タイヤサイズこそ違うが、パッと見はどのグレードなのか違いが分からない。

 一方で、この先も差別化を必要としないモデルがマツダにはある。ロードスターだ。愛車であるND型ロードスターは購入から5年が経過するが、“いいものは1つ!”とするオンリーワン精神を掲げた開発陣のもと、未だ色褪せないところに歓びを感じている。もっともロードスターは、ハードトップを持つ「RF」のラインアップがあるものの、初代の生い立ちからオープン専用ボディという時点で最大限の差別化が図られている。だから、単なる差別化は必要ない。

 しかしSKYACTIV-Xは違う。意味的価値という言葉をマツダの開発陣はよく使われるが、唯一無二であるSKYACTIV-Xは、その存在意義をなるべく多くの手段を使って世間にアピールすべきだ。現状、それがまったく足りていない。

 誕生したての純粋無垢な今だからこそ、車両価格が高くなる(量販化で安価になる)意味とともに、分かりやすい搭載車両の差別化でSKYACTIV-Xの魅力を紹介して価値を上げ、潜在的ユーザーの所有欲を大いに煽ってほしい。ロードインプレッションの項でお伝えした、アクセル操作の所作にはじまり、じんわり高まる躍度、もたらされる心のゆとりは、きっとSKYACTIV-Xを支える屋台骨になる。誰もが毎日の運転操作で実感できる美点だからだ。

 マツダには唯一無二の世界が似合う。1963年、マツダにロータリーエンジン研究部が発足。当時の技術者は少数精鋭47名だったという。日夜開発を続け、1967年には世界初のマルチローターロータリーエンジンを搭載した「コスモスポーツ」が誕生した。その後、「ファミリア・ロータリークーペ/ロータリーSS(セダン)」、「パークウェイロータリー26(マイクロバス)」、「RX-7(スポーツカー)」などに搭載された唯一無二の存在である量産型ロータリーエンジンは、2012年6月の「RX-8」の生産終了をもって一度、幕を閉じている。

 SKYACTIV-Xとロータリーエンジンは唯一無二の存在として共通項がある。両者が目指す技術のベクトルと発展性はまるで違うが、マツダが独自に作り上げ育んできた点は同じだ。ロータリーエンジンは当時、なぜそれを今、世間に商品として問うているのかを全身全霊で発信し、それに見合う車種を模索しながら鋭意投入したことで世界中にファンを増やした。

 SKYACTIV-Xにしても同じ道が拓ける。なぜ今、SPCCIを作り上げ、そこには電動化技術も組み込み、こうしてMAZDA3やCX-30に搭載したのかを声高にアピールしてほしい。これこそ、MAZDA3から始まった第7世代商品群のやるべき姿の1つではないか。

 さらに言えば、SKYACTIV-Xだけが先頭に際立つ現在の販売手法では、グローバル市場でのさらなる競争力強化は望めない。次世代車両構造技術「SKYACTIV-Vehicle Architecture」との二人三脚でパワートレーンであるSKYACTIV-Xが活きてくることをことさら前に押し出すべきだ。

 SKYACTIV-Vehicle Architectureは、SKYACTIV-Xの発表と時を同じくして披露された技術であり、SKYACTIV-X搭載車に実装されている。人が本来行なっている歩いたり走ったり、イスに座ったり立ち上がったりするという身体の動きを研究し、人のバランス感覚や身体を保持する力を最大限発揮させ、道路環境が変化してもしなやかで滑らかな乗り心地を実感できることを目標とした。

 さらに、快適で疲れない理想的な車内空間の実現も目指した次世代プラットフォーム技術だ。人に優しいプラットフォームだからこそ、じんわりとした躍度の高まりが活きてくる。

 こうした新しいクルマ作りの考え方を礎に、それを具現化する最新のパワートレーンとしてSKYACTIV-Xがあり、この先には次代が求めるBEV(バッテリー式電気自動車)「MX-30」や、財産であるロータリーエンジンを搭載したレンジエクステンダーモデルが控えている。こうして点と点をまとめ上げ繰り返し表現し続けることで、マツダが提案する意味的価値とは何を示すのか、それがより明確になる。そう筆者は信じている。

Car Watch,西村直人:NAC,Photo:安田 剛

最終更新:3/28(土) 15:52
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