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「食事と祈り」で安全過信 東南アジアで「サイレント感染」急拡大

3/29(日) 7:15配信

産経新聞

 世界各国で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、発展途上国への感染拡大が懸念されている。東南アジアのミャンマーとラオスでは最近まで「感染者ゼロ」が続き、政府関係者は「健康的な食生活が国を守っている」などと自信を見せていたが、ウイルス侵入を止められなかった。検査能力不足から途上国ではサイレント・エピデミック(静かな感染拡大)が進行しているとされ、国際社会は懸念を深めている。(シンガポール 森浩)

【表】「自粛生活」で気をつけるべきこと

 ■「健康的な生活」が感染を防いだ?

 「国民のライフスタイルと食生活がウイルスから国を守っている」

 ミャンマー政府スポークスマンは3月上旬、「感染ゼロ」の理由をこう説明していた。ストレスのない健康的な生活がウイルスを遠ざけている、との主張だ。あまりに楽観的な意見に地元ジャーナリストからはあきれる声が上がっていた。

 ミャンマーは約5300万人の人口を抱えながら23日まで感染者がなく、「感染が確認されていない最大の国」(ロイター通信)とされた。その後、27日までに5人の感染が確認されたが、すべて海外からの帰国者だ。国内での感染状況は不明な部分が多い。

 国内は「世界で最も脆弱(ぜいじゃく)な公衆衛生システム」(地元ジャーナリスト)とも指摘される。保健省担当者は、WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が感染拡大防止に必要なこととして「検査、検査、検査」と言ったことに触れ、「その検査をするキットも整っていない」と話した。

 隣国タイが国境封鎖を決めたことや、国内商業施設の閉鎖を命じたことなどで、タイで就労していた出稼ぎ労働者がミャンマーに戻っている。タイでは27日現在で1045人の感染者がおり、ミャンマー国内ではウイルス拡散への懸念が高まるが、国内での流行を検知し、適切な治療を施せるかは未知数だ。

 ラオスも状況は同じだ。保健副大臣は3月上旬、海外メディアに「政府の迅速な対応のおかげでノーウイルスのシナリオは可能だ」と自信を見せたが、24日以降、相次いで6人の感染が確認された。

 地元医師は米誌フォーリン・ポリシーに「隠れた流行があるのではないかと心配している」と発言。ラオスでもタイから労働者が舞い戻る状況が起きており、感染拡大につながる可能性が懸念されている。

 ■「感染ゼロ」一転、急拡大

 急速に危機感が高まる両国だが、ともに「自国の未来」として懸念するのが、インドネシアの現状だ。

 インドネシアは人口約2億6000万人ながら、2日まで感染者は確認されていなかった。テラワン保健相は水際対策の成功を主張し、「祈りのおかげだ」とも自慢げに話したが、その後、感染が続出。27日現在で893人の感染が確認され、78人が死亡した。死者は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国で最も多く、9%近い死亡率の高さが課題だ。

 保健相が「祈りのおかげ」と主張していた期間、既に蔓延(まんえん)していた可能性が指摘されている。インドネシアのカラ赤十字総裁は新型コロナ感染が検査能力の不足のため、「普通の発熱か、デング熱と診察されているのではないか」と懸念する。

 途上国であるインドネシアも医療環境の脆弱さが指摘される。経済協力開発機構(OECD)によると、インドネシアの人口1000人当たりの病院のベッド数は約1床。日本の13・1床と比べその数の差は歴然だ。

 インドネシアでは既に医療物資の不足が始まっており、一部の医療従事者は防護服代わりにレインコート着用を余儀なくされている。

 ■途上国で「ウイルス変異」の可能性

 感染拡大に歯止めがかからない状況についてWHO東南アジア地域担当者は17日、「状況は急速に変化している」と、現状に危機感を表明した。ウイルスがより多くの人々に感染するのを防ぐため、「あらゆる努力を直ちに強化する必要がある」とも指摘した。

 危機感は国連も共有しており、先進国に対応を求めた。グテレス国連事務総長は20カ国・地域(G20)首脳に宛てた23日付の書簡で、途上国支援のため数兆ドル(数百兆円)規模の景気刺激策を検討するよう訴えた。グテレス氏は「途上国で(感染が)火のように広がれば、ウイルスが変異してワクチンが開発されても効かなくなる」とも指摘した。

 ただ、先進国がまだ制御できていない現状があり、途上国支援は後回しになる可能性が高い。感染者が爆発的に増加する懸念を秘めながら、途上国の憂鬱は深まるばかりの状況だ。

最終更新:3/29(日) 19:13
産経新聞

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