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「聖地巡礼」がもたらしたアニメの”脱サブカル化” 「聖地巡礼」の歴史を紐解く

3/29(日) 13:10配信

DANRO

アニメやマンガの舞台を旅する「聖地巡礼」。現在ではすっかり地方創生の手段として認知されており、多くの自治体で作品の舞台であることを活かした取り組みが行われています。このコラムでは「聖地巡礼」の歴史を紐解き、これからどう形を変えていくのかについて綴りたいと思います。(河嶌太郎)

【動画】最近ではシティプロモーションにアニメが使われている

「聖地巡礼」の歴史

物語の舞台を訪れたいという欲求は昔からあったようです。歴史を遡ると、平安時代に菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が書いた『更級日記』では、上総国(現在の千葉県)で幼少期を過ごしていた作者が『源氏物語』の話を義母から聞かされ、舞台となった平安京に行きたいという思いがつづられています。

20世紀に入り、映画が普及すると、作品の舞台を訪れる動きは一気に広がりを見せます。国民的映画『男はつらいよ』では、東京・柴又をはじめ数々の舞台が描かれ、旅行会社によるロケ地を巡るツアーが人気となりました。戦後の観光産業の発展に伴い、ロケ地を旅する動きは大衆化していきます。

そして2000年代になると、アニメの舞台を訪れる「聖地巡礼」がファンの間で盛り上がり、社会的な注目を集めるようになります。2016年には、アニメ映画『君の名は。』が大ヒットして、多くのファンが舞台となった東京都新宿区の四谷須賀神社や岐阜県の飛騨地方を訪れるようになり、同年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では、「聖地巡礼」がトップ10に選ばれました。

アニメの「聖地巡礼」が注目された理由

しかし、実在する地名が登場するアニメは以前から存在していましたが、なぜ2000年代に入るまで「聖地巡礼」の動きがあまりなかったのでしょうか。

原因の一つには、アナログ技術しかない時代は、背景を実写のように描くことに労力を要した点があります。埼玉県春日部市を舞台にした『クレヨンしんちゃん』の背景の描かれ方を思い浮かべれば、イメージがつくかもしれません。

もちろん手間がかかるという問題だけですので、舞台も明瞭で背景も写実的なことから、「聖地巡礼」に結びついた作品もありました。1974年に放送された『アルプスの少女ハイジ』が好例でしょう。舞台とされたスイスのマイエンフェルトには、現在に至るまで多くの日本人が訪れています。

このように例外はありましたが、多くのアニメ作品は、明確な舞台があったとしても背景を克明に描くことはありませんでした。しかしデジタル化が進むことによって、この考え方が変わっていくことになります。写真をデータに取り込んで、そこから背景を起こしていったほうが効率的になり、逆転現象が生じたのです。

2006年の『涼宮ハルヒの憂鬱』や07年の『らき☆すた』あたりからアニメの「聖地巡礼」は盛り上がりを見せますが、これらの作品が当時から高度なデジタル技術を持っていた京都アニメーションから誕生したことは、決して偶然ではありません。

現在では、絵コンテの段階からロケ地で撮影した写真が用いられることも当たり前になってきています。

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最終更新:3/29(日) 13:10
DANRO

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