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「お客さんのことは考えない」 大人気カレー屋の店主が語る「カレー道」

3/29(日) 17:10配信

DANRO

札幌に行ったとき、現地で名高いスープカレー屋さんに「すごいカレー屋がありますよ。俺、最近あそこでしかカレー食ってない」と教えてもらったのが「gopのアナグラ」だった。(金井真紀)

【画像】カレーの達人が作るこだわりのスープカレー

5、6年前のことだ。最初の訪問で覚えているのは、メニューをしげしげと眺めているわたしのところへ店主がわざわざ厨房から出てきて声をかけてくれたこと。

「うちのカレーは辛さを増すほどコクが出て味が深くなるから、辛いのが苦手じゃなかったら思い切って試してみてください」

それが、久保田信さんだった。信は「まこと」と読むのが本当だけど、みんなは「シンさん」と呼んでいるみたいだ。

「自分が作りたいカレーを作る」

メニューには、0~50の「辛さレベル」が選べると記されていた。いつもはなんとなく中辛を食べている人も、この店ではビビらずにもっと辛いのを選べ、絶対にそのほうがオススメ、とシンさんは言うのだった。わたしは勇気を出して、辛さ50を選んだ。

一口ごとに「味わい深い辛さ」が体の隅々まで染み渡る。こんなの、生まれて初めて。最後の一滴まで舐めるように平らげた。食後のチャイを飲んでいるとまたシンさんが出てきて、なぜか「ミャンマーの、ぱっと見はダサいんだけど演奏はめちゃくちゃイケてるバンド」について教えてくれた。初対面でミャンマーのバンド情報って、ディープすぎる…。

その後も札幌で時間があるときは、シンさんの店にカレーを食べに行った。いつ行っても、おもしろいディップや付け合わせが「限定メニュー」として用意されていた。シンさんは年に数回、スパイスの買い出しを兼ねてアジア各地を旅している。旅先で見つけたおいしいものを自分なりに工夫して、期間限定で提供するのだ。どの料理も珍しく、どの料理にもはっきりとルーツと物語があった。それを説明するシンさんの、機嫌のいい雰囲気がたまらない。本当にカレーが好きなんだなぁ、とニヤニヤしてしまう。

「俺、店を出すときに『お客さんのことは考えない』って決めたんです」と言い切る。

す、すごい。

「自分が作りたいカレーがあるから作る、そんだけ。それを威張って出して、金を取りたいんです、ハハハ」

シンさんには威張ってる気配なんてまるでないけど、その心意気は電動ドリルのようにわたしの心をギュインギュインと突いた。相手の顔色を見ながらやる仕事よりも、頼まれもしないのにドカドカやっちゃう仕事のほうがおもしろいに決まっている。自分が作ったものに胸を張る、それ以上に晴れがましい瞬間があるだろうか。いつかこの人の話をじっくり聞いてみたい、とずっと思っていた。

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最終更新:3/29(日) 17:10
DANRO

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