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昭和の鉄道旅を支えた「列車用冷水器と紙コップ」の秘密 新幹線や寝台特急などに搭載

3/29(日) 10:11配信

乗りものニュース

新幹線 在来線 客車 3種類が開発された列車用冷水器

 2020年現在、すっかり目にすることのなくなった鉄道車両のアイテムのひとつに、「冷水器」があります。

【写真】懐かしい寝台特急「富士・はやぶさ」の冷水器

 日本の鉄道車両では、大正時代には車内用の使い捨てコップが設置されたという記録が残っています。これは衛生上のサービスというよりは、限られた水を節約するためでした。それまでは、金属製のコップが備え付けられていましたが、きれい好きの乗客がコップをゆすぐのにジャブジャブ水を使ってしまい、すぐに水タンクが空になってしまったのだそうです。

 戦後になると、進駐軍用の列車などに飲料水用のタンクが装備されました。これは40リットルほどのアルミニウム製で、職員が手押し車で氷と水を運び、手作業で中身を注いでいました。やがて一般の列車にも広まりましたが、衛生面に問題があったこともあり、昭和30年代に入ると電動式の冷水器が開発されました。

 国鉄に導入された冷水器は、おもに3機種ありました。いずれも日立製作所製で、東海道新幹線用、在来線用、客車用に分かれていました。

 東海道新幹線用の冷水器は「WR14A」というタイプです。高さ130cmの箱型冷水器で、現在、名古屋市の「リニア・鉄道館」で保存されている0系などで見られる冷水器もこのタイプ。紙コップ収納箱や使用済みコップを捨てる箱を内蔵し、本体中央の蛇口のボタンを押すと冷水が出ました。

 在来線用の「WR61」は、冷水器導入以前に洗面所で使われていた、氷を使用する冷水器に代えて設置されたタイプです。壁掛けタイプのコンパクトな設計で、洗面所の流しに直接水が落ちる構造でした。後に水受け皿と排水装置が追加され、寝台特急「富士・はやぶさ」にもこのタイプが運行終了まで搭載されていました。

 客車用の「WR15」は、いまも公共施設などで見かける、ペダルを踏むと上部の蛇口から水が出るタイプです。

列車用冷水器 揺れや電圧の変動といった環境でも高性能を発揮

 水が供給される仕組みは、どの機種もだいたい同じです。新幹線用の「WR14A」の場合、車両の床下に設置されたタンクから吸い上げられた水は、紫外線を照射する殺菌灯とろ過装置からなる殺菌装置を通過して、予冷用熱交換器(プレクーラ)を経て冷却タンクに送られます。

 冷却タンクは5リットルの容量があり(在来線用の「WR61」は2リットル)、冷凍庫と同じ仕組みで冷却されます。乗客がボタンを押すと水が流れますが、コップに注がれず受け皿に落ちた水はプレクーラの排水管に入って、これから冷却タンクに向かう水をパイプ越しに予冷した後に排水されました。どの冷水器も、水が凍結しないよう自動温度調節器を備えていました。

 走行する列車で常時稼働する冷水器には、街なかで使用される冷水器よりも高い性能が求められました。

 まず、供給電源が安定しない環境下でもきちんと動くよう、±15%の電圧変動に対応できる高性能なインバーターが装備されています。電動機などを支えるバネ類は、列車の思わぬ揺れによって機器類がぶつかって故障しないよう、強さがひとつひとつ細かく調整されました。

 また、狭いデッキに設置されるため、吸気口や排気口が塞がれないよう設計されています。特に東海道新幹線用の「WR14A」は、新幹線専用として車両と一体的に設計され、当時としては画期的にスマートな冷水器として登場しました。

 こうした冷水器とセットで設置されていたのが、封筒型の紙コップです。上部が波を打つような曲線を描く独特の紙コップは、東京都大田区にある丸ノ内紙工という企業が製造、供給していました。

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最終更新:3/29(日) 13:20
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