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台風被災、新型コロナ、五輪延期… 聖火運ぶ日信じて 栃木の観光遊覧船NPO、苦難乗り越え来年こそ /栃木

3/30(月) 12:30配信

東京2020報道特集 オリンピック聖火リレー

 ◇台風被災、新型コロナ、五輪延期…それでも

 29、30日に県内で予定されていた東京オリンピックの聖火リレーが当面中止になり、栃木市では名物の観光遊覧船で聖火を運ぶ計画も実施が見送られた。同市は2019年10月の台風19号で大きな被害を受け、聖火リレーは復興の始まりを発信する絶好の機会だった。それでも船頭を務めるNPO法人「蔵の街遊覧船」の船頭マネジャー、中村明雄さん(62)は「来年実施されることを信じて頑張りたい」と前を向いている。【玉井滉大】

 台風19号が県内を襲った前日、中村さんは仲間と共に屋形船1隻と平船4隻を陸に上げて固定した。しかし、大雨による巴波(うずま)川の増水で船は約100メートル流され、橋桁に衝突して損壊。屋形船は約5年前に半年ほどかけて作ったもので、「ショックで涙が出た」と振り返る。

 増水でできた中州や浅瀬の影響で水の流れが激しくなり、当初は運航再開の見通しが立たなかった。「遊覧船は街の一部。運航している姿を見せ、被災した方に元気を与えたい」と約15人の船頭が総出で土砂を取り除き、12月上旬には一部で運航再開し、2月には全面的に運航できるようになった。

 しかし、その直後に新型コロナウイルスの感染拡大に襲われた。次々とキャンセルの電話が鳴り、3月には約30件の予約がほぼ全て取り消しに。結婚式のような特別のケースを除き、4月中旬まで休業することにした。「二つ続けて予想もしない事態に見舞われるとは思わなかった」。台風と新型コロナで1万3000人前後の客を失う見込みという。

 そんな暗い雰囲気を聖火リレーが明るく変えてくれると期待していたが、五輪の延期に伴い当面中止になった。「今の状況を考えると仕方がない。まずは新型コロナウイルスが収まることを願うだけ」と話す。聖火リレーがどのように実施されるかは決まっていないが、「同じ形での実施となれば目標になる。楽しみが来年に回ったと考え、また頑張りたい」と語った。

 遊覧船は船頭が「船が出るぞ」と客に呼びかけてから出発する。中村さんは聖火リレーでも「聖火が出るぞ」と声を張るつもりだった。来年、鈴なりの人が囲む巴波川に希望の聖火が訪れ、中村さんの掛け声が響いたとき、遊覧船は苦難を乗り越えた象徴になるはずだ。

毎日新聞

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