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森栄喜が個展で初のサウンドインスタレーションを発表。あわせてフォトエッセイも刊行

3/30(月) 7:59配信

美術手帖

 同性婚や多様化する家族形態、ジェンダーなどをテーマに掲げる写真家の森栄喜。その個展「Shibboleth―I peep the ocean through
a hole of the torn cardigan」が、東京・新宿のKEN
NAKAHASHIで開催される。本展は、森にとって同ギャラリーでは3度目の個展となる。会期は5月1日~29日。


 今回森は、初のサウンドインスタレーションを発表。本作は、小さな音を遠くへ飛ばすために用いられるホーンスピーカーから、森が綴った詩を、様々な声色の多言語で朗読するささやき声が発信されるというものだ。地球のどこかから巡り巡って届いたそれらの声は、初めて聞く声でありながら、懐かしい誰かの声のようにも感じられるだろう。本展では、このサウンドに映像を組み合わせたものを見ることができる。

 また本展にあわせて、森による初のフォトエッセイ『Letterto My
Son』が、同ギャラリーより刊行される。本著は、『週刊読書人』で連載された森による短編「Letter to My
Son」全25回の日英テキスト、同タイトルの映像作品からのスチール写真、また未発表の詩作品1篇が収録されたボリューミーな内容となる。


 セクシャルマイノリティーをはじめとする多様なあり方を主題とした写真作品で知られる森。しかし近年、とくにパフォーマンス作品においては、自らの体験や記憶を交えた詩の朗読や、他者との共演を通じて自己と他者の境界を探るような身体的な対話を試みてきた。それらの試みは、消えてしまいそうな小さな声を、小さな声のまま、公共に開き、そこに生まれる親密性を可視化するものともいえるだろう。

 以下、クラウドファンディングプラットフォームmotion galleryに掲載中の、森のコメントだ。


 このエッセイは、半自伝的なものではありますが、同時に、かけがえのない出会いや、避けることのできない別れ、時間を越えた友情や愛情についての、普遍的な物語でもあると思っています。


 僕が想像できる範囲なんて、ほんの小さなものだと思いますが、それでも、これまでの時代、今日、そしてきっと未来も、僕たちのすぐとなりで(または遠いところで)、本当にたくさんの発せられないまま飲み込まれる声、やっとの思いで発してもかき消されてしまう声があります。それは僕たち自身の届かない声かもしれません。


 この物語には、実在の詩人やアーティスト、お店などの名前がたくさん出てきますが、主要な登場人物たちの名前は記されていません。名もなき彼・彼女らの声のなかに、あなたが、そして多くの方が、これまで飲み込んだ声、祈りとともに叫ぶ声、愛おしさにやさしく投げかけるであろう声を、見つけてもらえたらと強く思っています。この本が、この声が、多くの方に届きますように!

2020年3月19日
森栄喜

最終更新:3/30(月) 7:59
美術手帖

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