趣味の科学ムック『大人の科学マガジン』(学研プラス)より、レコード盤に音を刻むカッティングマシンと再生機能を搭載した組立キット『トイ・レコードメーカー』が発売され話題となっている。発売前に各局の情報番組やメディアで取り上げられ、注目は高まっていた。昨今のアナログレコードブームも相まり、ファンからは“夢のキット”とも呼ばれている。開発のきっかけや制作上のこだわり、商品の魅力について、同誌編集長・吉野敏弘さんに聞いた。
【写真】スマホに入った音もレコードに刻める…他、プラネタリウムに活版印刷機など過去にヒットした『大人の科学マガジン』キット
■仕組みはわかっているが精度が出ず……何度も地道な試作を重ねる
――今回『トイ・レコードメーカー』を商品化したきっかけを教えてください。
【吉野さん】ぼくらはもともと蓄音機が大好きな編集部で、過去にエジソンやベルリナーといった発明家が作った人の声を録音・再生できる蓄音機のキットをいくつも発売しています。今回の商品も蓄音機が企画のベースにありますが、それとは別に「声だけではなく、好きな音楽を刻んで、自分だけのレコードを作りたい」という欲求もありました。そんなとき、スズキユウリさんというイギリス在住のサウンド・アーティストから「(レコード盤に音を刻む)カッティングマシン」という付録のコンセプトを提供され、挑戦してみようというきっかけを得ました。
――レコードプレーヤーだけではなく、カッティングマシンというところが過去にない取り組みですね。
【吉野さん】ポータブルのカッティングマシンは、1980年代くらいまでは製造されていたと思うんですが、大変高額だったために一般のファンには手が出せなかった。そこで、『大人の科学マガジン』で安価で簡易的なカッティングマシンを作ってみようと開発に乗り出したのが昨年頭のことです。
――発売までに1年以上かかっているんですね。
【吉野さん】そうですね。まずは、いろんな音楽機器のメーカーやマニアの方々のところに出向いてカッティングマシンを見せてもらって…、“音を刻む仕組み”はわかったんです。それを「いかに量産型としてシンプルにできるか」が課題でした。
――制作中のエピソードを教えてください。
【吉野さん】まず試作が完成するまでに半年かかりました。原理はわかっているんだけど、うまく録音できないんです。何が原因なのかを探って、いろんなスピーカードライバーや異なる材質のレコード盤、カッティング針を試しました。針だけで何百本もの形を試作しました。
――何百本ですか!?
【吉野さん】カッティング針は、本当はルビーサファイアなどで作るのですが、それだと針だけで数万円もかかってしまうので、このキットでは硬い合金を使っています。
――詳しく教えていただけますか?
【吉野さん】ただ硬いと針先を研ぐのがすごく難しくて、量産直前まで工場とのやり取りが続きました。また、レコード盤の材質も、音を刻むためには柔らかさがほしいけど、再生するためには耐久性もほしい。それを両立させないといけないのが困難でした。レコード盤の素材に柔らかくする添加剤を入れるんですけど、「もうちょっと入れてみよう」と、いい音が刻めるまで添加剤の量を何度も調整しながら試作を重ねました。
――極めて地道な作業ですよね。
【吉野さん】今の付録の開発は、編集部3人と外部の開発者1人、計4人で作っているんです。最初に設計書があるわけじゃなく「とりあえずやってみよう」という感じで。そこが楽しくもあり、苦しくもあり…ですね。ベストな状態の針、スピーカー、レコード盤がそろったときは、音を聴いて感動しました。Lo-Fi(ローファイ:録音環境や再生音質が悪いこと)なんだけど、手作り感があって味わいがあるんですよね。
最終更新:3/31(火) 15:26
オリコン































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