夫が亡くなって、妻と子どもたちが相続する場合、遺産を分け合う手続きが必要です。この時、妻は住み慣れた自宅を相続する代わりに預貯金を手放さないといけない事態も起こりえます。そういった悩みに応える制度として、4月1日から「配偶者居住権」がスタートします。しかし、実は意外な落とし穴も。今後、自宅の相続などを考えている人に向け、注意点も含めて専門家にわかりやすく解説してもらいました。
「うまく使えればいい制度ですが、必ずしもバラ色の未来が待っているわけではありません。注意も必要です」
こう教えてくれたのは、「あさひ法律事務所」(東京都千代田区)の弁護士・藤原道子さんです。日本弁護士連合会で 、家庭裁判所で取り扱う分野の制度や改善点を研究する活動をしています。
まずは、配偶者居住権ができた背景からひもといてもらいました。
大きなきっかけは、2013年9月に最高裁大法廷が示した判断だったそうです。この時は、遺産分割の在り方が争われました。結婚していない男女間に生まれた「婚外子」と、結婚した男女間に生まれた「婚内子」で、取り分が違うのは「法の下の平等を定めた憲法に反する」としたものでした。
つまり、婚外子にも婚内子と平等に相続する権利があると認めたということです。これを受け、婚外子が婚内子と同じ割合で財産を相続することになると、夫に先立たれた妻が、場合によっては遺産を分けるために住んでいる家を手放さないといけなくなるかもしれず、配偶者を保護する必要がある、という考えがスタート地点になったようです。
藤原さんは「高齢化や家族の多様化など、社会の変化が背景の一つにありますが、同性婚や事実婚については、配偶者居住権などの適用が見送られました。この点は課題として残っています」と話します。
次に、制度の内容を簡単に説明していきます。
法務省の資料では、配偶者居住権を「配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者に建物の使用を認めることを内容とする法定の権利」としています。
たとえば、一戸建て住宅に暮らしていた夫婦で考えていきます。一人息子は、結婚して両親とは違う場所に住んでいます。
財産の価値は自宅が2000万円。預貯金は2000万円あります。夫が亡くなり遺言書がない場合、妻と子の相続分は法律にしたがって半分ずつ、つまりそれぞれ2000万円ずつになります。
自宅を妻が相続すると、預貯金はすべて息子に渡ります。これでは、妻に生活費が全く残りません。逆に自宅を息子に渡すと、預貯金は妻に渡ります。しかし、妻は、住む家に困ってしまいます。
こんなケースを打開する一つの方法が、配偶者居住権です。この制度を活用すると、夫を亡くした妻は自宅に住み続ける権利を手に入れ、息子は配偶者居住権の負担のついた自宅の所有権を得ます。そうすることで、妻は住む場所を確保できるのです。
配偶者居住権の価値が1000万円だとすると、妻は、預貯金2000万円のうち1000万円を得ることができますので、当面、生活に困ることもなさそうです。
その後、妻が亡くなると、配偶者居住権はなくなるので、自宅の所有権を持っていた息子は、自宅の完全な所有者になります。この場合に、妻(母親)にほかの財産がある場合は別ですが、自宅に関しては、息子に相続税が課税されることはないとされています。
最終更新:3/30(月) 13:35
相続会議































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