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民主党総力戦に、トランプは戒厳令で大統領選延期か

3/30(月) 19:08配信

ニュースソクラ

【北丸雄二の「世界の見方」】画期的な「女性副大統領」の実現も吹っ飛ぶか?

 民主党の大統領候補は、高齢であることのリスクが露呈しなければこのままバイデンに決まりそうです。

 前回のこのコラムで予測したとおり、ブルームバーグは予備選から下りて、残った自分の選挙資金20億円を民主党全国委員会に献金しました。これは11月の本選で、接戦州でのバイデンの運動資金に回るでしょう。

 ところでトランプの方は新型コロナウイルスの非常事態で現在は選挙運動どころではなくなっています。市場への影響を恐れて初動においてむやみに楽観論を振りまいてせいで、というか今もまだ「中国ウイルス」などと吹聴する例の非科学炎上話法で物議を醸しています。

 一方で「戦時下の大統領」と自称して企業の給与支払い肩代わりなどを含めた2兆ドル(220兆円)もの経済対策を共和党と取りまとめ、世論の支持を回復させています。

 なにせ3月第3週だけで280万人が失業給付金を申請したという状況ですから、財政赤字が今後数十年にわたってどうだこうだという問題より明日の家賃や食費をどうしようというまさに緊急避難的対策なのです。

 仕事がストップして今月の家賃が払えないと答えた市民が40%にも達したニューヨーク市では、90日間の家賃と光熱費の支払い猶予を決めましたが、現場では3ヶ月後にそれをどう支払うのか、あるいは支払わなくてもいいのかで混乱もしています。

 そんな中では本選に向けたバイデン陣営の政策アピールも霞みがちです。こちらもまた、新型コロナに対応して公共投資や法人税・富裕税などの公約見直しも迫られてくるでしょう。

 取り急ぎ、これまで公表されてきたバイデンの政策を見てみます。公共投資は1.7兆ドル(190兆円)を掲げ、連邦法人税は28%(トランプ政権で35%から21%に引き下げた)に引き上げるとし、連邦個人所得税もトランプが最高税率37%に引き下げたものを同39.6%に戻すとしています。

 もちろんオバマ政権が支持していたTPPには再加入、オバマケアは拡充し、気候変動対策のパリ協定には再加盟して温室効果ガスの国内排出量は2050年までにゼロの方針で進める方針です。

 高額の大学授業料によって卒業時の平均で3万ドル(330万円)近い借金を抱えることになる学生たちのローン返済では、負担の軽減・免除の強化を訴えています。新型コロナ対策では、感染者の全医療費を特別措置で無料にすべきだとしています。

 一方でバイデンは注目の副大統領候補を大方の予想どおり「女性」と明言しました。現在77歳のバイデンは自分の任期は1期と言っていますから、この副大統領候補は次の大統領選挙での民主党候補の本命となります。

 ここには昨年12月時点でいち早く予備選から下りたカマラ・ハリス、3月初めのスーパー・チューズデイでのバイデン大復活に貢献したエイミー・クロブシャー、そして左派を取り込む鍵となるエリザベス・ウォーレンの3人の名前がまず上がっています。

 今回の選挙はトランプに対して「チーム・デモクラッツ(全民主党)」で当たるべきなので、いずれも予備選で戦った相手を横に立たせることはその総力戦のアピールにもなります。

 ただウォーレンの場合は、彼女もいま70歳と高齢なので、入閣するとしたら医療保険拡充のためにも保健福祉省長官が適任かもしれません。

 55歳のカマラ・ハリスはインド出身の父とジャマイカ出身の母を持つ移民の系譜です。これも反トランプ票に訴求するでしょう。

 ただ彼女は民主党の牙城カリフォルニア州の辣腕司法長官でした。安全牌の同州の出身者を前面に出すより、むしろ連邦司法長官に格上げ起用して、破った後のトランプの訴追に当てた方が得策との見方があります。

 さて、ではクロブシャーですが、彼女は中西部ミネソタという激戦州出身。スーパーチューズデイでも同州で全く選挙運動をしていなかったバイデンが大量得票できたのは彼女の支持表明があったからです。

 彼女は議会でも超党派的取り組みに実績があり、同じ中西部ラストベルトとされるウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアなどの共和党反トランプ派の票取り込みに効果的かもしれません。

 他の閣僚にはアフガン従軍経験のピート・ブーティジェッジを国家安全保障省長官に、マイケル・ブルームバーグは財務長官、アジア系のアンドルー・ヤングは核兵器と再生エネルギーを担当するエネルギー省長官やあるいは住宅・都市開発省長官などが面白いでしょう。

 これらを事前発表して、それこそ総力戦で戦う。そしてこれまで選挙戦に口出しを控えていたオバマが、満を持して応援に登場する──。

 そこで問題は、総力戦の民主党と、新型コロナによる経済と安全保障のかつてない危機に直面して、トランプが果たしてこのまま選挙に臨むだろうかということです。

 米国史上「戦時下の大統領」が再選に失敗した例はありませんが、何をするのか予測のつかない現職大統領、様々に囁かれる観測の中でも最もドラスティックな対応が、「戒厳令の発動」、そしてそれに伴う「大統領選挙の無期限延期」だというのです。

 これはロシア疑惑捜査の際にもこれで訴追されたら戒厳令で対抗するだろうと囁かれていました。

 主席任期2期の制限を取り外した習近平を羨んで「私も10年か14年は大統領でいたい」とツイートするなど(米国大統領の任期4年の倍数ではないところを穿って読むと)、あながちジョークでもないようなのが怖い。

 そして、人口でいえば3分の1のアメリカ人が外出制限で自宅待機を求められ、カリフォルニア、ニューヨーク、ワシントンの3州では州兵も動員される事態になっている現在、この「戒厳令」的状況は着々と進んでもいるわけです。

■北丸 雄二(ジャーナリスト)
1993年から東京新聞(中日新聞)ニューヨーク支局長を務め、96年に独立後もそのままニューヨークで著述活動。2018年からは東京に拠点を移し、米国政治ウォッチと日米社会の時事、文化問題を広く比較・論評している。近著に訳書で『LGBTヒストリーブック~絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』(サウザンブックス社)など。

最終更新:3/30(月) 19:08
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