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昭和の迷作ゲーム「たけしの挑戦状」舞台化に背負う使命とは

3/31(火) 20:00配信

Lmaga.jp

ビートたけしが監修という鳴り物入りで、1986年に発売されたゲーム『たけしの挑戦状』。あまりのアバンギャルドさにクレームが殺到し「伝説のクソゲー」と呼ばれた同作が、『たけしの挑戦状 ビヨンド』として舞台化される。作・演出を務めるのは、熱狂的なゲームマニアで、代表を務める劇団「ヨーロッパ企画」の舞台も「ゲームっぽい」と評される上田誠。単にゲームの世界を立体化するだけでなく「たけしさんのメッセージを読み取りたい」と意気込む上田に、舞台化への「攻略法」を訊いた。

【写真】岸田國士戯曲賞を受賞した上田誠

取材・文/吉永美和子

「愛すべきクソゲーは好き」(上田誠)

──このゲームの発売は、上田さんが小学生のときですが、実際に遊んだのですか?

最初は親戚のお兄さんに貸してもらいました。普通のサラリーマンが主人公で、いきなり冒頭で社長に説教されたあと、コマンドで「社長を殴る」を選べるとか(笑)。外に出れば、道端のゴミ袋まで描かれるという、生活感あふれるヤサぐれた風景が広がってるし。いろんなことに衝撃を受けて、自分でソフトを買いました。

──上田さんはこのゲームをクリアできた、数少ないひとりだそうですね。

80万本ぐらい売れたけど、99%の人が解けなかったんじゃないですかね? というか、最後までやろうと思わなかったかも(笑)。僕も買った当時は投げ出しました。そのあと高校生のときに、攻略本片手にクリアしました。

──今回の舞台版は、どのような感じになるのでしょう?

現代の会社員が、久々に『たけしの挑戦状』をプレイしたことで、大変な事態になっていくというお話です。ゲームの「中の世界」と、プレイヤーと周りの人々に巻き起こる騒動という「外の世界」を、同時に見せていくつもりです。

──以前上田さんがゲーム『バーチャファイター』を舞台化した『TOKYO HEAD』も、ゲームの世界よりも現実のプレイヤーのドラマを中心に描いて「そんな形で、ゲームを舞台化できるのか!」と評判になりましたよね。

あの作品は、ゲームのなかのことはあまり描かなかったけど、今回はちゃんとみなさんを、ゲームの世界に没入させるつもりです。さらに、この問題作が放たれた1980年代のゲーム業界や、たけしさんを取り巻く芸能界や世間の状況とか、そういうプラスαのことも描いていけるんじゃないかと思ってます。

──たとえば2019年のヨーロッパ企画公演では、学校の七不思議ならぬ77不思議を、律儀にカウントしながら77個全部見せるとか、「そんなバカな」と言いたくなるアイデアを実現するのが、上田さんのコメディの特徴です。今回は、どんなアイデアを考えてますか?

美術は、ゲームのドット絵を立体化した「ボクセル」を使ってみようかと思ってます。僕はドット絵に落とし込まれた何かに、遺伝子レベルとしか言いようがないぐらい、グッと来るものがあるので。演出としては、ゲーム独特の人間の動きってあるじゃないですか? あれをやりたいんです。

──あの何か、ピコピコっとした感じの動きですか?

そうそう。いかにもゲーム的な世界のなかに、ある現実を見るというのは、今回の僕なりのテーマなので。その動きはこれから稽古場で試していくんですけど、すごく面白くなるかもしれないし、すごくチープになるかもしれない。

──下手したら「クソゲー」ならぬ「クソ劇」になりかねない。

本当にそうです(笑)。でも上手く行けば、リアルにゲームのなかに入ったような世界ができるはずなので、それはめちゃくちゃ楽しみですね。

──上田さん自身、何か「クソゲー」の思い出ってありますか?

僕は「クソゲーだ!」って、腹を立てることがないんです。つまんないならつまんないなりに、そこから何かを学んだり、もしくは笑いの種にできますからね。むしろ人の営みが見えるような、愛すべきクソゲーは好きです。「こういうことをやろうとしたんだね。その心意気やよし!」みたいな。

──つまり上田さんにとって「クソゲー」というものは存在しない。

いや、名作と言われるけど、何かの二番煎じのようなヤツは「クソー!」と思います。それはゲームに限らず、芝居もそうなんです。僕は、実験好きなところがあるんで「こんな野心で作ってみたけど、失敗しました」という徒花(あだばな)のような作品はいいなあと思います。『たけしの挑戦状』も野心はすごいですし、実際にプレイしてみたら面白いですからね。ただクリアできないだけで(笑)。

「ゲームに込めた思いを受けとるのが使命」(上田誠)

──演劇作品を作る上で、ゲームの影響を受けたり、大学でプログラミングの勉強をしたことが活かせたと思うことはありますか?

演劇って文学の側面が大きいんですけど、ゲームは基本的に無言劇じゃないですか? たとえば「テトリス」って、ゲームの画面には何も説明がないけど「落ちてくるブロックを回転させながら積み上げて、どんどん列を消していく」というのが、割と見ただけでわかる仕掛けになっている。これを全部セリフで説明したとしても、全然文芸的じゃないと思うんです。

──確かに説明書みたいなことしか言えなさそうです。

「いいセリフを書く」ことよりも、全体の構造とか趣向の面白さの方が僕にとっては大事だし、それをセリフ以外で伝える手段が何かあるはずだと。そっちの方に頭を使ってるのはゲームから学んだことだし、ゲーム作家的なのかもしれないですね。

──『たけしの挑戦状』を原作として扱うことで、改めて思うところなどはありますか?

気合いを入れて作った作品は、その時代に受け入れられなくても、意外と後々まで残って、受け継がれるべき人に受け継がれることがあるんだ、といろいろ調べながら思っています。だから34年前にたけしさんが作ったゲームから、そこに込められたメッセージを受け取るようにするというのが、今回の使命なのかもしれないなあと。

──となると、決してこのゲームを笑いものにするのではなく、むしろたけしさんにリスペクトをあらわす舞台となりそうですね。

そうなると思います。いろいろ各ジャンルに尊敬する方々がいらっしゃるなかでも、たけしさんの存在は僕にとって大きいです。『風雲! たけし城』のようなテレビ番組や映画で、僕がやったら「絶対マニアックになるな」と思うようなアイディアを、国民レベルで巻き込むメジャーな形で実現できるのは、もうそれだけでもすごいこと。

──そこにどこまで近づけるかという、まさにたけしさんへの挑戦となるわけですね。

それは恐れ多いですし、絶対「たけしに挑戦」ってキャッチは付けて欲しくないですけど(笑)。当時39歳だったたけしさんが何を考えて、あのゲームでどういうことをしようとしたのか。それを40歳になった僕が、このタイミングで紐解くのは、面白いめぐり合わせだと思います。ただ、たけしさん本人に観ていただきたいかと言われたら・・・。初日が開いてから判断したいです(笑)。

本作は東京、名古屋、高知、広島公演を経て、大阪では5月2日・3日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)にて上演。チケットは8500円発売中。

注)4月3日、新型コロナウィルスの感染状況と、それに伴う政府及び関係機関・各自治体からのイベント自粛要請の方針に従い、本作の全公演中止が発表されました。詳細は公式サイトにて。

最終更新:4/6(月) 10:54
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