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「ギャルの聖地」ネオン広告塔に隠れた秘密とは 福岡・天神コアが44年の歴史に幕

4/1(水) 12:00配信

西日本新聞

 福岡市・天神の商業ビル「天神コア」が、同市中心部の再開発に伴い3月末に閉店した。8階建てビルの屋上には、有名グラフィックデザイナーが手掛けたロゴマークをあしらった巨大なネオン広告塔。1976年の開業以来、上空から天神の街角を彩り続ける灯も消えたが、ロゴには謎めいた秘密が今も隠れている。

【写真】天神コア屋上のネオン広告塔

 ビルを管理する西日本鉄道(福岡市)によると、ロゴマークは、丸みのあるシンボルマークと、正方形のスペースいっぱいに横書きの施設名が並ぶロゴタイプ(文字列)で構成。広告塔はビル屋上南側の塔屋壁面(高さ・幅・奥行きとも約14メートル)にあり、南北にシンボルマーク、東西にロゴタイプを配置。日没から深夜まで休まず点灯された。

 ロゴを制作したのは福田繁雄さん(1932~2009)。大阪万博(70年)の公式ポスターで脚光を浴び、国内外で活躍して日本グラフィックデザイナー協会会長も務めた大物で、だまし絵の手法を積極的に取り入れ「トリックアートの騎手」「日本のエッシャー※」と呼ばれた人物だ。

 コアのシンボルマークにもトリックが仕組まれている。中央の白い図案を見ると上下が弧を描く「T」が浮き上がるが、両側の黒い余白に注目すると、向き合った2人の横顔に見える。西鉄に聞くと、デンマークの心理学者が考案した多義図形「ルビンの壺(つぼ)」をヒントに、天神のTと、人々の「出会い」という二つの意味が込められたそうだ。

 しかし、ロゴタイプにもトリックが仕組まれた事実はあまり知られていない。中央の英文字「TENJINCORE」を挟んで横書きの「天神コア」が4段並ぶ文字列を見ると、各段とも「神」の文字が寄り添う男女のようにも見える。

「後世に残すべき秀逸な作品」

 西鉄に聞くと「シンボルマークの資料はあるが、ロゴタイプまでは…。確かに人に見えるけど、断言は難しい」。福田さんが少年期を過ごした岩手県二戸市で運営される「福田繁雄デザイン館」に聞いても「詳細はうちも分からない」。福田さんと長年の親交があったグラフィックデザイナーの平松聖悟さん(74)=福岡市南区=に聞くと-。

 「間違いなく、福田先生のトリックでしょう。文字の左側はスカート姿の女性で、右はスーツ姿の男性。マークが向き合う男女なのは知っていたが、こちらは気付かなかった。福田先生にやられた、って感じ」-と興奮が収まらない。

 あらためて作品について「全体的に白と黒をベースとし、英文字だけカラー。隣り合う2カ面にわたって色彩の調和が絶妙に保たれている。赤青緑の三原色は“地球”を象徴し、仕組まれた男女の姿は“人類”。後世に残すべき秀逸な作品です」。熱弁も止まらない。

 西鉄の倉富純男社長は近年、天神コアについて「40年以上も愛され続けたブランド。名前を残せたら」と発言を重ねているという。デザイン産業の振興などに取り組む特定非営利活動法人(NPO法人)「FUKUOKAデザインリーグ」(福岡市)の武永茂久理事長は「ネオンの灯は消えても、市民の記憶に焼き付いて色あせないデザイン。福岡を象徴する優れたアートとして私たちも記録方法を考えたい」と話している。(木村貴之)

 ※だまし絵の画法で知られるオランダの画家、マウリッツ・エッシャー(1898~1972)にちなむ。

最終更新:4/1(水) 12:00
西日本新聞

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