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F1 Topic:シーズン開幕の目処は立たず。それでも「1年延期」を宣言できない運営事情/レース再開への課題(1)

4/1(水) 7:00配信

オートスポーツweb

 世界的な通信社であるロイターが、3月27日にF1の前最高責任者であるバーニー・エクレストンが「全員の安全のために、2020年シーズンを終了させることについて話し合わなければならない」と語ったと報じた。

 すでに2020年の夏に開催が予定されていた東京でのオリンピックは、2021年に延期されることが決定。昨年10月に開幕したアメリカのプロバスケットボールであるNBAも、6月中旬まで予定されていたが、3月に入って選手に新型コロナウイルスの検査で陽性反応が出たことを受けて、残りのレギュラーシーズン全試合の中断を決定し、再開の目処は立っていない。

 WHO(世界保健機関)に「新型コロナウイルスが世界的大流行の新たな中心となった」と指摘されたヨーロッパでは、サッカーのヨーロッパ選手権(EURO)の1年間延期が決まった。ヨーロッパ選手権は4年に1回、ワールドカップの中間年に行われるヨーロッパの国対抗の選手権大会で、オリンピックと並ぶ今夏の最大のスポーツイベントだった。

 オリンピックとサッカーのビッグイベントが相次いで次年への延期を発表しているのだから、モータースポーツの頂点であるF1も今シーズンはあきらめて、来シーズンへの足固を行ったほうがいいのではないかというのが、エクレストンの見解だと思われる。

 F1はすでに22戦中8戦の延期または中止が確定している。しかも、9戦目の舞台であるカナダは3月29日現在、感染者は約5000人とヨーロッパほど増加はしていない。しかし、隣国のアメリカがいまでは世界最大の感染者数となっている状況を考えれると、楽観はできない。

 さらに、たとえカナダで今後爆発的感染が起きなかったとしても、F1チームの本拠地があるヨーロッパの状況が収まらなければ、開催は難しいだろう。

 それでも、現在のF1の最高責任者であるチェイス・キャリーは、「新型コロナウイルス感染症が落ち着けば、今年中に再開して15~18戦を開催できるだろう」と、今後のF1を見通している。

 これはF1がほかのスポーツと違って、選手以外に圧倒的多くの従業員の存在の上に成り立っていることが大きく関係している。例えば、アメリカのメジャーリーグでも球団職員は100~200人程度だが、F1では最も少ないと言われているハースですら200名弱で、ほかのほとんどのチームは400名以上、トップチームは800名を超えるところもある。

 しかも、ほかのプロスポーツの職員の多くは、チームの管理などに携わるいわゆる一般的な事務職であるのに対して、F1のスタッフの多くはマシンを開発・設計する高度な技術職となるエンジニアがメイン。しかも、彼らの多くはケンブリッジなどの名門大学を卒業したエリートで、年俸もほかのプロスポーツの職員よりも高額であるのはもちろん、F1のエンジニアなかにはほかのプロスポーツ選手よりもサラリーが高い者もいる。

 つまり、ほかのスポーツ、たとえば野球やサッカーでは1チーム数十人の選手がいるのに対して、F1のチームには1チーム2人しか選手はいないが、年俸ではほかのスポーツ選手と同じくらいの給料をもらうスタッフが100名以上もいることになる。そして、そのスタッフの多くが住宅ローンや教育ローンを組んでいる。

 このスタッフたちを養うために、どのチームもF1からの分配金だけでなく、チーム独自にスポンサーを集め、バジェット(予算)を確保している。しかし、そのスポンサーとの契約はシーズン前に一括で支払われるケースは稀。なぜなら、スポンサー側から見れば、全額支払っても、F1に参戦せずに持ち逃げされる可能性があるからだ。したがって、シーズンが進むごとに分割で支払われるというのがほとんどだ。


 ところが、今シーズンのようにシーズンが開幕しない状態が続くと、支払いもその分遅れる。しかし、チームはスタッフへの給料を毎月支払わなければならない。それが1カ月や2カ月なら、まだ耐えられるだろうが、モナコGPが中止となって1カ月長くなって3か月もの間、チームは支出ばかりが増えるという経営的に厳しい状態が続く。

 もしカナダGPが延期されれば、さらにその状態が延びることになり、そのころには小規模チームにとっては、債務超過に陥る可能性もある。

 F1の最高責任者であるキャリーが「今シーズンはあきらめて、来シーズンに備えよう」と言えないのは、このためだ。人々の健康も大切だが、チームが破綻すれば、経済的に窮地に立つ人々を大量に発生させ、病気に感染するよりも悲惨な結果を招く恐れがあるからだ。

 そうしたなか、10チーム中7チームがファクトリーを構えているイギリスでは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で財政的に打撃を受けている人を対象に、住宅ローンと家賃の支払いを3カ月猶予する救済策を講じられるという報道もなされている(イギリス政府は速やかに法案を可決させたい考えだが、まだ可決されてない)。

 もし、これが可決されれば、チーム経営者は雇用者に対して、住宅ローン分の給与の支払いを猶予することができる。ただし、この法案によって救われる対象者は、適用期間が終了する2020年6月以降、感染拡大の影響を受ける前と同程度の収入を得られる見通しがある人となっている。

 つまり、6月以降にF1が開幕され、チームがスポンサーから契約金を受け取り、スタッフに正規の給与を支払うことが条件となる。

 6月のカナダGP、そして7月のオーストリアGPとイギリスGPがどうなるか。この決定は、F1のチーム経営者にとって、今後のチームの命運を賭けた重要なものとなるだろう。

[オートスポーツweb ]

最終更新:4/1(水) 11:21
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