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F1 Topic:メルセデスF1のPU部門エンジニアが生産に協力した人工呼吸装置『CPAP』とは?

4/1(水) 12:16配信

オートスポーツweb

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界中が重苦しい雰囲気に包まれている中、イギリスから光明の兆しが見えそうな、明るい話題が飛び込んできた。それは、F1チームたちによる新型コロナウイルス用の人工呼吸器が完成したというニュースだ。

【写真】人工呼吸装置『CPAP』のパーツの一部

 F1は3月20日に、イギリス政府の呼びかけに応じ、イギリスに本拠地を構えるメルセデス、レッドブル、マクラーレン、ルノー、レーシングポイント、ハース、ウイリアムズの7チームが自分たちのテクノロジーとスキルを利用し、新型コロナウイルス患者救済のための人工呼吸器の製造に協力する「ピットレーン・プロジェクト」を開始させることを発表していた。

 今回、届いた知らせはメルセデスのパワーユニット部門のハイパフォーマンス・パワートレインのエンジニアが、イギリスのユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のエンジニア、さらに同大学病院(UCLH)の臨床医たちと協力し、安定的に肺に酸素を送り込む「持続的気道陽圧(CPAP)装置」を製造したというニュースだ。

 医療現場で患者に酸素を送り込む機器として一般的なものに機械式の人工呼吸器がある。それは大きく2つに分かれており、マスクあるいはチューブで酸素供給するだけの非侵襲的陽圧換気と、気管にチューブを挿し込む侵襲的陽圧式換気がある。

 軽度から中等度の換気障害では、鼻マスクや顔マスクによる非侵襲的陽圧換気でも効果はあるが、今回の新型コロナウイルス感染症は一部の患者が重篤化し、気管にチューブを挿し込む侵襲的陽圧式換気による人工呼吸が施されている。しかし、侵襲的陽圧式換気には気管切開手術を行わなければならず、高齢者の場合には苦痛とリスクが伴う。

 さらにヨーロッパでは現在、重症の患者が増加し、侵襲的陽圧式換気による人工呼吸器そのものが不足となる事態に陥っている。

 そこでUCL、UCLH、そしてメルセデスのエンジニアが目をつけたのがCPAPだった。

 CPAPとは、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する医療装置だ。マスクやチューブから酸素を供給するだけの従来の非侵襲的陽圧換気では、時に酸素が過剰に供給されて呼吸困難となったり、気道に陽圧がかかり続けるため、気胸を引き起こすリスクもある。

 その点、CPAP装置は酸素と同時に空気も送り込むため自然な呼吸となり、かつそれを加圧して送り込むため息を吸い込む患者の労力が減り、COVID-19によって肺胞が破壊されている時には有用だという。つまり、CPAPは簡単な酸素マスクと、患者に鎮静剤を打たなくてはならない侵襲的人工呼吸器の中間に位置している人工呼吸器と言っていいだろう。

 UCLHのマーヴィン・シンガー教授は「CPAPの導入で、現在不足している侵襲的陽圧換気による人工呼吸器は最も重篤な患者に優先して使用し、軽度から中等度の患者にはCPAPを与えることで、多くの患者を救うことができるだろう」と、その意義を強調する。

 UCLのデビッド・ロマス副学長も「24時間体制でこの新しいプロトタイプを開発したUCLとメルセデスのエンジニア、そしてUCLHの臨床医による素晴らしいチームに敬意を表したい。彼らは最初のミーティングから規制当局の承認を得るまでわずか10日で達成したのだから」と医学界だけでなく、イギリスを代表するスポーツであるモータースポーツ界からのサポートに賛辞を贈った。

 F1は、すでに6月上旬のアゼルバイジャンGPまでの延期または中止が決定しているため、8月にとる予定だった夏休みを前倒しで、3月27日から夏休みがスタートさせていた。しかし、それはF1に関わる業務の停止。新型コロナウイルスから人々を守る戦いは続けられている。

[オートスポーツweb ]

最終更新:4/1(水) 12:16
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